全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

18 / 30
第十八話 妖精

 エルフである。

 妖精である。

 人間の世界では見ることも稀な種族である。

 この世界のエルフとかドワーフとか小人妖精(バグシー)とかは、元々世界の精霊力をコントロールするための助手として〈百神〉が人間を改造して生み出した種族だ。

 他に双翅妖精(ピクシー)とか霊猿妖精(ヴァナラ)とか魚人妖精(オアンネス)とかもいるけどまあそれは省略。

 エルフはその中でも最初に生み出された妖精族だけあって、人間はもちろんあらゆる妖精族の中でも圧倒的なスペックを誇る。

 誇る、はずなのだが・・・

 

「うう・・・」

 

 「私は人生なめてます」と書かれた板を首から下げて、泣きながら正座させられてるこいつを見てると、エルフどころか妖精族に対する幻想がガラガラと崩れていくのを感じる。

 まあ妖精にも悪人や駄目な奴は一定数いると当の本人が言ってたんで、幻想は幻想だってことなんだろうが。

 

「それにしてもこれはひどいんだよ」

 

 真顔のシル。

 うんうん頷くフジとルマ。

 初めて見たエルフがこれだった小間使いさんは未だにショックから抜け切れていない。

 まあ気持ちは分かる。この女(ジューニャ)、黙って立っていれば本当に人間が抱く幻想そのままの完璧なエルフの女神なのだ。

 美しく、神秘的で、やさしく、上品で、賢く、それでいて親しみやすい。

 フジにもタチバナにも絶対言うつもりはないが、俺の初恋の人でもあるのだ。

 まああれこれあって、俺の初恋は一週間で木っ端微塵に爆砕したのだが。

 閑話休題(それはさておき)

 もう一度聞くぞ。お前はこの村で何をしたいんだ?

 

「はい! 何かえらそうな顔してちやほやされつつ、毎日お酒を飲んで過ごしたいです!」

 

 フジ、ちょっと建材置き場から要石借りてこい。こいつに抱かせろ。

 

「はい、ただいま」

「待って! ちょっと待って! そんな事されたら足が折れちゃう!」

「絨毯が敷いてある分有情では?」

「本当の拷問だと、ギザギザの石の上に座らせるんだよねー」

「いやあああああああああ!」

 

 ちなみに要石の重量は推定50kgくらいである。

 そう言うわけでもう一度だけ聞くぞ。

 お前はこの村で何をしたいんだ?

 

「どうぞ偉大な英雄にしてマット村のご領主であらせられますカエラ様のお慈悲をもちまして、この卑しく哀れなエルフめに職をお与えください!」

 

 エルフのプライドも何も投げ出したノータイムの土下座。

 形が物凄く綺麗なのがちょっとむかつく。

 深く溜息をついてから、フジに手を振って石をキャンセル。

 最初からそう言えばいいんだよ。

 

「ありがとうございますカエラ様!」

 

 土下座ポーズのまま声を張り上げるジューニャ先生、いやジューニャ。

 あー・・・まあ、今まで通りカエラくんでいいぞ。

 子供の頃世話になったのは確かだしな。

 

「あ、そう? えへへへ・・・それじゃカエラくん、今後ともよろしくね・・・?」

 

 ジューニャが顔を上げる。

 酒蔵の酒を盛大に盗み飲みして伯爵家をクビになった時と同じ、ごまかし笑い。

 俺とフジとシルとルマと、事情を知らない小間使いの人まで盛大に溜息をついた。

 

 

 

「この世界サイモックはマルガムという一つの大陸といくつかの島で構成されています。

 その中でも私たちの住んでいる東のディテク王国と西のライタイム王国が二大国家とされていて、極東の島国アグナム皇国、北のダルク部族連合、南のゲマイ魔導帝国を加えて五大国と言われる事も・・・」

 

 日曜。

 体育館くらいある畳の仮設礼拝堂(もちろんフジのお手製)。

 土間に畳のベンチを並べて、数百人の村人がジューニャの授業を聞いている。

 彼女の背後に大きな世界地図。

 

 こいつの授業の何がいいかというと、簡単な幻影の術を使えるので地図とか文字のお手本とか、プロジェクターみたいに大きく表示出来るところ。

 でかい黒板は今ロウに用意して貰ってるが、それでもこの広さと人数だと黒板だけじゃ追っつかない。もちろん学識面はガチのガチで、一般教養から薬草学、医術、建築術みたいな実学分野まで知らないことはないんじゃないかってレベル。

 教師をやらせるにはこれ以上に便利な人材もいないだろう。

 

 後、こいつが教師を始めてから目に見えて受講者数が増えた。特に男。

 まあ外見はホンマ美人だからなこいつ・・・それで勉強する奴が増えるならいいとしよう。

 

 

 

 夕食。

 シルやフジ、ケイトーや村長一家も交えての席で、日曜寺子屋の話題になった。

 

「実際村人や孫からも中々評判は良いんですよ、領主様」

「近所の奥さんたちからもね、エルフの先生の授業はわかりやすいって」

「えへへへへ」

 

 村長や奥さんから褒められてニマニマしてるジューニャだが、目がチラチラとワインの瓶に向いてるのはごまかせてない。

 

「ほら、カエラくん。私頑張ってるでしょ? だから・・・ねぇ、いいでしょ、カエラくん。一杯だけ! 一杯だけ!」

 

 断じてノウ!

 

「どうじでぇ!?」

 

 汚い悲鳴を上げるダメエルフ。誰が飲ませるか。

 大体それで伯爵家クビになったんだろうが。

 お前の顔と学識があれば引く手あまただったろうに、あれだけ落ちぶれてたのはどうせ酒に溺れて身を持ち崩したんだろう?

 白い目を向けてやると、果たしてジューニャが目をそらした。

 そう言うわけだ。お前ここでは禁酒な。

 

「ひどいぃ! カエラくんひどいぃ!」

 

 そのままばったりとテーブルに突っ伏して泣き始める。

 

「うぅぅ・・・お酒だけが慎ましい人生の楽しみなのにぃ・・・私にはそれすら許されないっていうのぉ・・・?」

 

 ずうずうしいことをほざくダメエルフに、誰もが白い目を向けている。

 あ、こいつこっちにちらっと視線を向けやがった。

 嘘泣きとはせこい真似をするじゃないか。

 村長、明日からこいつの食事は水とオートミールだけにしろ。そう言おうとすると、ダメエルフががばっと起き上がった。

 どうした? 今度は心を入れ替えたふりでもするのか?

 

「違いますよ! 多分、近くでダンジョンが開きました」

 

 ・・・なんですと?




小人妖精(バグシー)
いわゆるホBットとかHーフリング相当の種族。
バグラー(こそ泥)とシーフで「バグシー」。
本来ちゃんとした種族名があるのだが、面倒くさくなって本人たちもバグシーで通してる適当な種族。

>日曜
この世界にはオリジナル冒険者族の影響で曜日が(ry
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。