全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第二十話 イントルーダー

 森の奥、車座になってタチバナたちと情報交換&作戦会議。

 

「我々がここに来てから、若様たちがご到着になるまでは人の出入りはございません。

 荷車が入っていきましたので、ここが麻薬ルートの一つであることは確実かと思いますが」

 

 ルートはルートでも道(ルート)じゃなくて根っこ(ルート)かもしれんな。

 

「あ、ブラッド・リー!」

 

 あれと同じような様式の城、結界付きとなったらなあ。

 ブラッド・リーではないかもしれないが、あれと同じような魔法装置が地下に・・・岩塊の中に?あっても不思議には思わない。

 シュワルツ、この辺で流通している麻薬に特徴はあるのか?

 

「アッパー系だな。目がトロンとして動かなくなるようなやつじゃなくて、興奮して疲れも痛みも感じなくなるような奴。

 ラリったジャンキーを取り押さえるときに大暴れして怪我をした、って話はよく聞く」

 

 うーん、ブラッド・リーを薄めればそんな効果も生まれるだろうか?

 

「魔力を爆発的に増大させるご禁制の代物だったか?」

「魔力が上昇すれば常人でも肉体や精神が活性化しますし、アッパー系の麻薬に似た効果になるかもしれません」

「安めのドラッグを混ぜてるって可能性もあるな」

 

 だとしたら最悪だな。

 ブラッド・リーの事を知っている面々が、一斉に苦い顔で頷いた。

 そう言えば知らない奴もいたな。経緯説明(かくかくしかじか)すると、何人かは顔を青くしていた。

 

「人間を生贄にして作る魔法薬ですか・・・」

「何ておぞましいものを」

「ド外道が」

「さすがにそんな酒は飲みたくないニャ・・・」

 

 アル中猫でもそのラインはアウトらしい。最低限の倫理観があって何よりだ。

 ともかく、こいつを一定量摂取すると等級が一つ上がるくらいに強くなる。

 旅人級が剣士級に、剣士級が秘印級にって具合だ。

 

「そりゃまたシャレになんねえな」

 

 なので、場合によっては秘印級複数が出てくることも覚悟しないといけない。

 ここで帰るのも一つの手ではある。

 ここの地下に古代の魔法装置があるなら簡単には動かせないだろうし、カチコミするなら戦力を整えた方がいいのは自明の理だ。

 ただ・・・

 

「ただ、なんだい」

 

 ニヤリと笑うシュワルツ。

 アーザックも似たような表情。

 フジもだ。

 

「今すぐ突入したいと、お顔に書いてありますよ、カエラ様」

 

 良く見れば他の面子も笑っている。

 

「若様は昔から顔に出るときははっきり出るたちでいらっしゃいますから」

 

 やれやれ、タチバナに言われては反論のしようもないな。

 肩をすくめて俺は敗北を認めた。

 

 

 

 さて、突入だが・・・可能な限り隠密は維持したい。

 最初はタチバナの透明化で城に入って、そこから先は・・・出たとこ勝負だな。

 できるか?

 

「ジューニャ様の疲労回復の術があればできない事はございません。

 ただ十二人となると、さすがにそれにかかり切りになります」

 

 まあそれはしょうがない。それに十一人だ。

 レイは万が一の場合を考えてここに残ってくれ。

 ヒョウから逐一情報を提供して、俺達に何かあったらジョンおじさんのところに走れ。

 

「わかりました。ご武運を」

 

 連れて行ってやれなくてすまんな。

 

「いえ、的確な判断かと存じます」

 

 そう言ってくれるとありがたい。重要な役目だ、頼む。

 

「無論です」

 

 俺と兄のヒョウに肩を叩かれ、レイは頷いた。

 

 

 

 タチバナの透明化の術で姿を隠し、森を出て城に近づく。

 しかしでかいな・・・メットーの王城と比べても、高さでは見劣りしない。

 こんなものが何故今まで発見されなかったんだ?

 やっぱりあの魔力とか結界のせいか?

