全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第二十話 封印

 夜の村を馬で駆ける。

 俺と同じ馬にシル、並んで馬を走らせるジューニャ、自前の足で走るフジ。

 駄エルフはこの期に及んでグダグダ言っていたが、「これ以上言うなら簀巻きにして馬で引きずるぞ」と言ったら素直についてきた。

 「やさしい言葉だけより、やさしい言葉に銃を添えた方が多くのものを得られる」というのはどこの世界でも真実だな。

 とは言え馬で走るだけじゃ時間が足りん。

 ジューニャ、ちょっとこっちに寄って手綱をよこせ。シルはしっかりつかまってろよ。

 

「はい、カエラくん。何をするつもり・・・ひえええええええええええええ!?」

 

 またがる足を通じて俺の馬に、手綱を通じてジューニャの馬に活性化波動を送り込む。

 時速180kmで疾走を開始した馬たちはドップラー効果のかかった悲鳴を残しつつ、村の敷地から走り去った。

 

 

 

 村を抜けて荒れ地を30km。10分ほどで走破し、森に覆われた山の麓にたどり着く。

 ああ、馬は繋がなくていい。万が一モンスターが来た時に逃げられないとかわいそうだ。

 

「わかりました」

「ここからは歩きですね。それじゃあ、明かりつけます。弓の先端でいいですか?」

 

 頷くとジューニャが借りてきた弓(エルフだけあって一応使える)を掲げる。

 こいつ、自称でも何でも大魔術師(ウィザード)だけあって、何と詠唱も身振りも無しで呪文が使えるのだ。

 初めてやって見せたとき、光と闇の術では達人一歩手前のタチバナが唖然と・・・うおっ、まぶしっ!

 

「きゃあっ!」

「光量! 光量下げるんだよ!」

「す、すいません!」

「ヒヒーン!?」

 

 あたりが真昼どころか、白い闇になって何も見えない。

 フジが咄嗟に畳を立てて光を防いだくらいだ。

 後で聞いたら村からも見えて騒ぎになり、避難が加速したと言うからまあ結果オーライだが・・・やりすぎ。

 

「ごめんなさぁい・・・」

 

 慌てて呪文を解除したジューニャが小さくなる。

 まあ今回はいい。目立ったところで問題はないしな。

 というか考えてみるとこのパーティで夜目が利かないのはシルだけだ。

 近くまでは明かりつけずに走るぞ。

 

「そうなんですか?」

 

 実はそうなのだ。

 フジは忍者なので当然夜目は訓練されてる。ジューニャはエルフなのでこれも当然夜目が利く。

 そして俺は集中せずとも、周囲十メートルくらいに何があるか、何か動いているか位は何となくわかる。刺客に襲われたときに背後からの攻撃にあっさり対応できたのもこれだ。

 波動感知がアクティブソナーなら、こっちはパッシブソナーみたいなもんだろうか?

 そんなことを話すと、ジューニャがひどく感心した顔になっていた。

 

「凄いですねえ。カエラくん、頑張ったんですね。えらいえらい」

 

 ニコニコして頭を撫でてくるのがちょっと照れくさい。やめろって。

 

「はいはい。それで、ここからは歩いて行くんですね?」

 

 いや、走って行く。シルはフジに背負って貰う。俺はジューニャを背負う。

 

「むー、わたしはカエラちゃんの背中が良かったんだよ」

「私の背丈ではジューニャ様を引きずることになってしまいますのでご容赦ください」

「え、ちょっと待って。私背負われなくても歩けるけど・・・」

 

 いいから背中におぶされ。しっかり掴まったな? 行くぞ。

 

「はい」

「え、だから・・・きゃあああああああああああ!?」

 

 時速180kmのフジの脚力と、それにタメを張る俺のバネ足。

 ドップラー効果付きの悲鳴が再びその場から遠ざかっていった。

 

 

 

 十分ほど走って、俺達はあっさりとダンジョンの入口を見つけた。

 山の中腹、斜面にぽっかりと開いた穴。

 そこから俺でも分かるレベルの魔力があふれ出している。

 これか。

 確かダンジョンの暴走を防ぐ手段は・・・

 

「単純に中の怪物を沢山やっつけること。そうだよね、先生」

「はい、そうです。良く覚えてますねシルさん。花丸を上げましょう。

 迷宮暴走はつまる所ダンジョンの内包するエネルギーが飽和して外に噴出する現象ですから、ダンジョンのエネルギーを減らしてやる、つまり中のモンスターを倒したり、魔力結晶を持ち出したりすれば暴走は防げます」

 

