全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第三章「ジューニャ」
第十七話 銭ゲバ


「わかっちゃいるけどやめらんねぇ」

 

     ――植木等――

 

 

 

「いい、みんな!? 神様は言ったんだよ! 『銭の花は血のように赤い!』 はいリピート!」

「「「銭の花は血のように赤い!」」」

 

「『銭のやりとりは信用のやりとり!』」

「「「銭のやりとりは信用のやりとり!」」」

 

「『1ダコックを笑う者は1ダコックに泣く!』」

「「「1ダコックを笑う者は1ダコックに泣く!」」」

 

「『商売は戦いだ! 勝つ事が正義だ!』」

「「「商売は戦いだ! 勝つ事が正義だ!」」」

 

「『贅沢は敵!』」

「「「贅沢は敵!」」」

 

「『油の一滴は血の一滴!』」

「「「油の一滴は血の一滴!」」」

 

 村に戻った後。

 シルたちをひとまずケイトーに預けたんだが・・・シルがお嬢さんたち並べて何か訓示してる。

 ケイトー、ロウ、なんだあれ?

 

「私には何とも・・・マリネスキー家の家訓でしょうか? それとも商会の?」

「いやぁ・・・俺も聞いたことないですねえ。お嬢様はあれで御当主の秘蔵っ子で、商売に関してはかなり叩き込まれてましたが・・・」

 

 引きつった笑みの二人。

 日本から伝わったあれこれだとは思うが・・・というか何の神様だ。

 お前愛の神(アルリカ)の司祭だったんじゃないのか。

 

「『おまえによし! 俺によし! うん、よし!』」

「「「おまえによし! 俺によし! うん、よし!」」」

 

 それは明らかに何か違う!

 

 

 

「あのう、領主様。外に女乞食が来てるんですが」

 

 村長の家。俺付きの小間使い(村長の息子嫁のおばちゃん)が俺を呼びに来たのは、留守にしていた間に新しく作った人別帳(つまり戸籍だ)をチェックしてる時だった。たまたまフジもおばちゃんメイドのルマも席を外している。

 

 女乞食か・・・働く気があるなら開拓民として受け入れてやればいい。

 ケイトーのところに連れて行ってやれ。

 ちなみに今シルはケイトーの補佐につけてる。あっという間に仕事を覚えて、ケイトーが「これなら私が死んでも大丈夫ですな」と太鼓判を押すほどだ。

 ホントあいつ頭はいいんだよなあ・・・性格が幼いだけで。

 閑話休題(それはさておき)

 

「いやそれが、領主様のお知り合いだって言い張りまして」

 

 またか。

 

「またです」

 

 二人して溜息をつく。

 この前退治した巨大ワイバーンと、それを宣伝したロウのおかげで俺は一躍有名人、時の人になった。

 そうなったら何がわいてくるか? そう、身に覚えのない友人とか親戚とか愛人とかである。中には俺の子と称する赤ん坊を連れて来た猛者もいた。

 フジが表情がなくなるレベルで怒っていたから処分は任せたが、どうなったろうな、あの女。さすがに殺してはいないと思うが・・・まあいいや。

 そう言う事ならさっさと追い払え。

 追い払って塩まいとけ。

 

「お言葉ですが、いちいちまいてたら勿体ないですよ」

 

 それもそうだなあ。

 んじゃまあ追い払うだけでいいや。

 銅貨数枚くらいならやってもいいから。

 

「はい、かしこまり・・・」

「カ"エ"ラ"く"ん"ひどいですうぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

 ぬおっ!?

 

「あ、こら! 勝手に!」

 

 小間使いさんをすり抜けて、汚れ放題のぼろきれの塊がいきなり部屋の中に入ってくる。

 それはGのつく害虫みたいな動きで床を素早く這い回って俺の足にすがりついた。

 きたない! くさい! 離れろ!

 

「あいだだだだだ?!」

 

 顔面にアイアンクローをかけて持ち上げる。

 もがく女乞食改め女G。

 その拍子にフードっぽい部分が落ちて、ぴょこん、と二つの突起が飛び出た。

 え? この尖った肉の塊って・・・耳? ってことはこいつは・・・

 

「エルフ!?」

 

 小間使いのおばちゃんが、驚きの余り床にへたり込んだ。

 おい、まさか・・・

 慌てて手を離して顔を確認する。

 

「カエラくんひどいですぅぅぅぅぅぅ・・・」

 

 べしょべしょ泣きながら抗議するそいつは、これ以上ないほどに汚れてはいたが、確かに昔俺の家庭教師をしていたアウジュニャ・サット・シャンカラ・マハパンチャ、「マハパンチャの森、知識の枝に連なる術師アウジュニャ」という意味の長ったらしい名前を持つエルフの魔術師、通称ジューニャだった。

