全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
「事態の解決にカンパーイ!」
「乾杯!」
「乾杯!」
乾杯・・・。
「なんだカーヴェ! テンション低いな! せっかく解決したのに!」
バシバシと俺の背中を叩くジロー。
カピラダンジョン代官館で、事件解決の祝宴である。
マット村からアウジュニャ・ブランデーの樽をダース単位で運んできての振る舞い酒だ。表では調査隊の連中や冒険者たちが飲めや歌えの大騒ぎ。
お前は飲まないのかって?
いいえ私は遠慮しておきます。
「ふむ! 悪くない。雑味とえぐみが綺麗に取り除かれている! よほど優れた蒸留技術を用いているのだな!」
「それはもう、エルフの大魔術師が作っておるんじゃぞ? 技術的に優れているのは当たり前じゃろうがい!」
テンション高い魔法省次官と大魔術師。
普段冷静なザイオン次官も、さすがに安堵でタガが外れているらしい。
「どうしたカーヴェ、ワインなんか飲んで! お前もジューニャ先生のブランデー飲めよ!」
だから飲まないって言ってんだろ。いいから飲め。今日は山ほど持ってきてるから。
「そうか! いやー、持つべきものは友達だな! 我らがカーヴェに乾杯!」
「カエラ卿に!」
「『飛竜殺し』に!」
グラスを掲げるジロー達三人。
それに形だけ応じて、俺はこっそり溜息をついた。
祝いの夜が明けて翌朝。
俺達は今まで目を背けてきた事実に向き合わないといけなくなった。
いつかは直視しなければいけない事。
だが誰もが直視したがらないこと。
それを見ることは苦痛を伴い、絶望を呼び起こす。
百戦錬磨の勇者と言えども心をくじかれ、いっそ殺してくれと叫びたくなるほどの苦悩。
それでも俺達はその先に待つ地獄を踏破しなくてはならない――。
つまり何が言いたいかというと。
「おーい、刀の金具がそのへんにないか!」
「あれ、こんな部品あったかなあ・・・?」
「あーそれ私の鍵開け道具ですね」
「おい、歩き回るなよ! 雷光銃は細かいパーツも多いんだぞ!」
「お、丁度いい装甲板発見」
「それオレの鎧の肩当て!」
「革鎧のパーツ、端切れになっててどれがどれだかわからねえ・・・」
「鎖かたびらのリングが一つ一つバラされてないだけマシだろ」
「これは・・・私の服の裏地なんだよ?」
「悪い、それ俺のパンツ」
「いやあああああああああああああああああああ」
ラダッソだったときのロビンがバラした、武器やら防具やら雷光銃やらのパーツの捜索作業である。
時間がなかったものでまとめて回収してきたのだが、その時にこれもロビンに解体された機械カマキリのパーツをまとめて持ってきたから話がおかしくなった。
カマキリのパーツ自体はどれもこれもかなりの値で売れるし、ジューニャやロビンが活用出来そうな部品も沢山あるのでしょうがない。
ただなあ、雷光銃はもちろん日本刀や金属鎧も細かい金属のパーツが多数あるんだよなあ・・・
加えて服や鎧の布や革、ボタンや革ひもなんかもごちゃごちゃで、シルのような悲劇も起きる。これ今日中に終わるかな・・・
おい誰だ、木箱に「余ったネジ」ってラベル貼り付けたの。
夕方の談話室。
あー疲れた。丸一日使って何とか仕分けたが、カタナはともかく雷光銃や鎧に関しては、今後ロビンや村の鍛冶師にどうにかしてもらわんといけないな。
なお服と革鎧の方は村のお針子にお願いする予定である。
「本当にすいません・・・」
俺に頭を下げているのはロビンである。
だからあれはいいって。お前の責任じゃないんだからな。
気にしてるなら今後の働きで取り返せ。
「はい!」
嬉しそうに頷くロビン。まじめな娘だからな。色々気にしてたんだろう。
「それでですね、あの」
なんだ?
「助けて頂いてありがとうございました。あのままじゃ私、ラダッソに乗っ取られてもう二度と鍛冶も何も出来なくなってたと思います」
助けるって言ったろ。お前は俺の家臣だ。困ってたらそれは助けるさ。
「はい・・・」
うつむいて頬を染めるロビン。
おや。おやおやおや~?
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
周囲の女どもの視線が痛い。
ジローがここにいなくて良かったな。うるさいし、クレアさんがいたら命の危機にも発展しかねん。もちろんジローの。
「またなんだよ」
「またですね」
「女たらしがよぉ・・・」
上からシル、ジューニャ、エフティ。
なんでや! 別に口説いてないぞ!
一方でなんかニッコニコしてるのがフジとタチバナ。
「ロビンさん」
「は、はいなんでしょうタチバナさん」
「私の勘違いなら言って欲しいのですが、ひょっとして若様に懸想してはおられませんか?」
「!」
顔を真っ赤にしてうつむいてしまうロビン。
おまえなー、そんなダイレクトになー。
「よいではありませんかカエラ様。母も申し上げた通り、これは治療なのです。
さてロビンさま。カエラ様と同衾するにはカエラ様に絶対忠誠を誓う奴隷になる必要がございます。今この場にいるわたくしどものように。
それで・・・」
ああもういい、二人とも黙ってろ。
「はい」
「かしこまりました」
あー、ロビン。聞いての通りだ。
俺は魔法で奴隷にした女しか抱かない。いや、抱けない。
それでいいなら俺の女になるか?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
長い事、ロビンは無言のまま。
「・・・はい。領主様の・・・カエラ様の奴隷にしてください」
そして最後にはっきりと頷く。
俺とシル達の溜息と、フジ、タチバナ親子のハイタッチの音が部屋に響く。
俺の好色漢って噂、ひょっとしてこの親子が元凶なんじゃなかろうか?
溜息をついて俺は新しい奴隷(おんな)の頭を撫でてやった。
>余ったネジの箱
FGOより。
万能特殊車両シャドウ・ボーダー(おおむねストレンジジャーニーのレッドスプライト号)が秦の始皇帝によって分解再組み立てされた際に残されたもの。
温厚なダヴィンチちゃんをして「口の中に余ったネジ入れて殴る」と怒らしめた。