全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
「?」
「なんだこれ。鉄板?とも違うようだし・・・」
解体された壁のパーツを見て皆が首をひねっている。
まあ石組みとか木の壁しか無いような時代の人間ではしょうがない。
強いて言えば潜水艦の装甲板が剥がれた、みたいな感じではあるが正直俺も良くわからん! こんな建造物、日本にもなかったからな!
「古代王国時代の建築様式ですね。現代では再現不能な工法だとは聞いています」
まあ今回は遺跡の調査じゃなくて犯罪組織の摘発だ。
知的好奇心は後で満たせばいい。
「それでは、壁を元に戻しますね」
そう言ってジューニャが念動で持ち上げた壁をロビンがバッグから取り出したハンダみたいなものに魔力を通し、応急処置的に接合する。
これで見かけだけは元通りだ。一発蹴れば外れる程度の強度らしいがな。
ごくろうさん。
「は、はい」
ちょっと赤くなるのがかわいい。
フジとかシルとか、俺のまわりにはすれてるのが多いからな・・・
「人間は成長するものでございます」
いーや違うねっ! お前は俺にとってのモンキーなんだよフジィィィッ!(意味不明)
一分ほどつむじをぐりぐりしてから俺達は城の中に潜入した。
城の中は、古代遺跡では良くあることらしいがSF的な、未来研究所という感じだった。
継ぎ目のない滑らかな壁と床と天井、ノブも取っ手もない扉の横にはパネルのようなもの。
試しにいくつか扉を開いてもみたが、中は全て無人だった。
どうやったかって? ほら、前に宇宙に飛び出した古代遺跡「
ともかくここは居住区のようだが、余り活用はされていないらしい。
幸い波動感知があれば人がいるかどうか、魔導機器が動いているかどうか位は分かる。
そうやってチェックしつつ、100mほど進んだところで、曲がり角から足音が聞こえて来た。
みんな静かにしろ。
「しっかし、何やってるんだろうな俺達」
「しょうがねえだろ、これも仕事だ。まああの人が大事な仕事って言ってるんだ、間違いはねえだろ」
姿を現した男二人は、フードを深くかぶっていて人相は分からない。
武装は軽い革鎧に剣程度だが、腕利きであることは身のこなしで知れる。
(!?)
・・・? アーザックの驚く気配。
幸い思わず声を上げるなんて事は無く、透明な俺達は二人の巡回をやり過ごした。
(・・・)
巡回が角を曲がって姿が見えなくなると、アーザックが大きく息をついた。
(どうしたニャ、弟?)
ほんとにな。お前が驚くくらいだからよほどのことだろうが。
(・・・獣人だ)
え?
(あいつら獣人なんだよ。自警団の仲間なんだ!)
・・・なんだと?
(ズーラーとマックホーンだ。チーターの獣人とサイの獣人で、自警団の腕利きだ!)
(おい、どういうことだ?)
(わからねえ。どっちも犯罪に手を染めるような奴じゃあねえはずだ・・・)
そいつら個人のことは今は置いておこう。重要なのは二人が「あの人」って言ってた事だ。
自警団の人間が「あの人」って言うなら。
(・・・・・・・・・・・!)
(そりゃ、あのマッチョ狐しかいないニャ)
だよな。
ヴァルト・フォッツェ。
あのオカマ声の筋肉ダルマの、悪役レスラーみたいな赤い覆面とマントの不審者。
まさかあの人が・・・いや、考えてみれば物凄くラスボスっぽいな!?
(余りに怪しすぎると、かえって怪しく思えないもんニャ)
こいつはたまに鋭いこと言うな・・・悪人には見えなかったが、あの外見と奇矯な言動で惑わされてたところがないとは言えない。
まあ、やる事は変わらん。
あのオカマッチョ狐のことは取りあえず後だ。
この城を調査して、何か犯罪的なものがあったらそれを止める。それだけだ。
アーザックもいいな?
(・・・ああ)
頷く気配を確認して、俺達はまた進み始めた。
またいくつかの部屋を通り過ぎて、ドアの一つに人の気配を感じた。
波動感知で内部の様子を見てみる。
・・・十数人がいるな。全員通常より体温が高い。これは・・・
(酒かニャ!?)
黙れ飲んだくれ。静かにしてないと三味線の皮にするぞ。
(ニ"ャッ!? ジャミセンって何か分からないけど凄く不吉な名前ニャ!)
(荷物を運んできた者達がそのくらいの数でしたから恐らくは・・・)
一仕事終えて酒盛りか。
うらやましいことだな。
まあ後で一網打尽にしてやる。臭いメシ食って存分に人生を楽しめ。
だがここにそいつらがいるって事は、この辺が連中の居住区域って事だろう。
このまま先に進もう。
「了解です」
それから少し進むと、明らかに様子が変わってきた。
壁や扉が頑丈そうになり、通路の途中でもっと頑丈そうな扉が奥への移動を阻んだ。
「カエラ様、これを」
なんだ・・・糸くずか。つまり、ここを日常的に通ってる人間がいるってことだな。
「はい」
正面扉のパネルに手を当てる。
これは・・・外の結界と比べても異常に強固だな。
「つまり、この中にあるのが凄く重要なものだってことなんだよ」
だろうな。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
パネルと十分ほど格闘し、魔力の波長を一致させる。
軽い圧搾音がして扉が開いた。
その先には階段。
10mほど降りるとまた認証付きの扉があり、その先にはガラス張りの廊下があった。
ガラスの向こうにあるのは、例えば液体の入ったガラスのカプセル。人間大。
様々な器具が先端についたマジックアームと台座。
無数のメーターがついたパネル。
その他使い道も分からない様々な機材。
「なんだこりゃ・・・」
「古代文明時代の魔導機器だと思います。それ以上はさっぱりですが・・・」
50mほどそうした廊下が続いた後、更に厳重な扉。
・・・波動感知でも中を探知出来ない。よほど周囲の対魔力防壁が厳重なんだな。
「出たとこ勝負になりますね」
ああ。入ってすぐに戦闘になる可能性もある。注意してくれ。
今度は波長を合わせるのに二十分近くかかった。
更に重い圧搾音がして扉が開く。
その中に広がる光景を見て、俺達は言葉を失った。
>お前はこのディオにとってのモンキーなんだよジョジョォォォ!
>信念さえあれば人間に不可能はない! 人間は成長するのだ! してみせるっ!
ジョジョ第一部の名セリフ。
圧倒的なディオと、それに屈しないジョナサンの人間賛歌が! ああ! 美しすぎます!