全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第十五話 脱出

 宿舎にタチバナ達三人を向かわせ、俺はフジと共に誰もいない修道院を駆け巡る。

 くそっ、地下への階段がない!

 地下にいる生命反応ははっきり分かるのに!

 

「恐らくは隠し階段なのでしょう。残っているものを捕まえて・・・」

 

 いいや、時間が惜しい。

 強硬手段で行くぞ。

 

「え、ちょ、ちょっと・・・」

 

 ガイア・インパクトォ!

 震脚を踏んだ右足から、震動波が床に打ち込まれる。

 

「準備する時間くらい下さいぃぃぃ!」

 

 フジの怒声と共に俺達は落ちていった。

 

 

 

 体育館ほどの大きな空間、奥の壁に巨大な魔法装置。

 複雑に絡み合って屹立したそれは、魔導科学の作り出した魔神像にも思える。

 その前で右往左往する修道女たち、修道女見習いの服を着た少女たち。

 そして一人だけ喜色満面でこちらを見ている合法ロリ。

 シル! 迎えに来たぞぉっ!

 

「うんっ!」

 

 こちらに走り寄ってこようとするシル。

 それを止めようとする、槍を持った修道女。

 次の瞬間、バネ足ダッシュで踏み込んだ俺の剣が、そいつを両断している。

 

「フ・・・」

 

 フジの名を呼ぼうとした瞬間、地面から無数の畳が屹立してシルたちと傭兵修道女の間に壁を作る。

 さすがにそつないな。そのままシルたちの避難を!

 

「はい!」

 

 もう一度フジが地面を叩くと、畳が積み上がり階段を作る。

 

「さあ、こちらです! 皆様お早く!」

「ほら、逃げるんだよ! このままじゃ殺されちゃうんだよ!」

 

 シルが呪文を唱えるのが聞こえた。

 茫然自失して腰が抜けた少女に《精神覚醒(メンタル・アウェイクン)》の術か何かをかけたのだろう。

 普段の姿からは想像も出来ないが、あれでも愛の神(アルリカ)の高位の司祭だ。それ位の術は使える。

 仲間が立ち上がり、シルに従って走り出す。

 それらを横目で見ながら、俺は残りの護衛たちと斬り合っていた。

 

「つっ、つええっ!?」

「くそっ!」

「お、お前たち! 私を守りなさい!」

 

 更に一人を斬り、残った修道女は三人。秘印級は二人。対応出来る範囲内だ。

 シルたちを追いかけられたらやばかったが、どうやら修道院長は素人らしく、バネ足ダッシュを駆使してそいつを狙うそぶりをすれば護衛たちは守らざるを得ない。

 結果として十分な足止めになっていた。

 とん、と距離を離して刀を構え直す。

 あちらも魔法装置の前に後退して態勢を整えた。

 その隙を突いて、一瞬だけ波動感覚に意識を集中。

 よし、シル達は全員安全圏に離脱したな。

 左手を懐に入れて、くるみ大の魔力結晶を握りこむ。

 

「奴め、何を・・・」

 

 ガイア・インパクトォ!

 

 魔力結晶の魔力をぶち込んで、今までとは比較にならない最大クラスの衝撃波を足元に打ち込む。

 床はおろか、壁や天井までもが粉々に砕けた。

 無論、壁に埋め込まれた魔法装置もだ。

 本体フレームにはさすがにさしたるダメージはなかったようだが、それでも配線や端子が砕けるのは見えた。

 

 魔力結晶をもう一つ。今度は身体強化とバネ足に注ぎ込む。

 ただし、今度跳ねるのは前じゃない。上だ。

 

「うわ、うわ、うわああああああああああああああああああ!」

 

 院長と護衛の悲鳴を聞きながら、俺は小石レベルまで粉砕された瓦礫をかきわけ、上空100mまで突き抜けた。

 

 

 

 ああ、流石に痛い。

 バネ足ダッシュと同じ反発力の波動をまとって破片は弾いたが、でかい破片にいくつかぶつかってしまった。

 まあ、そんな事をのんきに考えてられるのも安全圏に脱出したからだ。

 修道院は直径100mくらいに渡って崩落、アリ地獄みたいになっている。

 二人の秘印級は死んでいないだろうが、簡単に這い出てもこれないだろう。

 その間に俺達は脱出する。

 ともかく今は着地に集中だ。ここで墜落死なんてのは勘弁だからな。

 

 バネ足を再度発動して、何度かぴょんぴょん跳ねつつ減速着地すると、俺は正門を走り抜ける。

 あ、蟻地獄から護衛が二人這い出てきた。ちょっとすげえ。

 

「逃すな!」

「ブッ殺せ!」

 

 おお、怖い怖い。

 けどもう遅いんだなあ。

 外輪山のふちで待機していたフジやシル、タチバナたちの方に向かう。

 女の子たちは腰に縄を結んでアンザイレンみたいになってる。

 準備はいいか!

