全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
「施設内は全て空気で満ちているようですねぇ。重力もありますし」
「魔女の家」内部に入り、ジューニャが独りごちる。
宇宙港というか・・・あの入口にもエアロックみたいな機能があったからな。
最初から大気圏外で活動するように設計された乗り物なんだろう。
「乗り物・・・かよ。このでかぶつが」
傭兵たちが冷や汗を垂らす。
古代文明最盛期の真なる魔術師なんて、限りなく神に近い連中だからな。
その頂点にいたのが本来〈百神〉筆頭であったはずの真なる魔術師の長兄なんだし。
三千年前の「最初のサムライ」の伝説によれば100mの巨人を無数に作り出して魔獣と戦ってたわけだし、その気になればこれくらいは難しくもないんだろうさ。
「その100mの巨人ですら、封じられた魔獣には数合わせにしかならなかったって話なんだよ。どれだけ強かったんだよ古の魔獣」
「あ、それ本当らしいですよ。私の村の長老がそんな事言ってました」
マジかよさすがエルフ。直接ではないにしても、爺さんの時代くらいの感覚なんだろうな、こいつらにとっちゃ。
それはそれとしてだ。
「だな。そろそろ雑談はおしまいだ。戦いのお時間だぜ」
エフティの言葉に全員が頷く。
俺、フジ、シル、ジューニャ、エフティ、タチバナ。
ロビンはいざというときに備えてMMR号の操縦席で待機。
向こうも通路にシャッターを下ろしたりして色々妨害をしてきたが、ジューニャの魔力感知と、シルの《
程なくして俺達はメインコントロールルームとおぼしき場所に出た。
魔法というよりSFよりな内装の室内には様々な魔導機械やメーターが露出し、無数のランプがチカチカと点滅している。
その中央、コンソールの椅子に宇宙服のようなものを着た黒髪短髪の男。
こちらを向いて、鞘に収めた剣を床に突いている。
「ようこそ、来訪者」
この状況にそぐわない穏やかな顔で、彼が微笑んだ。
・・・随分と余裕だな。
よほどの自信があるのか?
それとも既に勝利してるとでも言いたいのか?
「いいや? 素晴らしい状況であると思っただけだ。
人々を苦しめる秘密組織の手先。
それを倒しにやってきた英雄たち。
舞台は遥か空の彼方、宙に浮かぶ古代の遺跡。
まるで英雄譚のようじゃないか」
俺の後ろからジューニャが囁く。
「彼、『ラダッソ』です」
有り得るとは思っていたがやっぱりか。
「ああ。私はラダッソ9973。この体の名前を借りてトーマでもいいがね」
ラダッソか。俺の知ってる奴はもっと非人間的だったが、お前みたいに妙に人間くさいのもいるんだな。
「さあ? 自分では人間くさいのかどうかよくわからない。
ほかのラダッソと会った事もないのでね」
・・・やっぱりこいつ、前のラダッソとは違うな。
正体を現したときのジローとかケーン兄さんについてた奴らは、もっと何と言うか・・・機械的だった。ジローやケーン兄さんのエミュレートは出来るが、自分の意識を全面に出した場合はどこか虚ろになる。そう長々とおしゃべりした訳じゃないがな。
もう少し話してみるか。
「どうした? 別に睨まれても何も出ないが」
ちょっと思い出してただけさ。
いつからその体に?
「三年目・・・もうすぐ四年目だな。
この遺跡を発掘するのに辺境伯の力が必要になって、工作をするのにこの人間が最適だったらしい。
元から読書家だったから主の覚えも良く、取り入るのには苦労しなかった。
こいつの持っている知識を使う事も出来たしな」
便利な奴だ。
お前達はどうやって作られる?
「知らないな。お前達も自分が生まれた時の記憶など持っていないだろう?」
なるほどそりゃそうだ。
お前の上司は?
「それを話せば使命に抵触する。
そして何を思っても私達は結局与えられた使命に従う。
そういう風に作られているらしい」
ふむ。赤紫の髪の女か? オルランディアとかいう。
そう言うと奴に僅かな表情の変化があった。
知っているなら聞くな。
そう言いたげな感じの。
それではもう一つ、お前達も『
「・・・」
今度ははっきりと肩をすくめた。
口には出来ないが感想は表明出来るらしい。
この遺跡を使って・・・いや、この遺跡は何のための遺跡だ?
人間を金に変えるためではないんだろう?
「・・・(ニヤリ)」
今度は笑み。うまいところを突くな、そう言う顔だ。
こいつ本当に表情が豊かだな。あるいはエミュレートがうまいのかも知れないが。
「あれは真実偶発的な出来事だった。事故と言ってもいい。
この遺跡というか施設を修理するために物質変性の魔力を使って部品を作る機構があり、それが誤作動したのではないかと思っている」
狙ってやったことではないということか。
「遺跡を動かすまでは辺境伯とあの学者たちの力が必要だったからな。
あのタイミングで辺境伯たちが金の像になってしまったせいで、そこから先が出たとこ勝負になってしまった」
お前だけが無事に生き残ったのは偶然か。
「単純に私の持つ魔力があれを弾いたのではないかと思うが、詳しい事は分からない。
あるいは同じ古代文明製だから、私のような存在には影響を与えないようなセーフティがあったのかも」
興味深い話だな。
さて他にはと考え込んだところで、傭兵のリーダー・ソロが口を挟んできた。
「ちょっといいか? 俺達に襲いかかってきたのは、ありゃどういう事だ?
聞いた限りでは
「君達が道中で既に私を怪しんでいたからだ。
辺境伯たちが金の像になって、その中で君達が怪しいと考える人間だけ無事だったら・・・どうするね?」
取りあえず武装解除して拘束するな。
「そう思ったので先手をとったまでだ。君達には申し訳ないがね」
「・・・なるほど、わかったよ」
肩をすくめるソロ。
いいか悪いかはともかくとして、納得は出来たんだろう。
「それで? 質問はそれだけかな?」
そうだな。この遺跡がどう働くものか、何のために動かしているのかと言うことは答えてはくれないんだろう?
「残念ながらな」
この遺跡が何故大気圏外・・・空の果てまで来たのかは?
「それも無理だ」
組織にとってどういう利益がある?
「それも答えられないな」
じゃあ質問を変えよう。
この遺跡が完全に稼動したらどうなる? 黒い渦の中の村々は?
「完全に消滅して跡形も残らないだろうな」
けっこう。
出来ればもっと色々語りたいところではあるが・・・必要なところは教えて貰った。感謝する。
「どういたしまして」
舌を使う時間は終わりだ。ここからは剣での会話と行こうじゃないか。
「いいだろう。それもまた私の望むところだ」
「ラダッソ」が立ち上がり、剣を抜いた。
>戦いのお時間だぜ(It's Crobberin Time!)
マーベル作品の一つ「ファンタスティック・フォー」のパワー担当ザ・シングの決め台詞。
古いアニメ翻訳だと「ムッシュムラムラ!」になる。
>ようこそ、来訪者
「バオー来訪者」より。
最強の敵ウォーケンがバオーと相まみえたときのセリフ。