全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
おじさんが矢継ぎ早に動き出した。
まずはティルを連れて来て似顔絵作成。
何と記憶を読み取って幻像にできる術師が警邏にはいるのだとか。正体は俺も教えて貰えなかったが、確かにこんなのがいたら狙われまくるから表には絶対に出せない。
なお自発的に協力してくれないと結構な確率で抵抗されるので、そこまで便利でもないそうな。断片的な情報だけでも拾えるから強力なのは間違いないのだが。
そして売人殺しと放火、更にはシュワルツが左遷される原因ともなった売人殺しと横流しについて、それぞれ専従の捜査官チームを作って大々的に捜査を開始。
日本で言えば特別捜査本部だな。
当然麻特からは非公式に抗議が届いたらしいが、シルが言ったように「文句があるなら国王陛下に直接言えい!」と突っぱねたそうである。
とってもいい笑顔をしてましたよ、と秘書官の人がこっそり耳打ちしてくれた。
温厚な人を怒らせると怖いなあ。気を付けよう。
そしてシュワルツ氏の保護。
お母さんの葬式と埋葬はシルと近所の人達がつつがなく執り行ってくれたが、本人は魂が抜けたようになっているらしい。今は護衛つきで内務省が抑えている隠れ家にいる。
早く立ち直ってくれれば・・・などと言えた義理でもないが、回復を祈るばかりである。
最後に俺達だが、当然楽などさせては貰えない。
この絵図の中で俺達が配置されるのは遊撃隊。
要するに聞き込みも潜入も実力行使も全部やる便利屋である。
場合によってはニシカワ家や影の一族、立場上おじさんが接触しづらい盗賊ギルドへのコネとしても使うつもりだろう。
実家のコネを使うのは嫌? こっちから言い出したことだしそんな贅沢は言えない。
むしろ「いっぱしの貴族なら仲の悪い相手でも付き合ってみせろ」というおじさんなりの試練というか親心だろう。
その辺はさすが官僚の家、代々軍人貴族のうちとは一線を画してるわ。
「やあ、久しぶり・・・と言うほどでもないか。それでこちらに接触してきたのかね」
と言う訳でいきなりお使いに出されたのは、でっぷり太った盗賊ギルドの首領タムレインのところである。場合によってはとか言ってしまってなんだが。
それはともかくどうもどうも。ジローと娘さんの結婚式以来ですね。クレアさんはいい夫婦生活してるみたいですよ。
「それは何より。初孫が生まれるときは私もあの船でカピラまで連れて行ってくれないかな?」
いいですよ、それくらい。
「ありがとう。しかし警邏が殺されかけた話は聞いていたが、そんなことになっていたのか」
本題の前に一応聞いておきたいんだが、殺された売人っておたくの手のものか?
「いや。うちは麻薬は扱わない。昔の麻薬禍ではうちのシノギも大分損害を受けたからね。
それ以降、盗賊ギルドでは麻薬は扱わないのが鉄の掟だ。私自身も麻薬は大嫌いだよ」
それは重畳。意見が一致するのは喜ばしい限りだ。
しかしそうなると、麻薬組織って盗賊ギルドの目を盗んで商売してる訳か。
「積極的に麻薬を根絶したりはしていない。
ウチの者が手を出したら厳罰に処してはいるがね」
相互不干渉か。しかしそうなると麻薬組織の情報はそちらでも余り掴んでいない?
「まあそうだな。ただ、大体の見当はつくし、見張らせておくことはできる」
それだけでもありがたい。頼んでいいかな。
「もちろんだとも。まあ貸し一つと言うところだ」
結構。どうせ貸しを払うのはジョンおじさんだしな。
「交渉成立だな。そうそう、ジョンにまた今度飲もうと言っておいてくれ。
もちろんまわりにバレないようにね」
伝えておくよ。しかし見事に警察と犯罪組織のトップの癒着だね。
俺は肩をすくめてその場を後にしたのだった。
その後は次々と麻薬組織を摘発。無論その影には
フジが家の中に忍び込んで証拠の帳簿を探したり、
俺の波動感覚で不自然な空間を見つけたり、
シルが帳簿を調べて粉飾決算を暴いたり、
俺が『飛竜殺し』の武名で無茶を押し通したり、
ジューニャが《
大人しく白状しなければ俺を嫁さんや娘さんにけしかけるぞと脅しの材料に使われたり、
エフティがチンピラどもをボコッたり、
俺が伝令代わりにメットーの端から端まで走らされたり、
ロビンが実家の工房やその知り合いに声かけてくれたり、
俺がレーザーマイクロフォンで盗聴器代わりにこき使われたり、
ティルが聞き込みポロリで重要な情報を喋らせたり、
色々な苦労があったのである。
・・・いやこれ、俺だけ突出してこき使われてない?
「忙しいのは有能さの証拠ですよ。主が有能でわたくしも誇らしゅうございます」
ええい、この毒舌メイドは! つむじぐりぐりの刑執行!
そうして多くの組織や売人を摘発し、麻特の反発や妨害もシャレにならなくなってきた頃。
「えっ?」
「おや」
「カエラ卿か。すまないな、随分心配を掛けてしまったみたいだ」
おじさんに中間報告に行くと、内務大臣室にシュワルツがいた。
・・・もう大丈夫か?
「ああ。いつまでもぼんやりしている訳にもいかないだろう」
今日は何かあったのか?
「あったのかというか、それがあったから寝ぼけまなこを叩き起こされたんだ」
「今から聞くところだったんだが・・・何があったのかね?」
「・・・」
シュワルツの顔が真剣なものになる。
「俺が左遷されたきっかけの、汚職警邏のことは覚えているな?」
無論。
死んだって話だったな。
「ああ。セーフハウスでぼんやりと窓の外を眺めたときにそれが目に入ってな」
?
「外を歩いてたんだよ。その死んだはずの巡査が」
・・・なんだと?