全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第十九話 ある夜、森の中

 橋を越えた先は「敵」のテリトリー。

 道は見張られている可能性が高いと言うことで、ここから先は罠を警戒しつつ森の中を小走りに移動する。

 実際レイとフジの制止で何度か立ち止まって罠を解除した。

 ・・・止まれ!

 

「!?」

 

 二人ではない俺の制止に全員が驚いて立ち止まる。

 

「一体何ですか?」

「見た感じでは罠はなさそうですが・・・」

 

 先頭を走っていたレイとフジの兄妹が頷き合う。

 

「周囲にゃ気配はねえぜ」

「俺も何も感じねえな」

 

 と、エフティとアーザック。

 いやそうじゃなくて・・・

 

「結界ですね、カエラ君?」

 

 そうだ。さすがにジューニャは気付くか。

 現在俺の波動感知は50mほどの範囲にまで達している。

 その範囲の中に、魔力で形成された壁状の術式・・・つまり、魔術の結界らしきものが触れたのだ。

 止まった時点で結界まで30m。そのまま進んで接触していたら、なにがしか面白くない事態が発生したはずだ。

 ジューニャ、これ何か分かるか?

 

「その、《魔力解析(アナライズ・マジック)》の呪文は習得してませんので・・・」

 

 ンなこたぁ知ってる。そもそもお前にそこまで高望みはしとらんから、魔力感知だけでわかる事でいい。知識は豊富だからな。

 

「それ褒めてるんですか、それともけなしてるんですか!

 ・・・ともかく効果はまず幻影術系統・・・それから守り・・・知覚・・・精神・・・

 推測ですが、中にある何かを隠す働きと、正しい手順を踏まずに入ると察知するような術と、あるいは結界の発生地点から外周部を自由に観察出来るような効果もあるかも知れません」

 

 おー、と声が上がる。

 いや実際どの術系統かってだけでここまで推測出来るのは大したもんだ。

 

「でしょう! でしょう!」

 

 そう褒めると一気に調子に乗り始める駄エルフ。

 まあ普通の魔術師なら《魔力解析(アナライズ・マジック)》一発で分かる情報ではあるがな。

 

「うぐう」

 

 上がったり落ち込んだりうっとうしい。お前は躁鬱か。

 いつの頃の術式か分かるか?

 

「やっぱりカエラ君はいじわるです・・・多分古代のものですね。真なる魔法文明のそれだと思います」

 

 やっぱり遺跡か。あの修道院を思い出すな。

 

「ブラッド・リーを作っていたあそこかなんだよ」

 

 シルは知らないだろうが、あそこにも似たような結界があった。

 なら同じ手ですり抜けられるはずだ。

 しかし、タチバナたちはこの中なんだよな?

 こればかりは透明化じゃいかんともしがたいだろうし、どうやってすり抜けた?

 騒ぎになってる感じではないが。レイ?

 

「ええと、こちらに戻ってくる一団と一緒にすりぬけたそうです。

 道の真ん中に石のアーチがあり、何かペンダントのようなものを掲げて呪文を唱えてから通り抜けたと」

 

 なるほど。

 透明人間の良くやる手だな。

 まああそこと同じような結界なら同じ手が使えるはずだ。

 全員、俺の体に触れろ。俺と一緒に動け。いいと言うまで離すなよ。

 

「・・・」

 

 どうした?

 

「いえ、同時に触れるには少々数が多すぎるかと・・・」

 

 言われてみれば!

 あの時はフジとタチバナだけだったが、今回はフジ、レイ、シル、ジューニャ、エフティ、ロビン、アーザック、ティル、シュワルツと九人もいる。

 同時に触れさせながら歩いて移動するのはちょっと骨だな。

 

「まあ何とかするしかないでしょう」

 

 フジが溜息をついた。

 

 

 

 結局全員ジューニャの術で空中に浮かし、シルが肩車、左手がフジ、右腕がシュワルツ、右足首がジューニャ、右太ももがアーザック、左足首がエフティ、左太ももがレイ、腰がロビン、胸がティルという何だこれ状態に。

 これ体をバラバラに引き裂かれて七日以内に取り戻さないと本当に死んじゃうとかそう言う奴だ!

 

 まあ冗談はさておき右手で結界に触れる。

 《波の加護》で結界の術式の波動と全く同じ波動を作り出し、一致させ、同調する。

 しばらくの間細かなノイズとスパークを上げて反発していた結界は、同調した瞬間俺の手をするりと受け入れた。

 そのままゆっくりと――しがみついた九人ごと――結界の中に踏み入る。

 膜を通り抜ける感覚。

 全員が結界をすり抜けた瞬間、思わず溜息が漏れた。

 

 

 

 幸い、その後はさほど時間を掛けることもなく俺達は目的地に到達した。

 木々に隠れた俺達の目の前に広がる光景。

 

「うおっ・・・」

 

 シュワルツが唸る。

 残りの俺達も同じだ。

 目を見張ってないのは兄から視覚情報を得ていたレイだけだろう。

 

 森の中、直径一キロはある巨大な穴。周囲は少し開けていて、木々からは距離がある。

 中央に張り出した岩棚の上に建っている城。

 と言うより土台が宙に浮いているように見える。

 そこまで一本道の岩の板が空中歩道のように続いており、魔法の力が働いていないというなら厚さ1mにもならない岩の歩道が、差し渡し三百から四百メートルはありそうな城と、同じくらい巨大な土台の岩山を支えているって事になる。 

 加えて城はこの前の魔女の山の遺跡ほど派手ではないが、明らかに古代の真なる魔法文明時代の様式だ。

 

「・・・あの修道院に似てる気がするんだよ」

 

 恐らくは同時期に建てられたんだろうな。

 ったく、やな予感がするぜ。

 取りあえずはタチバナたちと合流だ。

 まだ城には入ってないんだな?

 

「はい、あちらの森の中にいます」

 

 よし。

 しかしあの中にどうやって忍び込むかなあ・・・

 と言うか、ケチな麻薬組織が古代の遺跡に陣取って何やってるんだろうなおい。

 悪い予感がビンビンするわ。




>体をバラバラに引き裂かれて七日以内に取り戻さないと本当に死んじゃう
キン肉マンのミート君。
メガテンでも同じような展開があった。
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