全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第十六話 三人目の奴隷(おんな)

 二キロほど歩いて、道脇の林に入る。

 中にはロウと部下、ロウの調達した幌馬車が三台。

 それに乗って、翌日の夕方には王都に到着。取りあえずロウの借りてる倉庫に少女たちを連れ込んだ。ちょっと魚臭いがそこは我慢してくれ。

 タチバナ、女の子たちはどうだ?

 

「家に帰れそうな娘はひとりもおりませんでした」

 

 だよなあ。そうでなきゃあんなところに押し込められるわけがない。

 全員マット村に連れて行こう。

 修道院が吹っ飛んだから、みんな死んだと思ってるだろうし後腐れがない。

 

「彼女らに――」

「――農作業をやらせるんですか?」

 

 まさか。

 まあ移住者はどうしても男の方が多いから、その嫁さんにって思惑もなくはないが。

 それよりもいいとこのお嬢さんばかりだから、当然読み書き計算はできるし教養もある。音楽や刺繍の心得がある子も多いだろう。

 村も既に七百人を超える人口を抱えているから事務仕事の口はそれなりにあるし、寺子屋の先生(生徒は子供に限らない)としても需要がある。

 なんならロウの商会に事務員としてレンタルしてもいい。

 どっちにしても教養のある人材というのは極めて貴重なのだ。

 こればかりは金積んだだけでは手に入らない。

 

「確かにね。商会の仕事に興味を持つ娘がいたらこっちで引き取りますよ」

 

 よろしく頼む。

 出来れば寺子屋で使う、教科書になるような本があればいいんだが、今は懐が厳しい。

 村長や村の司祭のところにも大した本はなかったしな。

 

「お望みでしたら、元手はありますよ」

 

 え、タチバナ? まさかおまえのへそくりか何かか?

 

「まさか。若様の菓子程度ならともかく、本を何十冊も買うとなればとてもとても。

 これですよ、ほら」

 

 笑って差し出したのは、修道女もどきがつけていた《幻影変装(ディスガイズ)》の指輪。

 

「若様若様――」

「――こんなのもありますよ」

 

 双子が見せびらかしてきたのは、連中が使っていた剣や鎖かたびら。ブーツやベルト、ワンドもある。

 良く見たら全部魔法のものか。手の早い連中だ。

 

「忍者ですので」

 

 ごもっとも。どうだ、ロウ?

 

「・・・詳しく見てみないとわかりませんが、確かに一財産ですな。

 教本程度なら指輪一つでお釣りが来るでしょう」

 

 オーケー、それじゃ残りはプールしといてくれ。どうせ何かで必要になるんだ。

 

「了解です、若様」

 

 

 

 倉庫と娘たちはロウに任せ、宿屋に戻る。

 

「取りあえず、シル様に湯浴みをして頂きますので少々お待ちください」

 

 おーう。俺は横になってるわ。

 

「はい、ゆっくりお休みください」

 

 タチバナたちが出ていき、ベッドにごろんと横になる。

 そのままうとうとして・・・気がついたらフジとタチバナとシルが部屋にいた。

 どうした?と聞くと、シルが何故か頬を赤くした。

 メチャクチャしおらしい感じで、何だこのSSRレアリティの別キャラ状態。

 

「えっと・・・そのね。わたし、カエラちゃんのフィアンセだよね?」

 

 もう解消したけどな。

 そう言うと表情を一変させてぽかぽか殴ってきた。

 いや、大して痛くはないけどやめてくれ。死ぬほど疲れてる。

 

「カエラちゃんのいじわる! わたしは納得してないんだから、わたしたちは今でもフィアンセなの! 婚約者なの! カエラちゃんのお嫁さんになるの!」

 

 だからやめろって。助けを求めてフジとタチバナの方を見たが、二人とも睨んでくる。

 これ俺が悪いの?

 

「最悪です」

「お育て方を間違えたかもしれませんね」

 

 分かった分かった悪かった。まだフィアンセってことでいいよ。

 

「むう、扱いがおざなりなんだよ。まあ認めてくれたんだから許して上げるけど」

 

 へいへい。それでなんだ?

 そう言うと一転してドヤ顔になる合法ロリ。

 俺は喉が渇いていたので、起き上がって水を一杯。

 その間にシルは懐から何やら見覚えのある紙切れを取り出していた。

 

「じゃーん! わたしとカエラちゃんの隷属契約書なんだよ!」

 

 ブーッ!

 飲んでいた水を盛大に吹き出す俺。

 

「わっ、きたない!」

 

 うるせえ! 気管に! 気管に水が!

 しばらくゲホゲホやってから、口元をぬぐって馬鹿(シル)馬鹿(フジ)馬鹿(タチバナ)を睨みつける。

 何考えてんだお前ら!

 

「えー、だってこれにサインしなきゃ本当の意味でカエラちゃんのお嫁さんになれないって言われたから」

 

 ・・・いやまあそれは・・・フジ! タチバナ! お前ら何吹き込んでやがる!

 

「嘘をついたつもりはございませんが?」

「若様の種を頂くにはこれが必要でございましょう? であればサインを頂く事に何の問題が?」

 

 もうニッコニコで反論してくる二人である。

 それはそうだが・・・あのな、シル。これにサインしたらもう死ぬまで俺の言う事に逆らえないんだぞ? 俺がお前に酷い事しても逆らったり逃げたりできなくなるんだぞ?

 

「カエラちゃんはわたしにひどいことするつもりなの?」

 

 いや・・・しないが。

 

「じゃあいいよ! わたしはカエラちゃんのお嫁さんだもの! 夫を立てるのがリョーサイケンボってやつなんだよ!」

 

 こいつ本当に意味がわかって言っているんだかいないんだか・・・

 頭を抱えていると、急にシルがモジモジし始めた。

 

「それにだよ、その・・・わたしもどうやって赤ちゃん作るかくらいは知ってるし、カエラちゃんのお嫁さんになってカエラちゃんの子供産みたいかなって・・・」

 

 頬を染めてうつむくシルに、俺は初めて女を意識した。

 今までも婚約者ではあったが、それは親友として、あるいは妹分としてであり、男女の意識はまったくと言っていいほどなかった。

 せいぜいが「こいつなら一緒に暮らしてもいいかな」と言う程度のもの。

 外見も内面も思いっきり年下で、小学生にしか見えなかったのもある。

 

 だが今のこいつは明らかに女で、不覚にもどきりとしてしまった。

 下世話な話だが・・・今のこいつなら抱けると思う。小学生にしか見えなくてもだ。

 

「カエラちゃん?」

 

 ・・・いいんだな? 本当に俺には逆らえない奴隷になるぞ?

 俺の所有物になるって事だぞ?

 

「うん。そうして」

 

 正直恥ずかしくてこいつの顔をまともに見てられない。

 ずっと年下の子供としか思ってなかったこいつのことをだ。

 溜息をついて観念する。

 サインをすると契約書が光り、魔力が放たれる。

 既に日は落ちている。

 フジとタチバナが一礼して退出し、ロウソクの明かりが照らすだけの薄暗い部屋に、俺とシルは取り残された。

 

「あの・・・あのね、カエラちゃん」

 

 いいから、何もしゃべるな。

 

「うん・・・」

 

 俺が抱きしめてやるとシルがしがみついてくる。

 それから俺達は愛し合い、抱き合ったまま眠りに落ちた。

 それなりには優しくしてやれた・・・と思う。

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