全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

108 / 110
第三十一話 銀色ホライゾン

「さあ来い、英雄たちよ。私を倒して世界を救ってみせろ」

 

 剣と盾を構えてコンソールの前に立つトーマ・・・いや、ラダッソ。

 最初見た時から気にはなっていたが、こいつが身につけているのは騎士甲冑ではなく、SFの装甲宇宙服と言った感じの装備だ。

 恐らくはこの遺跡の中にあった古代文明の品。防御力と気密性を兼ね備えている。後者はともかく前者は侮れない。

 剣と盾もその辺の数打ちではなく、装飾はないがそれなり以上の魔法の品だ。平騎士トーマの持ち物とも思えないので、恐らくは組織の手引きで手に入れた品なんだろう。魔法の品は高価だが、その程度の装備を与えても構わないと思うほどにはこの作戦が重要と言うことだ。

 

 俺は中央で西川正宗を青眼に構える。横に忍者刀のフジと盾を構えたエフティ。

 俺の後ろにシル、その両脇にジューニャとタチバナ。

 左翼にソロとアポロ、右翼にフランケンシュタインことジョズが回り、その後ろにそれぞれ術師のジュカルと雷光銃使いのジャンゴ。

 まずは小手調べだ。

 西川正宗が震動を始める。

 フォノン・メーザー斬りの予備動作。

 このまま剣を振り上げて振り下ろす。その一秒ほどの準備時間の間に敵が先んじた。

 

「ラタ・イパイユ!」

 

 奴がコマンドワードを唱えた瞬間、両脇壁のコンソールの間にあった壁が開いた。

 中から出てきたのは魔導機械。

 オークション会場に殴り込んできた狼男ロボみたいな戦闘機械だ。

 こっちは銀色(クローム)の装甲で身を覆った4mの機械カマキリ。

 複眼型の視覚素子にレーダーアンテナ、四本の足に四本の腕、腕の先には鎌と、恐らくは魔力弾か何かの発射装置。

 それが八体。

 ちっ、余裕かましてられるわけだ!

 エフティとタチバナ、フジ、傭兵たちは円陣組んで術師を守れ! 親玉は俺がやる!

 叫ぶと同時に全員が素早く動いて後衛たちをカバーする。

 ソロ達もさすがに練度が高い。

 

「イェェェイッ!」

 

 ほとんど同時に発動しかけていたフォノン・メーザー斬りをそのまま振り下ろす。

 

「はあっ!」

 

 奴の盾が光を放った。

 そのまま光の刃を盾が受け止め、一瞬拮抗したものの、盾を切り裂くことは出来ずに雲散霧消する。

 その瞬間を狙って奴が動く。斬り込んできた右手の長剣を西川正宗で打ち落とし、燕返しに首を狙う。体をひねり、奴が盾で受け止めた。

 ジューニャが叫ぶ。

 

「魔封じの盾です! 魔法的な攻撃は通用しません!」

 

 え、マジ!? 何その反則!

 

「反則と言いますか・・・理屈は簡単なんです。盾の表面に強い魔力を集中させる、それだけの魔道具です。なんですが・・・」

 

 強い魔力は他の魔力を打ち消す。魔力によって引き起こされた現象も。そうだな?

 

「はい、そう言う事です」

 

 魔法を撃ち合えば相殺することがあるし、強い魔力の持ち主には魔法は効きづらい。

 これもまた魔力が混沌の力であるためだ。

 術式や意志の力と言ったある種の秩序で魔力を制御しているところに、より強い混沌の力をぶつければ秩序は崩壊し、術式などによっておこされていた現象はただの魔力に戻る。

 

「つまり、単純にカエラくんより彼の魔力の方が圧倒的に高いんです!」

 

 理屈はわかる。わかるんだが、俺のフォノン・メーザー斬りを一方的に打ち消すとか強すぎないか?

