全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第二十二話 老人と膿

 数百の透明なカプセル水槽がずらりと並ぶ。

 中には液体と泡。そして人間。

 魔力=生命力は発しているから死んではいないのだろう。

 だが同時に彼等の魔力が僅かずつ液体に溶け出し、それが装置に吸収されていることを俺の波動感知が告げていた。

 そして、近づいてくる人影が二つ。

 

「うん・・・? どういうことだ」

「廊下にも誰もいねえぞ」

 

 獣人ではない。

 いかにも荒仕事に慣れた人間の男達が二人。いずれも剣士級。

 

「どうした?」

 

 奥の方から声がかかる。

 カプセルの列に阻まれて姿は見えない。

 

「へえ、扉が開いたんですが誰もいなくて・・・」

「立て付けが悪いんですかね?」

 

 一瞬間があった。

 

「馬鹿者が! 何者かが侵入して来たのだ!

 周囲に気を付けろ!」

「き、気を付けろったって・・・」

 

 そいつは最後まで疑問を口に出来なかった。

 抜き打ちの西川正宗に頸動脈をはね斬られ、地面に倒れたからだ。

 

「ごぶぉっ!」

 

 もう一人の顔面には、鉄の籠手をつけたエフティの拳が炸裂する。

 即座にジューニャが《念動》の呪文でそいつを金縛りにして動きを止めた。

 

「!」

 

 二人目が無力化されたと同時に赤いランプが点灯し、サイレンが鳴る。扉が閉まった。

 

「ぎゃあっ!」

 

 カプセルの列の奥から悲鳴。フジの仕業だろう。

 何も言わないでも動いてくれる、いい仕事してますね。

 

「ふうっ」

 

 タチバナが息をつき、透明化の術が解けた。

 ご苦労さん。しばらく休んでいてくれ。

 

「ありがとうございます」

 

 ジューニャ、疲労回復を。

 それじゃボスらしき奴のツラを拝みに行きますか。

 

 

 

 カプセルの森の奥で、そいつはフジに腕をねじ上げられ、床に抑えつけられていた。

 しわくちゃで偏屈そうな顔、頭頂部の薄い白い髪と長いヒゲ、いかにも術師風のローブ。

 あからさまに悪のマッドサイエンティストと言った風貌だ。

 他にはいないな?

 

「そのようです」

「オレも感じないな」

「俺もだ」

 

 オーケー。ジューニャとロビン、魔法装置を調べてくれ。

 

「わかりました」

「はい!」

 

 頷いてから、血に濡れた西川正宗の切っ先を男に突きつける。

 さて、ここで何をしているのか聞かせて貰おうか。

 

「こ、こんな事をしてただで済むと思うな!」

 

 フジ、小指を折れ。

 

「はい」

 

 汚い悲鳴。

 もう一度聞くぞ。ここでは何をしていた?

 

「す、すぐに腕利きの護衛どもがやってくる! 全員秘印級の・・・」

 

 薬指だ。

 

「はい」

 

 汚い悲鳴がもう一度。

 研究室に詰めていたこいつらがせいぜい剣士級の真ん中から上の方。

 恐らくは最精鋭が詰めてるだろう場所でこれと考えると、他の連中もせいぜい剣士級。

 それが全員秘印級というのは・・・「ブラッド・リー」か。

 

「・・・」

 

 ここで作っているのはブラッド・リーか。この人たちを生贄にして。

 魔導装置が修道院のそれとは少々違うようだが。

 

「! そうか、貴様『飛竜殺し』! やはり修道院を吹き飛ばしたのは・・・」

 

 中指。

 

「ふぐっ!」

 

 悲鳴を上げてぐったりするマッドサイエンティスト。額に油汗が浮いている。

 向こうも正確には把握してなかったか。ま、あそこにいた奴全員吹っ飛んでるからな。

 で? まだ質問に答える気にはならないか?

