全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第十二話 シル

 部屋の中に滑り込む。

 俺の波動感知で「見えた」のは質素な部屋の二つのベッド。

 そこに眠る豊満な肢体の少女と、10才から12才くらいの小柄な少女。

 フジたちみたいに夜目が利かなくても、シルがどっちだかわかってありがたい。

 

「少しお待ちを」

 

 タチバナが術を解いてもう一人の少女に近づくと、口元に手を当てて何かする。

 

「眠りの香です。よほどのことがあっても起きませんわ」

 

 さすがそつない。

 タチバナは扉の外に注意しててくれ。

 波動感知は集中してないと使えないからな。

 

「はい」

 

 眠るシルの口元を抑えると、俺はそっと体を揺する。

 

「・・・!?」

 

 起きたか。

 

「――! ――――!」

 

 こら、暴れるな! 嬉しいのは分かるから!

 

「――! ――! ――――!」

 

 人の言うことを聞け! 落ち着け!

 マグロみたいにビチビチはねるんじゃない!

 しばらく格闘した後、大人しくなったのを確認して手を離す。

 ええい、余計な時間を取らせやがって。

 

「・・・カエラちゃん!」

 

 うおっと。

 飛びついてくるシルを受け止めて抱き上げてやる。

 正直時間が惜しいと思わないではないが、泣きじゃくる女の子を突き放すほど俺も冷酷ではない。

 しかしこいつもなあ。

 外見11才の小学生女子に抱きつかれてもうれしくないんだよなあ。

 俺やフジと同い年のはずなのに、どうしてこうなった。

 

 

 

 落ち着いたか?

 

「うん!」

 

 思ったよりは元気そうだな。

 

「カエラちゃんが助けに来てくれるって、信じてたから!」

 

 にぱっと笑う外見11才、実年齢16才の合法ロリ。

 黙ってれば超絶美少女なんだが、外見相応に性格も幼いから困る。

 

「むー。カエラちゃんの目が生暖かいんだよ」

 

 気のせいだろう。

 ともかく逃げるぞ。余り長くはごまかせない。

 

「ダメなんだよ。逃げるならここにいるみんな一緒なんだよ」

「えっ?」

 

 思わずと言った感じでフジが驚きの声を漏らす。

 それはあれか、ここで何かやってるってことか?

 そう言うとシルが目を丸くした。

 

「どこで知ったの?」

 

 見張りの数と質が異常だったからな。

 どっかの凶暴なおてんば姫ならともかく、戦闘の心得もない良家のお嬢様方を閉じ込めておくには過剰すぎるしコストが見合わなさすぎる。

 

「そっかー。やっぱりカエラちゃんはかしこいね」

 

 おまえほどじゃないがな。それで? ここで何が起きてるんだ?

 

「最初に聞くけどカエラちゃんたち、他の部屋はのぞいた?」

 

 誰が女の寝室を覗くか・・・と言いたいが、そうか、普通は一つ一つ部屋を覗いて確認する必要があるか。

 いいや? のぞいてないぞ。

 

「私どももですが・・・何かあるのですか?」

「うん。その前にもう一つ、この修道院から出て来たって子の話、聞いたことある?」

 

 全員揃って首を振る。

 

「だよね。ここの修道院、随分前からそういうことをやってるんだけど、だとしたら閉じ込められた子達の中には、結構歳を取った人がいてもおかしくないよね?

 でもここにいるのは若い子ばかりなの。最年長が二十くらい」

 

 それは・・・おかしいな。

 

「今五十人くらいいるんだけど、時々いなくなるんだって。

 私が来てからはまだないけど、半年くらい前にも何人かいなくなって、修道女の人達に聞いたら『家に帰りました』って言うんだって」

 

 ・・・。

 

「・・・」

「・・・」

 

 何かあるとすれば・・・

 

「地下でしょうね。若様は何かお感じになりましたか」

 

 ああ。さっき波動感知を展開してるときに、地下の空間にかなり大きな魔力を感じた。

 例の結界を作っている魔法装置か何かだと思ったが・・・

 

「人がいたかどうかわかりますか?」

 

 わからん。魔力の波動と生命の波動というのは良く似てるからな。

 あのサイズの魔力があると人間程度の生命力の波は紛れて見分けが付かない。

 

「ですか・・・今日はいったん引くことを提案します。

 シル様のおっしゃる通りなら全員を助けられる計画が必要なのと、裏付けもとった方がいいでしょう。

 いなくなった方々の名前は分かりますか?」

「半年くらい前にいなくなったのがタングレー侯爵家のペルゼ、スケニア伯爵家のファロー、ゾラタス子爵家のタンギア、オーロン商会のパラス、家名は分からないんだけど、ジェーナ、サン、シフォン、タミーって名前も聞けたよ。

 多分それぞれ美神(リスレー)神殿の司祭長の隠し子、前近衛司令官の孫、財務副大臣の娘と姪だと思う」

「これまた相も変わらず・・・」

 

 フジが唸る。

 ちらっと聞いただけだろう名前がすらすら出てくるのがこいつの怖さだ。

 実はこの合法ロリ、異常なほどに記憶力がいい。

 例えば「三年前の二月二日に俺はどんな格好をしてた?」と聞けば、「飛ぶ鳥と『Z』のマークの刺繍が施された赤い上着を着てたよ」とさらっと答えられるのである。

 さらに「これこれの貴族にはこれこれという娘がいる」とちょっと聞いただけの話を組み合わせれば、このように見たこともない人間の素性をぴたりと当てられる。

 多分地頭も俺よりいいし、言ってみれば最強の情報分析官だ。ひょっとしてフジよりこいつの方がよっぽど忍者(スパイ)に向いてるんじゃないか?

 

「えへへへ。ほら、カエラちゃん、ほめてほめてー」

 

 まあこの性格が全て台無しにしているという話もあるが。

 苦笑しつつ俺は「なでれなでれ」と笑顔で要求してくるシルの頭を撫でてやった。

 

 

 

 それじゃ行くぞ。すぐに助けに来るから、それまで待ってろよ。

 

「うん、待ってる。・・・・・・・・・・」

 

 なんだよ、口突き出して?

 

「ちゅーだよ! お別れのちゅー! こう言う時はそうするものでしょ!?」

 

 私怒ってます、と腕を振り回すシル。この頭の良さとこの性格のギャップはなんなんだろうな。

 しょうがないのでおでこにキスしてやったら、もっとむすっとした顔になった。

 

「こう言う時はお口にちゅーでしょ! フィアンセなんだから!」

 

 はいはい、助け出したらそうしてやるよ。

 

「約束だよ、絶対だからね!」

 

 ぷんすこ!とわざわざ口で言うシルをベッドに放り込み、俺達は部屋を出る。

 ・・・おい、フジ、タチバナ。何をニヤニヤしている。

 

「いえいえ」

「気のせいでしょう」

 

 ええい、まったく!




>三年前の二月二日
飛鳥ぁ~~~っ!(ズバット感)
月マガの仮面ライダーSPIRITS・V3編がズバット過ぎて吹いた。
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