 

 

 

「カエラちゃん! ジューニャ先生が来たってほんと!?」

 

 しばらくしてシルが駆け込んできた。

 ちなみに厨房不潔伝Gエルフは現在ひんむいて、フジとおばちゃんメイドのルマが入浴・・・というより洗浄している最中。

 田舎町で理不尽に逮捕されたベトナム帰りの兄ちゃんくらいに雑に扱っていいと伝えてある。嘘だけど。

 

 ともかくジューニャは一時期俺の家庭教師で、シルがそれ目当てで遊びに来るくらいに知識豊富だった。

 まあ色々あって三年くらいでクビになったのだが。

 

「またジューニャ先生雇うの?」

 

 どうしようかなあ・・・学識はガチな人だし、一応術師でもあるからいればありがたいが・・・

 

「ジューニャ先生だもんねえ」

 

 ジューニャ先生だからなあ。

 二人して頷きあう。

 そもそもあの人が・・・と口にしたところで部屋の扉が開いた。

 

「あ、シルちゃん! お久しぶりです!」

 

 黒い節足動物から真っ当な人型生物に生まれ変わったジューニャが入ってくる。

 腰まである豪奢な金髪。エメラルドのような瞳。白く滑らかな肌。フルフル揺れる尖った耳。

 世間の人々が思い浮かべる森の妖精(エルフ)と言う言葉を体現したかのような、美の化身。

 それはいいんだが・・・何故メイド服? しかもフジのだよなそれ?

 

「だって服がボロボロだったでしょ? 貸して貰ったんだけど、胸とお尻がきつくて」

「・・・」

「ぐぎぎぎぎ」

 

 憎しみで人が殺せたら・・・っ!という目でジューニャを睨むフジとシル。

 このエルフ、身長が俺とほとんど変わらない上にとにかく肉付きがいい。

 しかも垂れたりとかではない、メリハリのきいた体型だ。

 痩身のはずのエルフでこのダイナマイトボディって反則だろう。

 

「カエラ様。どちらをご覧になっているので?」

「カエラちゃん?」

 

 そんな事を考えてたら二人が今度は俺を睨んできた。

 女って他人への視線にも敏感なのな。

 まああれだ、フジは小柄だけど人並み、むしろやや豊満な方だろ。別に悔しがることはない。

 

「・・・」

「カエラちゃん! わたし! わたしは!?」

 

 シルさまの体のますますのご発展をお祈りいたします。

 

「グギギギーッ!」

 

 奇声を上げてぽかぽか俺を殴り始めるミニ怪獣。うーむ、やはり怒っているシルはかわいいな。

 

「そんな言葉にはだまされないんだよ! いっつもいっつも馬鹿にして! 将来はジューニャ先生より凄いダイナマイトボディになるんだからね!」

 

 はいはい。

 そしてそこの駄エルフはちょっと勝ち誇った顔してんじゃねえ。

 

「あいだだだだだだ!?」

 

 三十秒くらい顔をわしづかみにした後でアイアンクローを外してやる。

 で、ジューニャ先生? 何しにいらしたので?(冷たい眼差し)

 

「えっとぉ、そのぉ・・・路銀も尽きてお酒も飲めなくなってぇ・・・

 最近噂のカエラくんだったら、昔のよしみで私を養ってくれて、お酒も飲ませてくれるかなぁって・・・」

 

 フジ。こいつを身ぐるみ剥いで村の外に捨ててこい。

 

「喜んで」

「やめて止めて! フジちゃんお願い痛い! 痛いのぉぉぉ!」

 




>おまえによし! 俺によし! うん、よし!
三方よし!
もちろん「フルメタル・ジャケット」のあれだが、商人の格言にも「売り手よし、買い手よし、世間よし」という似たようなのがある。
いや、似てるか・・・?

>塩
例によって日本人が持ち込んだ習慣。
現代日本ほど塩が安くないので、高い塩をまいてまで相手への嫌悪を表明するという意味もあるという、どうでもいい設定。

>厨房不潔伝Gエルフ
機動武闘伝Gガンダム。我がバイブル。

>田舎町で理不尽に逮捕されたベトナム帰りの兄ちゃん
ランボー。ファッションセンスをディスられるひとではない。逮捕された後、洗うと称して身ぐるみ剥がれてホースの水をぶっかけられるシーンあり。
「イージーライダー」と言い、アメリカの田舎はよそ者を「気に入らないから」程度で逮捕したり殺したりするような頭のおかしいところというイメージが強烈に焼きついた。
今は多少マシになったろうと思ったら、ジョギングしてる黒人を「怪しいから」だけで射殺する白人親子がリアルにいたりして「おおもう・・・」ってなるのがアメリカクォリティ。
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