全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第四話 わかっちゃいるけどやめられない

 おいおいおいおい。

 禁酒できなくて飲みに行ったって、お姉さん狙われてる自覚あんの・・・?

 

「あるとは思うんだが・・・酒が絡むとどうも自制が利かなくなってなあ・・・」

 

 ああ、分かるよ。そう言う奴をひとり知ってる。お前の事だぞジューニャ。

 

「うぐっ」

 

 視線が一斉に集中し、ジューニャが身をすくめる。

 

「い、いくら私でもそこまで酷いことには・・・!」

 

 そうだな、子供の頃に盗み飲みして尻を百叩きされたり、猿酒盗もうとして猿に引っかかれたり、泥酔して全裸大股開きで廊下で寝てたり、盗み飲みして伯爵家追放されたり、それでも酒をやめられずに身を持ち崩したり、酒目当てで俺のトコに来て土下座したり、村でも盗み飲みしたくらいだよな。

 

「うぐぅ」

 

 冷たいのと生暖かいのと半々くらいで駄エルフに突き刺さる視線。

 気がつくとアーザックが俺を見ていた。

 

「そうか・・・あんたも苦労したんだな」

 

 分かってくれるか。

 心で通じ合った男同士に言葉はいらない。

 俺達は無言で固く握手を交わしたのだった。

 で、お姉さんの行きそうなところに心当たりはあるのか?

 そう言うとアーザックが首を振る。

 

「知り合いの家や獣人街の酒屋は当たってみたんだが・・・」

 

 じゃあ手分けして探すしかないか。

 フジは俺と、エフティはロウとヒョウ、タチバナはロビンと回ってくれ。

 アーザックはシルとジューニャ。レイはここで連絡係。

 

「なんで私とジューニャ先生はアーザックさんとなんだよ? フジはカエラちゃんと一緒なのに」

 

 お前とジューニャは外見があれだから舐められやすいし、変なのが寄ってくるだろ。

 この街ではちょっとした顔らしいアーザックが一緒にいればまだしもだ。

 タチバナとロビンは絡まれても十分自衛出来る。

 フジが俺と一緒なのは、聞き込みの役に立たないからだ。

 

「ふぐっ!」

 

 傷ついたような目でフジが俺を睨んでくるが、しゃーないやろ。

 

「貴方が至らないから若様がお気遣いしてくれているのですよ。自覚なさい」

「ううっ」

 

 俺相手には毒を吐くちびメイドも、母親にはかなわない。

 がっくりと肩を落とすフジ。兄二人が苦笑しながら頭を撫でるのを乱暴に振り払う。

 で、お姉さんの名前と外見は?

 

「名前はティリオン、愛称はティル。

 俺が言うのも何だがまあ美人の部類に入ると思う。スタイルも悪くない。

 肩までの明るい緑色の髪で二十歳くらい、タルそうな顔してるから見ればわかるだろう」

 

 中々派手な外見だな。オーケイ。

 門番の人も注意しておいてくれないか?

 

「ちょっとやばいことになっててな。頼む」

「例の件だな、わかった」

「早く見つかるといいな」

 

 アーザックが門番たちに頭を下げる。二人もまじめな顔で頷いた。

 それじゃ取りあえず手分けして探して、昼になったらここに集合。いいな?

 

「了解なんだよ」

 

 

 

 俺達は文字通り四方に散り、目立つ緑の髪を探す。

 探しているのだが・・・

 

「おうおうおう、貴族の若様よぉ。ここはおたくみたいなのが入ってくるところじゃねえぜ。

 俺達のシマを通り抜けたければその綺麗なカタナを置いてってもらおうか?」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 で、何か言いたいことは?

 

「ずびばぜんでじだっ!」

 

 地面に転がる獣人のゴロツキ三人。

 獣人って事でちょっと警戒してたが、剣士(ソード)級にも届いてないような連中ばかりで拍子抜けだ。

 で、明るい緑色の髪の女を見てないか?

