全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第二十三話 ナバロンの嵐

「うう、頭にこぶが・・・」

「はいはい、ちょっと大人しくしてるんだよ」

 

 7mの高さから石の上に落ちたロビンに、シルが治癒魔法をかけている。普通首の骨折るか頭割って死んでるぞ。

 周囲に俺達を襲った連中が集まっていた。

 いかにもな手練れの傭兵、もしくは特殊部隊のような雰囲気の連中で、ロビンとは親しげだ。

 エフティがポンと手を打つ。

 

「あー、ひょっとしてあれか、傭兵隊の昔馴染みか?」

「あ、はい、そうです。

 エフティさんと取っ組み合ってたフランケンシュタインみたいな人がジョズ。

 冷酷無惨な殺し屋みたいな金髪の術師がジュカルさん、雷光銃使いのヒゲぼうぼうでむさくるしいのがジャンゴさん」

「お前素直そうな顔で毒を吐くのは変わってねえな・・・」

 

 ジャンゴが渋い顔になる。的確な説明だと思うぞ。

 なお一人だけ呼び捨てにされたフランケンシュタインは嬉しそうな顔でにこにこ笑ってた。

 ロビンとは仲が良いんだろうな。

 しかしジャジュジョで韻を踏んでるな。兄弟か?

 

「無関係だよ。全然似てないだろ」

 

 殺し屋っぽいジュカルが肩をすくめる。

 

「安心しろよ、俺達は違うぜ。アポロだ」

「ソロだ」

 

 肌の浅黒い、両手にナックルをはめた男。

 それにとっぽい感じのイケメン兄ちゃんが手を上げた。

 こっちはロで韻を踏んでるな。

 

「ちげーよ」

「ソロさんは結構ちゃらんぽらんなんだけど、仲間は絶対見捨てない人で。

 アポロさんはいつも不機嫌そうだけど実は面倒見のいい優しい人なんです」

「だからやめろって」

 

 ソロが肩をすくめた。

 それで? どういうことなんだ?

 

「実はな・・・」

 

 ミナに聞いた通り、彼等は辺境伯に雇われた冒険者だった。

 遺跡の奥の魔法装置を動かしている間彼等は外の警戒をしていたが、何かぴかっと光って中を覗いたら騎士(辺境伯の黄金像を持ち帰った奴)以外が黄金になってて、驚いたところを攻撃されたと。

 不意打ちだったことを考慮に入れても騎士は恐ろしく強く、やむを得ず撤退。

 

「割と最初から怪しい雰囲気は出してたんだけどな。まぬけな話だ」

 

 とのこと。

 騎士はそのままMMR号で逃走し、その際に「秘密を守るため、ドロシュ家としては貴様らを生かしておく訳にはいかん」みたいな事を言われたそうだ。エフティが溜息をつく。

 

「・・・なるほど、そりゃまず不意打ちしようとするわな」

「分かって頂けて幸いだ、お嬢さん」

 

 皮肉っぽく笑ったのはソロ。彼がこのパーティのリーダーらしい。

 ロビン曰く「若そうで結構老けてるので、実は最年長なんです」だそうな。

 ちなみに一番若いのがむさいひげ面のジャンゴだそうな。見えねえ!

 

「で、そっちはどういう事なんだ?」

 

 経緯説明(かくかくしかじか)

 

「『飛竜殺し』だったのかよ!?」

「それもやべえが状況もやべえな、それ」

「あの騎士野郎、絶対狸寝入りだろ」

 

 今となっては俺もそう思う。

 まあ俺が来るまで数日あった訳だし、奴も何らかのダメージを負っていて動けなかったのはありえる。

 とは言え今は早く帰ることだ。

 黄金像は他にもあるのか?

 

「全部で十一人分ある。あのスットコ辺境伯の従者とか学者とか」

 

 戻せるかどうかはともかくとして、MMR号に全部積んで行こう。

 ジューニャ、悪いが運んでくれ。黄金像となると一人一トンは軽く越えるからな。

 

「わかりました」

 

 エフティと俺も手伝おうかと申し出たが、ジューニャは笑って首を振る。

 実際かつてひまわりダンジョン入り口で数十トンの土砂を軽々と運び、更に少し前の刈り取りでは同量の麦や稲を運んだだけあって、十トン程度では苦にならないようだった。

 そして貨物スペースにずらりと並ぶ、十一体の黄金像。

 傭兵たちから溜息が漏れる。

 

「・・・壮観だねえ」

「目の毒だな」

「服の端っことか、ちょっとちぎって貰ったらダメかな?」

 

 こらこら。

 まあ気持ちは分かる。全部で金貨二百万枚くらいになるはずだからな。

 一般人どころか、貴族である俺にとっても目のくらむような額だ。

 

「実際これは元に戻せるのでしょうか?」

 

