全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第二十二話 お中元にはボンレスハム

 エルフの豊満な胸を親の仇のようにつつき回すシルと、悲鳴を上げながらくるくる回るジューニャをしばらく無感動な目で観察する。

 

「この! この! この! 駄肉め! 駄肉め! 駄肉め!」

「やめて! やめてぇぇぇ! カエラくん助けてぇ!」

 

 やめて欲しければ質問に答えろ。ダンジョンアタックで必要なものは?

 シルの手と回転が止まったところで、ジューニャがきょとんとする。吊られたまま。

 

「え? ああ、ダンジョンアタックで必要な装備ですか? 私は特にありませんねぇ」

 

 魔力結晶とか要らないのか?

 

「今まで魔力が切れたことありませんし」

 

 化け物め。あ、そう言えば魔法の杖とかは?

 

「あ、いります! それはいります!」

 

 そっちはいるのか。

 

「だって、杖がない魔法使いなんてみっともないじゃないですか! ただの木の杖でいいから雰囲気のある奴ください! 後ローブも!」

 

 騒ぐ駄エルフ。宙づりでブラブラ揺れてるのが実に間が抜けている。

 まあ安上がりでいいがな。ロウがまだ売ってないならこの前手に入れたワンド持たせるか。ハリーポッターの杖みたいなあれ。

 どっちにしろ戦闘に使える呪文ほぼないからどうでもいいけど。

 

「うぐぅ」

 

 たい焼き喰ってる小娘みたいな声を出すジューニャ。

 後ダンジョンでローブはやめとけ。引っかけたりして必ずひどい事になる。

 

「そんなぁ!」

 

 それっぽい革の上下とか頼んでやるから。

 そう言えばジューニャの《加護》ってなんだ?

 それ次第では戦術の幅が広がるが・・・《魔力の加護》とかか?

 

「えっと・・・その・・・そうですね、そんなところです」

 

 嘘だな。

 

「嘘ですね」

「嘘なんだよ」

「なんで全否定なのよぉ!?」

 

 いやどう見ても怪しいし。

 というか現状、出し惜しみは無しにして貰いたい。割とガチでピンチなんだ。

 

「それはその・・・そうですね・・・」

 

 再びがっくりとうなだれたジューニャが何かモジモジしている。

 あー、俺に言いにくいような事なら、フジなりシルなりにだけ話して貰ってもいいが。

 聞いた話だが《加護》にも色々あって、中には「小便の色を変えられる《加護》」とかあったそうである。余りの無意味さに同情の涙を禁じ得ない。

 

「そ、そこまでではないんです・・・その、ですね」

 

 うん。

 

「私の・・・私の《加護》は・・・」

 

 ・・・・・・・・・・。

 

「・・・」

「・・・」

 

 沈黙。集中する視線。

 それに耐えかねたのか、それとも勇気を振り絞ったのか、ジューニャは顔を真っ赤にして絶叫した。

 

「《汗の加護》! 私の《加護》は《汗の加護》なんです!」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・どゆこと?

 戸惑っているのは俺だけではない。

 フジもシルも、頭の上にハテナマークを浮かべている。

 

「あの、《汗の加護》というのは具体的にはどのような?」

「汗がたくさん出るんです。昔はコントロール出来なくて・・・」

 

 なるほど。それは女にはつらいだろうなあ。

 

「それも大変なんだけど、24時間以内に飲んだものと同じ汗が出るの・・・」

 

 あっ。

 

「あ」

「あー・・・」

 

 つまりこいつは酒が大好きで、飲んだものが汗として体中から吹き出すとすると・・・

 だめだ、阿鼻叫喚の地獄絵図しか見えん。

 

「あと、一度高い蒸留酒を飲んだときに、ろうそくの火が引火して・・・」

 

 マジで阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

 

「良く生きておられましたね・・・」

「そばに水の術の使い手と治癒術の使い手がいなかったら死んでたと思います・・・」

「だろうね・・・」

 

 もはや俺もフジもシルもドン引きである。しかしそれは・・・どれくらい出るんだ?

 

「いっぺん試してみたことがあるんですけど、ため池があふれるくらい出してもまだ余裕がありました・・・」

 

 すげえな干からびたりしないのか。いや魔力で出してるんだろうがそれにしたってな。

 

「後ため池にお前の汗を混ぜるなって物凄く怒られました」

 

 やる前に分からなかったのかお前は。

 しかし液体なら何でもいいのか? 意図して使い分けたりは出来るのか。

 

「できます。何だったら魔法の薬とかも出せます。安物のポーションでもとんでもない量の魔力を消費しますけど」

 

 ふむ・・・。

 

「あの、どうしたんですかカエラくん? 凄く悪い顔ですけど」

 

 ああいや、なんでもない。ともかくフジ、それだけ手紙に書いておいてくれ。

 

「かしこまりました」

「あの、何でもないとか言われると余計に気になるんですけど?」

「大丈夫だよ。カエラちゃんのことだからちょっと悪だくみしてるだけなんだよ」

 

 そうひどい事にはしないから安心しろ。

 

「できませんよ!」

 

 それじゃ俺は仕事に戻るから、後は任せる。

 シルなりフジなり、適当にやっといてくれ。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! ほどいてくれないんですか!? 助けてくれるって言ったじゃないですか!」

 

 シルにつつかせるのをやめてほしければ、とは言ったが助けるなんて言ってないな。

 大体酒を盗み飲みした罰がまだだろ。明日の朝になったらほどいてやる。

 逆さ吊りされているわけじゃなし、放置しても死にはすまい。

 

「それは! 死にませんけど! せめてトイレには行かせて貰えませんか?!」

 

 随分必死だな?

 

「その、ワイン沢山飲んだのでそろそろ・・・」

 

 そうか。バケツは用意してやる、うまくそこに落とせ。

 

「いやああああああああああああああああああ!」

 

 それからしばらく放置して、ガチ泣きになったところで縄をほどいてやった。

 今度やったら本当に一昼夜放置するからな?




>ため池に汗
仲間のエルフが水を浄化する呪文を丸一日連続して使うはめになりました。

>逆さ吊り
逆さに吊られてると、血液が逆流して頭部の穴から出血して死ぬそうです。
本当かどうかは知らない。
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