 

「・・・お前の言う通り、ここで作っていたのは『ブラッド・リー』だ。

 修道院の施設は素体を丸ごと分解して魔力を吸い上げる。

 対してここは素体を生かしたまま、少しずつ魔力を抽出してそれを精製する。

 修道院の魔導装置は本来とは別の用途に使っているから無駄が多くてな。

 手法としてはこちらのほうが人道的だし効率的・・・ぐっ!」

 

 いかん、思わず蹴ってしまった。

 まあ構わんよな?

 

「それより早く話を聞き出そうぜ。それこそ姉さんの出番だろう」

 

 肩をすくめるアーザック。そう言えばそうだったな。

 

「無理矢理連れてこられたのに忘れられてたニャ!?」

 

 まあ素直に聞き出せたら聞き出せたでちょっとむしゃくしゃするからな・・・続きはお前がやれ。

 

「アイアイサー、だニャ」

 

 さて、こっちはそろそろ・・・入り口の方から圧搾音。

 来たか。アーザック、ちょっと先頭に立ってくれ。

 

「わかった」

 

 

 

「何だこりゃ!?」

「誰だ、やりやがったのは!」

 

 いきり立つのはここにいた護衛のようなガラの悪い連中二十人。

 

「何だこりゃ・・・」

「おい、どういう事だこれは!?」

 

 人の入ったカプセルを見て呆然としているのは同じくらいの獣人たち。

 おい。

 

「!」

 

 声を掛けると全員が一斉に戦闘態勢を取る。

 その体から立ちのぼる濃密な魔力。

 間違いない、「ブラッド・リー」を服用しているな。

 俺の名はカエラ・ニシカワ!

 人間を使って麻薬を製造していたお前達の悪行はとうに露見しているぞ!

 大人しく縛につけ!

 

「カエラ・ニシカワ!?」

「『飛竜殺し』だと!?」

 

 ざわつくゴロツキども。そして別の意味でざわめく獣人の戦士達。

 

「アーザック! これはどういう事だ!」

「てめぇ人間の手下に成り下がりやがったか!?」

「待て、あれを見ろよ。『飛竜殺し』の言うこともあながち・・・!」

 

 アーザックが両手を広げて前に出る。

 

「混乱するのは分かる。だがここは本当に麻薬の精製工場なんだ!

 昔の遺跡を使って人間の命を搾り取り、クソみてえな薬を作ってる場所なんだ!

 お前達が飲んだだろう赤い液体も、ここにいる連中の命を吸い上げて作ったものなんだ!」

「・・・!」

 

 獣人たちが絶句する。

 中にはうずくまって吐く者もいた。

 取りあえず獣人の面々には後で詳しい事情は話すし、悪いようにはしない。

 手を出さないでくれ。

 そう言ってゴロツキどもの方を睨みつけると、連中はたじろいで一歩下がった。

 

「・・・っ!」

「何してやがるケモノども! 侵入者だぞ! ブッ殺せ!」

「だ、だが・・・」

 

 言い合いをしてる場合かっ!

 先ほどから細かく震動していた俺の剣が光を放つ。

 研究室の天井と配線を削って振り下ろされたフォノン・メーザー斬りは、狭い通路に密集してた七、八人ほどをまとめて叩き斬った。

 

「てめえ!」

「飛ぶ斬撃だ!?」

 

 全員攻撃! 獣人でこっちに敵対する奴はジューニャ、お前の念動で押さえ込め!

 

「はいっ!」

 

 光る刀を構える俺と燃える魔剣を振りかざすエフティが先頭で斬り込む。

 その左右をすり抜けて牽制するのはフジとレイ兄妹。

 同時にタチバナの放つ《閃光》の呪文がゴロツキたちの目をくらませる。

 シュワルツやロビンも身構えていたが、彼等の出る余地も無く。

 全員を制圧するのに一分とかからなかった。




>いい仕事してますね
開運なんでも鑑定団。あれも凄いご長寿番組だな。
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