 

「後はカエラ様だけです!」

「計算はもう終わってるんだよ!」

 

 頷くフジとシル。シルは何故か持ってるそろばんをジャラジャラッと鳴らしてアピール。

 やれ、シル!

 

「オッケー! 全力なんだよ!」

 

 右手にそろばん、左手に魔力結晶。

 シルが叫ぶと同時に、右手のそろばんが巨大化する。

 幅4m、長さ20m。珠の大きさは60cmに達するか。

 50人からの少女たちが乗るにも十分なサイズ。

 少女たちは揃って目を丸くしている。

 

「急いで乗って!」

 

 急かされて、茫然自失のまま巨大そろばんに乗る少女たち。

 

「待てぇ!」

「女連れで逃げられると思ってんのか!」

 

 そのあたりで正門から追っ手二人が出て来た。

 思ってるさ。この場所で、こいつの《加護》があればな。

 

「え・・・」

「なんだ? でかい・・・そろばん?」

 

 護衛たちの足が止まる。

 脳が理解を拒否したのだろう。

 残念だったな、お前ら今最後のチャンスを逃したぜ。

 

「あっ」

「ま、待て!」

 

 待てと言われて待つ奴はいない。あばよ。

 バネ足で地面を蹴り、巨大そろばんを火口の外に押し出す。

 後はなだらかな斜面をふもとまで一直線。

 

「「イィィィィヤッホォォォォォォ!」」

 

 双子が腕を突き上げて叫んだ。

 シルの《加護》は《そろばんの加護》。見ての通りそろばんを出せるし、計算や思考も恐ろしく早く正確だ。

 曰く「頭の中に沢山そろばんがあるんだよ」らしい。

 今回は物理的なそろばんを出す能力を目一杯使い、脱出用のソリ代わりにしたというわけだ。

 

 そろばんの珠が勢いよく回転し斜面を駆け下りる。

 見る見るうちに山頂が遠ざかり、呆然とする護衛たちの顔が小さくなる。

 ふもとまでもう少し、秘印級の視力をもってしてもその顔が判別出来なくなった頃、山頂で巨大な爆発が起こった。

 

「きゃあっ!?」

 

 女の子たちの悲鳴が上がる。

 

「何が――」

「――起こったんだ?」

 

 双子やタチバナすら呆然としている。あー、多分だが全力以上の出力でガイア・インパクトを放った結果、あの魔法装置にも致命的なダメージを与えてたんだろう。

 見た感じ既に起動してたから、それが時間差でボカン、というわけだ。

 巨大そろばんがふもとに到達し、ガラガラガラ、という珠の音が止まる。

 

「ふふん、シルちゃん大勝利! 悪は滅びたんだよ・・・あいたっ!」

 

 お調子者にデコピン一発。別にお前がやったわけじゃないだろう。

 だが額を抑えながらも、シルの勢いは止まらなかった。

 

「いいんだよ! カエラちゃんはわたしのサムライなんだから!

 ふたりはイッシンドータイなのだ!

 それよりほら! 約束!」

 

 約束? なんかしてたっけ?

 

「ちゅーだよ! お口にちゅー! 助け出したらそうしてくれるって言ったでしょ!」

 

 地団駄を踏むシル。

 ・・・あー、確かに言ったなあ・・・でもまだ完全に助かったわけじゃないんだし・・・

 

「ここで! こ・こ・で!」

 

 ここで? フジやタチバナや双子や、50人からの女の子が注視しているここで?

 フジたちはニヤニヤしてやがるし、女の子たちも興味津々でこっちをガン見してるんだけど!?

 

「サムライは約束を破らないんでしょ!」

 

 ええい、わかったわかった!

 やってやるわい!

 

「「「「キャー!」」」」

 

 俺がシルと唇をあわせると、50からの黄色い声が一斉に上がった。

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