全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
まだ生きている者、降伏した者を手早く無力化する。
ちなみにゴロツキのボスらしい奴は最後まで戦わず、自分ひとりになった瞬間に降伏した。
よしよし、賢い奴は長生き出来るぞ。
たっぷりゲロってもらおうじゃないか。
ジューニャがスイッチを見つけて警報を切り、ロックされた城内の扉を開放する。
一方で《双子の加護》で外のレイに連絡し、内務省に走ってもらった。
二時間もすれば捕縛隊がやってくるだろう。
ただ、その前に獣人たちと、できれば途中にいた見張りたちを何とかしないとな。
さて。
「っ・・・」
視線を向けると獣人の警備員たちがたじろいだ。
諸君、見ての通りここは人間を材料にして禁断の薬を作っていた場所だ。
その様子からすると、それを知らなかったのは明らかだ。
ここは一つ協力してくれないか? 悪いようにはしない。
「頼む、みんな。カエラ卿の言葉に従ってくれ。
この人は俺達を蔑んだりしない。俺を友と言ってくれたし、俺のために怒ってもくれた。
いきなりで信じがたいことはあるだろうが、どうかここは俺を信じて任せちゃくれねえか」
「・・・」
獣人たちが顔を見合わせている。
やがて年かさの水牛の獣人が一歩前に出た。
「わかった。ここはお前とカエラ卿に任せよう。みんな、いいな?」
他の獣人たちも口々に賛意を示し、あるいは頷く。
「でもポーゴ。このままじゃ橋のとこにいるラバーンたちがヤベえんじゃねえか?」
「おお・・・まずいな、確かに」
あいつらも獣人だったのか。
っと、その前に。この城にいるのはこれで全部だな?
上階とか他の部屋に誰かいたりしないか?
「ああ。時々交代するが、今いるのはこれで全部だ。
地上の一部、入口からここに来るまでの通路以外は一応巡回はしてるが誰も使ってない。
こいつらも」
と、縛られてる連中に目をやる。
「地下と一階の通路以外は安全を確保してないから、危なくて動けないと言ってたな」
よし。それじゃフジと、ポーゴと他に何人か来てくれ。連中を説得するんだ。
アーザック・・・は来ない方がこじれなくていいか。
「かしこまりました」
「わかった。クロウ、ベン、ついて来い」
ティル、捕縛したゴロツキボスから引き出せるだけ情報を引き出せ。
何を聞くかについてはシュワルツ頼む。シルとジューニャも助言してやってくれ。
「了解だ」
「分かったニャー。それでご褒美にどれだけ飲ませて・・・いえ何でもありませんニャ」
右手でアイアンクローの仕草をすると、馬鹿猫が黙った。
時と場合を考えろ、な?
「すまねえ・・・姉さんがすまねえ・・・」
肩を落とすアーザックを、獣人たち全員が哀れみの目で見ていた。
今度は正規の通行証の護符を使って堂々と正面から出る。
途中の石のアーチも同様にして結界をくぐり抜け、吊り橋を目指して一目散に走る。
出る前に確認したらレイはもうメットーの城壁内に入っていた。余り余裕はないな。
「ぜぇ・・・はあ・・・」
「頼む・・・もう少しゆっくり・・・」
「死ぬ・・・」
なのにこの獣人どもと来たら。
アーザックが秘印級だからこいつらももう少しやると思ってたんだが。
大体ブラッド・リー飲んでたろ? 時速100kmくらい出せよ。
「ぜえ・・・ぜえ・・・無茶言うな。あいつは自警団でも指折りの・・・ハァ・・・腕利きだ・・・俺みたいなロートルに・・・ひぃ・・・多くを求めないでくれ・・・げほげほ」
そう言えば獣人街の門番もそんな事言ってたな。
やれやれ、ジューニャもつれてきて吹き流し状態でこいつら引っ張るんだったよ。
とは言えマッドサイエンティストの尋問するならジューニャの知識は必要になるからな・・・痛し痒しである。
結局ポーゴとクロウを俺が、ベンをフジが担いで走り、目的地の橋に到達したのはそれから一時間後のことであった。
「はあ・・・はあ・・・おおい、ラバーン・・・」
「・・・ポーゴ? ポーゴなの? どういう事? そっちの二人の人間は・・・人間よね?」
橋の向こうから呼びかけるポーゴ。それに返事をしたのは、G.I.ジェーンって感じの女獣人だった。硬質な美貌に筋肉質の体、ウサギの耳、左目の上には薄い刀傷。
ウサギはウサギでも首狩りウサギだなこれ。
それから何とか橋を渡らせて貰い、あれこれ説明して納得して貰うまでに更に三十分。
レイの先導で内務省の騎馬警邏部隊が到着したのがその十分後だった。
ギリチョンセーフ!
到着した警邏部隊を先導し、城に案内する。
獣人たちは自警団長の指示で俺と警邏に協力してくれたと言うことになっている。
マッドやゴロツキたちを捕縛し、死体を回収する警邏たち。
カプセルに閉じ込められていた人々は応援を呼んで保護するとのこと。
彼等を安全に解放するために警邏たちがジューニャ、ロビンと相談している。
その様子を見て溜息をつく獣人たち。
「しかし本当に・・・」
「あんた達嫌な匂いがするよ。そのブラッド・リーってやつのせいじゃないかい?」
顔をしかめる兎獣人のラバーン。多分そうだな。彼等の体からはまだブラッド・リーの効果による魔力の増大が感じられる。
「ああ・・・俺達も飲むときに嫌な匂いだとは思ったんだがな・・・」
この場所について、ヴァルト・フォッツェからは何も聞いてなかったのか?
「獣人街を守るための取引の一環だって言ってたよ」
「随分前から、それこそ俺が新米の頃からやってるんだよな」
エフティとジューニャにちらっと視線を向けるが、二人とも頷いた。
嘘はついていないらしい。
・・・ん? あんた(ポーゴ)が新米の頃って結構昔だろう。いつだ?
「二十年くらい前かな」
ヴァルト・フォッツェが自警団の団長になったのは?
「その少し後くらいだな。これ始めたときは確か副団長だったと思う」
「何をお考えですか、若様?」
いやね、ジョンおじさんが言ってたんだよ。
獣人街に暴徒が襲いかかることは前からあったけど、この二十年は柵が燃えるくらいで済んでいる・・って。
「・・・!」
小声で言ったのだが、周囲の人間は残らずショックを受けていた。
特に獣人たちは茫然自失している。
こりゃあ、あのマッチョ狐に話を聞かずには済まないようだな。
ちなみに報せに行ったレイですが、途中の谷間は力業で跳びこえております。
巡航速度が地球人のマラソン世界記録の九倍ほど、同じく地球人の走り幅跳び世界記録が9mくらいなのを考えると、50mくらいなら跳べるでしょう。
>ギリチョンセーフ!
特撮版グリッドマンの第一話に出てくるセリフ。
劇場版グリッドマンユニバースでも謎のバイク青年(正体バレバレ)が主人公をある場所に送り届けたときに同じセリフを発する。