 ダンジョンは踏破して最深部のダンジョンコアを潰せば破壊する事が出来るが、世のダンジョンが大半破壊されずに残ってるのはこれが理由だ。

 つまり適度に中のモンスターを倒していればダンジョンは暴走せず、魔力結晶を掘り出す鉱山になるのである。冒険者は鉱夫というわけだ。

 こうした営利ダンジョンで領地を富ませている例は枚挙にいとまがない。

 うまく行けばこれもうちの村を栄えさせる一助になる。

 できれば残す方向で行きたいが。

 

「そうですね。迷宮暴走の危険性は低そうですが、とは言えいきなり攻略するのは無謀でしょう」

「まあポーションなり何なり準備不足ですね。我々の目的は偵察ですし、無理は禁物かと」

 

 フジの言葉に全員が頷く。

 出来ればここに見張りを置いておきたいが・・・

 

「そう言う事でしたら、私がダンジョンを封じましょう」

 

 ・・・出来るの? お前にそんな事が?

 

「できますよぉ!」

 

 割と本気でジューニャが怒った。

 

 

 

 ガイア・インパクトォ!

 足から発した衝撃によって、ダンジョンの入口周辺が崩れ落ちる。

 初手入口崩落とはたまげたなあ・・・確かダンジョン損壊ってマジの非常時以外は死刑も有り得る重罪じゃなかったか?

 

「迷宮暴走のときはだいじょうぶだよ。後領主が判断したときは、よほどのことがない限り通るから、カエラちゃんなら二重の意味で問題ないと思うよ」

 

 そんなことよく知ってるな、シル。

 

「法律は勉強させられたからねー。知らずにしくじる危険性を避けるためにも、商売相手の隙を突くにも有用だって言うのが御父様の口癖だったんだよ」

 

 シルのオヤジさんらしい言いぐさだなあ・・・。

 

「私ども影の一族でも、あの方の悪辣さは時々話に出ましたねえ・・・母ならもっと詳しく知ってるでしょうが」

 

 そう言うフジは崩落した斜面に畳を敷き詰めていた。

 

「こんなところでよろしいでしょうか」

「はい、オーケーですよー。それじゃ、ちゃっちゃとやっちゃいますのでその間にモンスターが出て来たら対処お願いしますね」

 

 ジューニャが敷き詰めた畳に手を触れると、表面に見る見るうちに複雑な紋様や古代文字が浮かび上がる。

 

「これは・・・?」

「たぶん《染色(ステニング)》の魔法だね。タタミにああして文字や紋様を描いて、魔法陣にしてるんだよ」

「はい、完成です」

 

 そんなことを話している内に魔法陣の描画は終わっていた。

 手を触れて魔力を注ぎ込む。

 その膨大な魔力量は、俺達三人が目を見張るほどのもの。

 

「はい、これでしばらくはモンスターが漏れ出てくることはないと思います」

 

 呆然とするフジと、憮然とするシル。

 

「・・・ひょっとしてこの人凄く優秀な術師なのでは?」

「実はそうなんだよ。普段は全くそれを活かせてないだけで」

 

 シルも人間レベルではかなり有能な術師なんだが、基礎スペックでは比較にもならない。

 まあだとしても、仲間にするなら治療呪文持ってるシルを選ぶがな!

 というかお前、初歩しか使えなかったんじゃないのか。

 

「初歩ですよ? 《(アーマー)》の呪文を魔法陣で固着させただけです。後はまあ、解呪されたりしない限り大丈夫かなって」

 

 つまりこいつは人間の周囲にまとわせる防御力場でダンジョンの入り口を塞いだのだ。

 どうも呪文の習得は系統ごとに特殊な精神修養が必要だが、それを強化する魔法陣は知識と魔力だけでどうにかなるらしい。なるほどこいつ向きの技術だな。

 

「それでぇ・・・」

 

 あ、媚びるような目つき。

 望みが何であれ却下だ。

 

「ひどぅい! 私役に立ちましたよね! ねえ、フジさん、シルさぁん!」

「・・・まあ不本意ながら――」

「――認めざるを得ないんだよ・・・」

 

 双子並みに息ぴったりのフジとシルである。

 まあこれで時間が稼げて安全を担保出来たのも事実だしな・・・

 

「いいですよね、お酒飲んでもいいですよね!?」

 

 やっぱりそれか・・・まあワイン一杯だけならな。

 

「けちぃ!」




染色(ステニング)》は変性(物質変性)、《(アーマー)》は守りの系統の初級呪文です。

>「やさしい言葉だけより、やさしい言葉に銃を添えた方が多くのものを得られる」
Kind words with a gun.
アル・カポネの名言。

>うおっ、まぶしっ!
元ネタ何だったかなあと自分でも調べたが、伝説のクソアニメ「MUSASHI -GUN道」。2006年だから丁度二十年前かあ・・・
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