 あのダスキーニでもあるまいし、ラダッソにしろ依り代の騎士トーマにしろ、そこまで強力な魔力の持ち主とは到底思えないんだが・・・

 

「ないならよそから持って来ればいいんだよ。魔力結晶か、あるいはこの遺跡の魔力炉から何らかの手段で持ってきてるか」

「・・・あっ!」

 

 シルの言葉に、ジューニャが何か気付いたらしい。

 

「やっぱりそうです! シルちゃんの指摘通り、あの鎧・・・服?に遺跡から魔力が流れ込んでます!」

 

 爆発術師のジュカルと雷光銃使いのジャンゴが眼を細めた。

 

「奴の背中に何か箱みたいなのが取り付けてあるな」

「そこに魔力が流れ込んでるみてぇだ」

 

 よくわかるな・・・あ、ブラックアウトしたモニタに映ってるのか。

 

「そういうこと」

 

 そんな会話をしながらも、俺はラダッソ9973と激しく切り結んでいる。

 他の面々もだ。

 フジやタチバナは機械カマキリを翻弄し、ソロやアポロも善戦している。

 エフティやジョズに至ってはシールドバッシュで機械カマキリを吹っ飛ばし、リフトアップして床に叩き付けていたりした。

 すげえな、細身とは言え4mの戦闘機械ふっ飛ばすとかあいつら人間か?

 

 一方でこちらは膠着状態だ。

 盾の機能はあくまで「魔力を集積する」だけだし、滅魔合金(オリハルコン)のクサナギは術式を消滅させる事はできても、マジックアイテムを破壊するのは難しい。

 それができるなら、ダブルエッジとやりあったときに西川正宗を破壊されてたろう。

 魔力を集積して魔力を弾く。単純ゆえに大出力を伴うと破るのが難しい。

 レベルを上げて魔力で殴れってやつだ。

 ジューニャの《念動》ですら満足に効果を発揮せず、弾かれる。

 まあ戦闘では《鎧》かけてくれるだけで役に立つし、それ以外は滅多に役に立たないが。

 

「カエラ君ひどい!」

 

 ええい心の声を読むな!

 

「~~~~」

 

 後ろで響くシルの詠唱とバチバチ鳴るそろばんの珠。

 できれば途中で発動しておきたかったのだが、《明晰(クリア・マインド)》くらい「重い」呪文になると、維持に魔力消費だけではなく集中力もかなり消費する。

 肝心なときに切れたら目も当てられない。

 そして一番重要なことなのだが・・・狭い通路だと呪文の演算を大幅加速する《無限珠算》が展開出来ないのである。シルの出すそろばんには物理的な実体があり、それを展開するスペースがどうしても必要なのだ。

 うーん意外な弱点。なんてのんきしてる場合じゃないんだけどな!

 などと思いつつ、俺はラダッソ9973の突きをそらし、カウンターで西川正宗を突き込んだ。

 

 刀身がすれ違う。

 そらされたラダッソの剣は俺の頭から20センチ離れた所を通過し、西川正宗は奴の側頭部をかすめて髪と皮を削った。

 くそ、攻め切れん! 武具の差込みだが、ダスキーニほどではなくとも普通に強い!

 後ろからは怒声と咆哮、機械カマキリの鳴き声と大きな物が叩き付けられる震動。気配からしてあちらもかなりギリギリの攻防だ。

 時折ジューニャからこちらに援護も飛ぶのだが、やはり魔除けの盾に阻まれて効いていない。

 魔力の経由元である装甲宇宙服や背中の追加ユニットを狙ってるようだが、それも盾に防がれているようだ。

 フジかタチバナを外して後ろを狙ってもらうか?

 いや、それでも戦線が崩壊する可能性が否定出来ない。

 ジューニャに・・・いや、ロビンだ。シルとは心話の術で繋がっている。

 それで呼んで貰って、カマキリを分解して貰えば・・・

 そう思った瞬間、コントロールルームの正面扉が開いた。

 ロビン?

 そうか、シルが気を利かせて呼んでくれたか!?

 ロビンが両手を揃え、花のように指を開く。

 待て、その方向は・・・

 次の瞬間、俺達全員の身につけているものが散り散りに吹っ飛んだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。