全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第一章「黒い瞳のサムライ」
第二話 イモい女


「青い瞳のガンマンが 海を渡って武者修行 極めし銃と刀にて この世に無用の悪を断つ」

 

      ――ライジングザン ザ・サムライガンマン――

 

 

 

 そいつは朝日を背にして現れた。

 その姿を目にして一瞬固まった俺を、少なくとも日本人なら非難はすまい。

 くたびれた黒小袖に茶袴、平たい一文字笠、ワラジ履き。

 腰にはやや小ぶりの大小二刀。

 明らかにこのファンタジー世界にはそぐわない純和風の出で立ちだ。

 これで首の上にひげ面が乗っていればまんまどこぞの素浪人だが、そこだけは違った。

 首の後ろで無造作にまとめた流れるような黒髪。

 旅塵で汚れていてもはっきり分かる目鼻立ちの美しさ。

 女サムライがこちらに向かって歩いてきた。

 目が合う。

 

「・・・」

 

 ・・・。

 ・・・・・・?

 あれ、何かおかしいな?

 縮尺というか目線の高さというか・・・

 

「・・・」

 

 女サムライが立ち止まった。

 距離は四メートルほど、いわゆる一足一刀の距離。

 一歩踏みこんで一太刀浴びせられる間合いだ。

 なのだが・・・俺の視線はやや上を向いている。

 でかかった。いや胸も尻もでかいがそちらではなく。

 190・・・いや。195はあるか? 俺より明らかに頭一つでかい。

 腰のものが小ぶりに見えたのも、短いんじゃなくて体の方がでかかったわけか。

 その視線が俺の腰元に向いている。

 

「そこもと・・・」

 

 うん?

 

「そこもとはサムライでござろうか?」

 

 なるほど、俺の腰の刀を見てた訳だな。確かに長剣と脇差しを同じ側に、かつ剣帯から吊すのではなく帯に差すのはこの国じゃ珍しい。

 ともかく質問の答えだがそのつもりだ。

 俺はカエラ。カエラ・ヴィクトリアス・ヴォロディア・ヴァレンタイン・ニシカワ。

 オリジナル冒険者族「白のサムライ」を先祖に持つサムライで、この村の領主だ。

 

「『白のサムライ』! それはお見それしもうした。その名は我が国にも轟いており申す。

 申し遅れたがそれがしカマタ・ユリノスケ。お見知りおきを、ニシカワ殿」

 

 うむ。

 一礼する姿が様になっている。

 いかにも素浪人っぽい風体だが礼儀作法は結構しっかりしてるな。腕も立ちそうだ。

 しかし我が国? ひょっとして。

 

「さよう。それがしここから遥か東の島国・・・アグナムのサムライにござれば」

 

 アグナム! オリジナル冒険者族(転生・転移者)なら一度は行ってみたいと思う極東の島国。

 他国に比べると明らかに高い頻度でオリジナル冒険者族が降臨するというそこには、俺の同類が伝えた和風の文化が色濃く残っているという。

 この世界、サムライという呼称自体はワールドワイドだが、その本家と胸を張って言える国があるとすればアグナムだ。

 それで? 俺に何か用か。

 そう言うとユリノスケの雰囲気が剣呑なものに変わった。

 

「率爾(そつじ)ながらお尋ねしたい。三年前の二月二日、アグナムのシロサキにて、ゴロウマル・アスカなる男を殺したのは貴殿か?」

 

 違う。

 そう言うとユリノスケはしばらく俺に貫くような視線を向けていたが、やがて目を伏せて深い溜息をついた。

 笠を外し、深々と一礼する。

 

「失礼つかまつった。

 恐らく違うとは思ったが、確かめない訳にもいきませなんだ。許してほしいでござる」

 

 構わんさ、仇討ちならしょうがない。

 しかし何故俺だと?

 

「手掛かりが容貌魁偉な巨漢、黒目黒髪の恐らくは冒険者族で『飛ぶ斬撃』を使うとしか分かっておりませぬゆえ。

 『飛竜殺し』殿の噂を聞いてこれは確かめねばと思った次第にござる」

 

 なるほど・・・ん? 容貌魁偉な巨漢?

 

「はい。それがしより一回り大きいそうにござる」

 

 それで何で俺だよ? 見ての通りお前より随分小さいだろ?

 

「まあ大きさは魔法でどうとでもなりましょうし・・・その、王都で聞いたときには内務卿の処刑に上半身裸でカタナ一本を持った巨漢が殴り込んだと・・・」

 

 それダスキーニぃ!