 これも魔術の一種ではあるだろうから、魔法神(アートシム)の神殿に持ち込んで解呪の儀式を行って貰えればワンチャンかな。

 このぽんこつ(ジューニャ)が《解呪(ディスペル)》の呪文を使えれば任せるんだが、習得してる訳がない。本人が胸を張って言ってたから間違いない。

 

「古代王国の魔法装置ですからねえ。私たちエルフや双翅妖精(ピクシー)ならまだしも、現代の人間の魔術師や神官が解呪できるかどうかはわかりません」

 

 それもあるなあ。まあ持ち帰って考えるしかない。

 

「あ・・・となると、ちょっと問題があるんだよ」

 

 なんだ、シル?

 

「MMR号は飛ぶんじゃなくて地上を移動するから、結構揺れるでしょ?」

 

 だな。まあ浮遊機構に結構ガタが来てるから、ジューニャの念動で持ち上げた場合でも、浮いて移動してると結構揺れる。

 移動に使う推進器が突然生き返ったりまた死んだりするから、ランダムにベクトルがかかって安定して水平移動出来ないのだ。

 

「となると金の像だから、倒れたりぶつかったりしたら壊れるでしょ? その場合、解呪が成功しても元通りにならない可能性があるんだよ」

 

 あー。それは思いつかなかった。

 馬車で壊れ物を運ぶようなもんだな。緩衝材無しに馬車に乗せたら、目的地に着く頃には粉々だ。さすがシル、商売人の娘。

 

「褒めても何も出ないんだよ。おが屑か何かあればいいんだけど・・・」

「材木だったら『飛竜殺し』様が派手に切り倒したから山ほどあるがね」

 

 削って木くずにするような時間もウッドチッパーもないから没。枯葉が沢山あればいいんだが。

 

「見たところ、この辺は常緑樹ばかりですので・・・」

 

 とタチバナ。

 まあそもそも枯葉の季節にはもう少しあるしな。無理な相談か。

 

「私が移動中ずっと念動で押さえ込みましょうか?」

 

 それしかないかなあ・・・あ、あれがあったじゃないか。

 

「あれ?」

 

 エフティが首をかしげた。

 

 

 

「この発想はなかった」

 

 術師のジュカルが唸る。

 まあ術師も結構発想が命ってところがあって、特に戦場ではそういう発想がしばしば命を救う・・・というのはエフティの受け売り。

 何をしたかというと別に気さくな奇策さんでも何でもなくて、ジューニャの呪文の一つ《土くれ(アース・ピース)》を使っただけである。

 調査隊が持ち込んだ大きな木箱に黄金像を入れ、緩衝材代わりにジューニャの出した土くれを詰めて軽く固める。

 後はロープで木箱を固定すれば、それだけで随分違うはずだ。

 同じくジューニャの呪文で水を出して、そこに金の像を入れて凍結させるという手も考えたのだが、《土くれ(アース・ピース)》の方が重量的にも魔力消費的にも随分軽くなると言うのでこちらを採用した。

 

「しかし・・・なんというか」

「これはひどいんだよ」

「ですねえ・・・」

「正直キメエ」

「うーん」

 

 タチバナでさえ苦笑している。

 まあしょうがないよなと、鉢植え状態になった金色の生首の群れを見ながら俺は嘆息した。




多分誰も分からないと思いますが今回の傭兵部隊は「ナバロンの嵐」という映画モチーフです。
内容は普通の戦争アクションなのですがメンツが(ある意味で)メチャクチャ豪華で

・スターウォーズのハン・ソロ
・「ジャッカルの日」の殺し屋ジャッカル(リメイクでは演ブルース・ウィリス)
・「続・荒野の用心棒」のジャンゴ(「棺桶を引きずるガンマン」というテンプレを作った人)
・「007私を愛したスパイ」「ムーンレイカー」のジョーズ(フランケンシュタインとジェイソンを悪魔合体させたような憎めない不死身の殺し屋で、帽子投げる人と並んで007の悪役ではツートップの人気を誇る)
・「ロッキー」シリーズのアポロ

という、映画史に残るレベルの名キャラ(を演じた俳優)が勢揃いしてるお気に入り映画です。

>ウッドチッパー
木材を粉砕して木くず(ウッドチップ)にする機械。たまに死体をミンチにするのに使う奴もいる。

>気さくな鬼作さん
今は亡きエルフから発売された18禁ゲームの主人公。
陵辱ゲームの主人公なのにあだ名の通りの気さくな善人で、全エルフキャラ人気投票で並み居るヒロインを抑えて一位に入ったり、抱き枕が発売されたりと、エロゲの竿役なのにやたら人気のある凄いキャラ。

>鉢植え生首
昔「Tomak」というゲームがありましてね・・・
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