全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第十話 フォルヴァンの岩山

 翌日、タチバナ親子や朝帰りしてきたロウと情報共有。

 

「ホルンさん・・・若様もご存じのシル様付きの侍女から、シル様の婚約破棄とマデル様のことは聞きました。

 にしても、上流階級御用達の押し込め部屋ですか。噂には聞いたことがありますが」

 

 知ってるのか?

 

「友人から聞いた話です。あれこれ妙な事に詳しい男ですので、ひょっとしたらもっと具体的な事を知ってるかもしれません」

「ロウ様はそのご友人に当たってみてください。

 私どもは心当たりを手分けしてみます」

 

 四人とも頼む。

 

「お任せください」

 

 タチバナ達が一斉に頭を下げた。

 ところでロウ。彼女に話を聞いて朝帰りってことは、一晩しっぽりしてきたのか。

 ニヤニヤしながら聞くと、ロウが苦笑した。

 

「勘弁してくださいよ。そりゃホルンさんはいい人ですけど」

 

 だろうな。

 何せ40後半で四人の子持ち、しかも全員成人してる。

 気の良いおばちゃんではあるが、そう言う目ではそりゃ見れない。

 しかしそうすると、朝まで何やってたんだ?

 

「そこはまあ、企業秘密と言う事で」

 

 まあこいつにも色々コネがあるってことだな。

 でも死んだら御用商人の座はパァだからな。そこは覚えておけよ。

 

「了解。死んだらひりつくような楽しい商いも出来ませんしね」

 

 口の端を持ち上げて笑うロウはどう見てもいっぱしのギャンブル中毒者であった。

 

 

 

 その夜。かなり遅くなってからロウが戻ってきた。

 

「ビンゴです。メットーから一日のところにフォルヴァンの岩山という険しい山がありまして、そこに女子修道院があるんです」

 

 聞いたことはあるな。平原からひょこっと険しい岩山が突き出してて、物好きが見物に行く事もあるそうだが。

 

「ええ、それです。禁欲的な修道院にしては随分と贅沢な注文が多いと、幌馬車隊の奴が言ってました」

「名前は存じております。千年以上の歴史がある由緒正しい修道院だったかと」

 

 少なくとも調べてみる価値はありそうだな。

 タチバナ、ヒョウ、レイ、頼む。

 

「あ、待って下さい。話には続きがあるんです。

 その修道院、元は砦だかなんだかで、数百メートルにわたって隆起した岩山のてっぺんにちょこんと乗ってるんです。

 しかも砦を守るための昔の結界がまだ残ってるとか」

 

 それはどんな?

 

「敷地内に出入りすると一発でバレるそうです。

 周囲にこう、ぐるっと見えない壁があって、出入りすると鈴みたいな音が鳴るとか」

 

 警報システムか、それは面倒だな。

 結界をいじれる魔法使いが欲しいところだ。

 さもなきゃ動物とか、霧とかに変身出来るやつ。

 

「残念ですが俺達も――」

「――吸血鬼の知り合いはいませんね」

 

 肩をすくめる双子。

 まあ獣に変身出来る獣術師なんてのもいるし、水や風の術を極めると体ごと水や風になれると言う話もあるが、そんな便利な人材がそうホイホイ転がってるわけもない。

 

「まあ軍か犯罪組織が囲って手放さないでしょうね。

 そうでなくても冒険者の世界では引っ張りだこでしょう」

 

 ですよねー。

 偵察とか潜入に便利すぎるわ。

 しかしその結界とやらが難題だな。

 荷物は商会の人間が修道院に運び込んでるのか?

 

「荷物は修道院の門の前で下ろして、修道女が運び込んでるとか」

 

 商会の人間に紛れて入る手は使えないか。

 しかしそれなりの荷物だろうに、修道女だけで運び込めるもんか?

 いや、多分護衛だな。それなりの女冒険者か神官戦士か、そんなんだろう。

 

「だと思います。隊商の護衛に雇った冒険者が驚いてたとか」

 

 荷物に紛れ込むしかないかなあ。さもなきゃ地面を掘ってトンネル作るか、正面から力づくでぶち破るか。

 

「表向きには結構由緒のある修道院ですからね。下手をするとこちらが犯罪者扱いですよ」

 

 わかってる、最終手段だ。

 トンネル掘るにしたって、俺の《加護》じゃ大雑把すぎて生き埋めになりかねん。

 

「何にしても、その結界とやらがネックですね」

 

 前にうちに逗留してた・・・いや、あいつは知識は豊富だがこの手の事については役に立たんか。

 とにもかくにも面倒な古代の魔法だ。

 ガンガンにレーダーの効いた区域に、ステルス塗料も無しに入っていくようなもの・・・と、これは口にせずに心の中で考える。そんな事を聞かれたら、俺がオリジナル冒険者族だってばれるからな。

 ん? 待てよ? レーダー・・・レーダーか。

 

「若様、何かお考えが?」

 

 さあな。現物を見てみないことにはどうしようもない。

 まずは偵察だ。

 

 

 

 馬のヒヅメが街道に土ぼこりを上げる。

 双子とロウは都に残し、俺とフジ、タチバナはフォルヴァン修道院に向かっていた。

 今回はフジとタチバナも馬。加速はしないで普通のスピード。

 活性波動を使うと爆発的な強化を得られるがその分馬も消耗するし、場合によってはシルを馬に乗せて逃げなきゃならないかもしれないからな。

 

 それで近くまでやって来たのだが、これは確かに凄い。

 平たく言うと、平原からにょっきりと生えた富士山1/5。

 高さは700mほどだがその分険しく、平地から直に生えているので高さ以上に巨大に見える。

 丸ごと岩のようで木々はほとんど生えておらず、裾のあたりでも傾斜30度くらいの斜面が昇るに従って険しくなり、頂上近くではほとんど絶壁になっていた。

 頂上は火口になっており、その中に城壁と修道院があるそうだ。

 なるほど、あんなところに城塞を作ったらほとんど無敵だわな。

 

 夜。

 幸い今日は空も曇り、星明かりもない。馬を木立に隠して山道を登る。

 700mの山とはいえ人間離れした身体能力を持つ俺達には問題ではなく、頂上まで20分もかからなかった。

 火口外輪の上から修道院を観察。

 オーソドックスな作りの城塞で城壁は差し渡し200mほど。高さは9m近い。壁の外に畑がある。

 

「塔などに見張りはいないようですね。古代の結界とやらによほど自信があるのでしょう」

 

 それでも何があるか分からん。タチバナ、頼む。

 

「はい」

 

 タチバナが呪文を唱えると、俺達の姿がすっと消える。

 影の一族の得意とする光と闇の術の一つ、透明化。

 周囲に光を曲げるフィールドを作り、周囲から姿を隠す。

 

「私から余りお離れになりますと透明の場から出てしまいますのでご注意を」

 

 わかってる。それじゃ行くぞ。

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