 いや、あいつも上半身裸とかはなかったけどさ!

 

「重ね重ねご無礼を・・・」

 

 大きな身体をちぢこまらせて恐縮するユリノスケ。

 そうしてると何と言うか、でかいのに小動物みがある。

 身長2mのハムスターだな。

 きりっとした顔をしてるときは表に出ないんだが、表情ゆるめると素朴な田舎のお姉さん風味が出る。良く見るとそばかすも残ってるし、うーむこれはこれで。

 

「ニシカワ殿、何か?」

 

 いやなんでも。

 しかしまあ人の噂というのはアテにならんからなあ・・・

 

「まさしく。カタナを振り回す巨漢と聞いて駆けつけてみれば、狩人が山刀を振り回して下生えを切り払っていただけだとか・・・」

 

 疲れた顔のユリノスケである。

 まあ仇討ちなんて見つからない方が多かったらしいからな・・・

 成功した場合でも20年かかったとかザラだそうだし、下手すりゃ返り討ちだ。

 手掛かりがないと言ってたけど、占術神(ファルタル)の神殿か何かもダメだったのか?

 

「さっぱりで。

 ただカガリヤ神社のヒスイ殿という巫女に『道はディテクにあり』と神託が下りまして。

 それを頼りにこうして海を渡ってきた次第にござる」

 

 サムライガンマンザンザザーン、ってわけか。

 しかし相応に腕が立ちそうではあるが、仇討ちに出られるのがおたくしかいなかったのか?

 

「いえその・・・仇討ちに人を出さぬ訳にはいかず、かと言って当てもない旅に一族の俊英を出す訳にもいかず・・・中途半端に腕が立ち、一族でも端っこの方の拙者に白羽の矢が立ったと言う訳でして」

 

 中途半端?

 ディテクの基準ではかなり大したものだと思うんだがな。

 少なくとも剣士級の上の方、修行を積めば秘印級も十分狙えるだろう。

 冒険者族の多いアグナムは腕の立つ奴が多いと聞くが、ユリノスケでもそんな扱いなのか。ちょっと驚き。

 

「まあ腕はそれなりと自負しておりますが、我ながらどうにも肝の据わらぬところがござって・・・加えて《加護》がろくに役に立たぬ代物なので、放りだしても惜しくないと判断されたのござろう・・・ニシカワ殿?」

 

 どうやら表情に出ていたらしい。

 我ながら修行が足りん。

 わかった、そう言う事ならしばらくこの村に逗留するのがいいだろう。

 できる範囲で仇討ちを手助けしてやる。

 知ってのとおり俺は内務大臣にもコネがあるし、それ以外にもそれなりに顔が利く。

 「飛ぶ斬撃」なんてそう滅多に使い手がいるもんじゃない。

 ディテク、少なくともメットー周辺にいるなら遠からず見つかるはずだ。

 

「え? いえ、見ず知らずの方にそんな事をして頂くわけには・・・!」

 

 気にするな。同病相憐れむと言う奴だ。

 身を翻してついてくるように身振りで示すと、ユリノスケはためらいがちに後をついてきた。

 さて、こいつのことどう説明したもんかな・・・




>どこぞの素浪人
椿/桑畑三十郎。もしくは三船敏郎。多分世界一有名な日本人俳優だった。向こうのゲーム(ウィザードリィ3)や映画(SFソードキル)でまでネタにされたのだから大したもんである。
今は誰だろう、真田広之か?

>刀の差し方
実は結構細かい決まりがある。帯は三重に巻いて、一番内側と真ん中の帯の間に脇差しを斜めに、真ん中と外の帯の間に地面と平行(かんぬき)に大刀を差すとか。
ちなみに地面に垂直に近い角度で差す「落とし差し」は眠狂四郎など素浪人系の時代劇でかっこよく描写されているが、実際にやると結構歩きにくいそうな。
んでもって刀を売り払って竹光にすると柄頭が軽くなって自然と落とし差しになるので「あ、竹光だな、貧乏侍め」とわかるらしいw

>二月二日、飛鳥五郎という男を殺したのはお前か! お前だなあっ!
快傑ズバットが悪党をやっつけた後の毎回の決めセリフ。

>サムライガンマンザンザザーン
「ライジング ザン ザ・サムライガンマン」というPSのバカゲーが元ネタ。
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