 

()でばぜん・・・!」

 

 そうか、なら用はない。

 邪魔したな。行くぞ、フジ。

 

「雉も鳴かずば撃たれますまいに」

 

 溜息をついてフジが身を翻した。

 

 

 

「ようよう、かわいいメイドさん連れてんじゃねえの。

 俺達にもちょいと使わせて・・・」

「申し訳ありませんが論外です」

 

 俺が手を出すまでもなく、チンピラたちが薙ぎ払われた。

 うんまあこいつ素手でも強いんだよ。

 涼しい顔をしてるが結構切れてるな・・・くわばらくわばら。

 

 

 

「明るい緑の髪の鳥獣人の女? ああ、見たぜぇ。ただいくらか貰わないことにはよぉ」

 

 金だけ貰って逃げ出したら、お前を捜し出して斬るけどいいな(殺気)?

 

「すいません! そんな女見た事もありません!」

 

 正直で結構(溜息)。

 

 

 

「兄貴! あいつらです!」

「おう兄ちゃん。よそ者が随分と派手にやってくれたようだなあ・・・?

 てめえら、遠慮はいらねえ、やっちまえ!」

 

 (フォノン・メーザー)波ぁ!

 

「「「「ぐわーっ!」」」」

 

 説明しよう! フォノン・メーザー波とは、手から放つフォノン・メーザーである! まんまだな!

 剣と違って収束しづらいので「斬り」ではないし遠くまで届かないが、その分広範囲に拡散するし手加減したい場合には丁度いい。

 光る波動が十人くらいいたチンピラ集団を薙ぎ払い、全員あっさり気絶した。

 まー脳みそから内臓までシェイカーされたら大抵の奴はそうなる。

 兄貴分を叩き起こして聞いてみたが、やっぱり緑色の髪の女を知らなかったので放置して立ち去る。

 

 ざわ・・・ざわざわ・・・

 遠巻きにざわめく群衆に呼びかけてもみたが、やはり知らない模様。

 次はあっちの方に行ってみるか。

 

「もしもし、お兄さんお兄さん」

 

 歩き出した瞬間、声がかかった。

 見ると、粗末な木造の家が建ち並ぶ通りの路地からこっちに手を振ってくるフードの女。

 俺はフジと顔を見合わせるとそちらに歩き出す。

 危険なところに誘い込まれたならそれはそれでだ。

 路地に入ると女が揉み手をしてすり寄ってきた。

 

「いやあ、お兄さん強いニャア。それでちょっと頼みがあるんだけどニャア?」

「!」

 

 フジが目を見張る。

 フードを下ろした女の髪は、黄色のメッシュが入った明るい緑色をしていた。

 

 

 

「・・・あ、でも探してる人ではないようですね」

 

 だなあ。

 ぴょこんと頭の上に飛び出した猫耳。お尻の辺りから髪と同色の尻尾。

 二十歳くらいでタルそうな美人、スタイルはグラマーで胸も尻もでかい。ドンピシャで本人かと思ったんだが、鳥獣人の姉が猫獣人ってことはあるまい。

 まあそれはいい。それで? 頼み事をするなら代償を支払うのが筋だと思うが?

 

「もちろんニャ。聞いた感じ、アーザックの姉のティルを探してるニャ?

 行き先に心当たりがあるニャ」

 

 本当か?

 

「もちろんニャ。獣人街の外の酒場ニャ」

 

 まあそんな所だろうとは思ってたが。

 で、何が欲しいんだ?

 

「行くのは酒場ニャ? ここのところジジョーがあってニャーも酒を飲めないニャ。

 酒場で一杯おごってくれればそれでいいニャ」

 

 まあそれくらいならいいが。

 

「それと、ニャーはちょっと目をつけられてて門から出て行けないニャ。

 壁を越えるのを手伝って欲しいニャ?」

 

 おおっと、ちょっときな臭くなってきましたぞ。

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