 

「恐らくはそうだと思います。

 結界には幻影の術式が含まれていましたから、上空からでも発見出来なかったのでしょう」

 

 この世界、数は少ないが空を飛べる人間はそれなりにいる。

 例えば獣術系統の達人は、極めた系統の動物に変身出来る。

 空中偵察や鳥による伝令の有用性はこの世界でも広く知られているから、鳥に変身出来る獣術師や鳥に変身する《加護》の持ち主は軍隊やその手の機関には引っ張りだこだ。

 そういう連中が王都周辺のこんな建築物に数千年気付かなかった、ってのはまずあり得ない。

 ジューニャの言う通り魔法で隠されていたというのが真実だろう。

 

「・・・あ」

 

 どうした、シル?

 

「カエラちゃんは覚えてないかなんだよ?

 初代『白のサムライ』の伝記にあった、『メットー西の山中にある幻の城』なんだよこれは!」

 

 ・・・あっ!

 

「そう言えばオレもお前から聞いたことあるぞ。白のサムライは紅の影と共に幻の城に分け入り、魔神の手下の怪物を討ったって!」

 

 エフティにも話してたか。そうそう、それだ。

 子供の頃、シルやタチバナたちと一緒に幻の城を見つけるべく探険に出かけたことすらある。

 まあ実際のところはハイキングみたいなものだったが。

 しかし・・・そうなるとここを根城にしてる麻薬組織も、魔神教団関連である可能性が高いか?

 

「例の修道院もそうだったわけですしね・・・」

「厄介な話ですね」

「まったくだ。どれだけ根を張っているんだか」

 

 ちょうどいい。

 雑草は根っこから引っこ抜かないとな。

 派手に草むしりと行こうじゃないか。

 

 

 

 タチバナの術で姿を隠しつつ、城に接近。

 幅3m、長さ300mほどの長い石橋の上をゆっくりと歩く。

 エフティ、アーザック、こっちに視線を向けてくる奴はいるか?

 

「見た感じではいねえな」

「俺も感じねえ」

 

 ふむう。魔法的な監視装置でもあるかな? ジューニャ?

 

「今のところはそうした気配は感じませんね。

 ただ、城のまわりに先ほどとは別の結界が張ってありますから、またあれをやって貰う必要があるかも知れません」

 

 了解だ。

 そのまま静かに俺達は歩き続け、城に到達した。

 巨大な門は閉ざされており、びくともする気配はない。

 鐘でも鳴らせば開けてくれるかね。

 

「無駄口叩いてる場合じゃないニャ」

 

 そりゃあ違う。無駄口ってのはこう言う時に叩くもんだ。

 ともかくここまで来れば俺にもわかるが、周囲はぐるっと結界で閉ざされている。

 まずはこいつを通り抜けよう。

 

 前回を越える吹き流し十人を連れて結界を抜ける。

 一周して正面以外に入口がないのを確認すると、もう一度裏側に。

 よし、ロビン、頼むぞ。

 

「わかりました」

 

 ロビンが頷いて、先日ついに入手した魔法のかばんから柄の長さ1mを越える大鎚を取り出す。

 

「? これ、この前MMR号の修理するときに使った大鎚だろ?」

 

 その通り。エフティが相槌を打つ(鍛冶的な意味で)のに使った奴だな。

 これは魔剣鍛冶用の特製の鎚で、魔力を通すようにできている。

 魔力を込めたハンマーで材料を叩いて、変化を促す訳だな。

 そして魔力を通せるって事は、《加護》の力を通せるって事だ。

 

「あ、なるほど・・・」

 

 《波の加護》を発動し、音を打ち消すフィールドを周囲に展開する。

 ノイズキャンセラ―準備OK。

 やれ、ロビン!

 

「はいっ!」

 

 《露出の加護》を込めた大鎚が壁に振るわれ、壁のパーツを綺麗に分解して入口を開けた。




>アッパー系
麻薬の種類の一つ。興奮剤とも言う。
覚醒剤とかコカインとか、元気になって暴れるタイプ。タバコも分類としてはこちら。
逆にダウナー系は脳みそを麻痺させてリラックスしたり痛みを止めたりするタイプ。
頭の働きが鈍くなり、多幸感を感じる。ヘロイン、アヘン、モルヒネ、大麻、シンナーなど。酒も分類としてはこちらに属する。
ヘロインなど、鎮痛剤として開発されたものも多い。アメリカで数十万人の死者を出しているオピオイド系鎮痛剤もこれ。
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