全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第二十三話 マンチキン

 三日後。物資を携えて、タチバナたちが到着した。

 早いなあ。こいつらに高速郵便事業やってもらったら一財産出来るんじゃないだろうか。

 

「若様」

 

 タチバナが苦笑しつつ諫めてくる。

 はいはい、ほんとにやろうとは思ってませんよ。

 取りあえず荷物を確認して、村長とケイトーに後のことを頼んでから出発。

 俺とシル、ジューニャが馬で、フジ、タチバナ、双子が徒歩。合計七人。

 馬は三頭。空の馬には食糧やテント、予備の物資も積んでおく。

 例によって活性化波動で馬を加速。今度はダンジョン入り口まで馬で行く。

 道なき山中なのでゆっくり目に移動して、三十分ほどで到着した。

 

「おおー。見事に――」

「――埋まってますね」

 

 ダンジョンの入口は、数日前に封印したときのままだった。

 崩落した斜面に円形にタタミが並べられ、その上にジューニャの描いた魔法陣がおぼろげな光を放っている。

 

「これはどうやって解除するんですか? 《解呪(ディスペル)》の呪文とかでしょうか」

「え? いやですね、タチバナさん。私がそんな難しい呪文覚えてるわけないじゃないですかぁ」

 

 えっへんと胸を張るジューニャ。今の会話の中で胸を張る要素あったか?

 なおこいつの今の服装は、約束通りゆったりした革の上下である。

 それっぽい帽子とワンドもあるから、そこそこ魔法使いっぽい。

 ちなみにシルも似たような革の上下(こっちは神官服っぽく見える)、フジは忍者メイド服、タチバナと双子はぴったりした革服(に、見える忍者装束)。俺は軽い革鎧(鎧下)と上半身を覆うチェインシャツ。

 

「タタミをどければ魔法陣が崩れますから、それで術は解除されますよ。強固なのは力場を張った中央だけで、はじっこの方のタタミは簡単にどけられます」

 

 おお、意外と単純だった。崩落した土はどうする? ダンジョンには自然修復機能があると聞いたが、まだ入口は再生してないみたいだな。

 その場合もお任せ下さいって言ってたが。

 

「ええ、大丈夫ですから安心して下さいね」

 

 そう言うとジューニャが杖を動かす。

 杖の動きに伴って一枚二十キロの畳が周囲から剥がれていき、きっちり揃えて地面に積まれる。

 感嘆の声が上がった。

 

「ふふふ、まだまだですよ?」

 

 もう一度杖を動かすと、今度は土砂が持ち上がった。

 すげえな。20トン・・・ひょっとして30トンか40トンくらいないか!?

 ともかく数十立方メートルの土がゆっくりと動き、ダンジョンの入口が現れる。

 

「おお――」

「――すげえ!」

 

 双子の称賛の声。

 土砂が完全に脇にどけられると、自然と拍手が上がった。

 得意満面の表情で一礼するジューニャ。

 あんなんだから褒められる事が少なかったんだろうな・・・(ほろり)

 

「哀れみの目で見ないで下さい!」

 

 がおーっと悲しきポンコツが吼えた。

 

「ですが本当に凄いものですよ。私どもだけなら、丸一日はかかったでしょう」

「え、そうですか? そうですよね、えへへへ・・・」

 

 そこですかさずフォローに入るタチバナは大したものである。

 まあ俺からも褒めてやろう。

 実際助かったよ。本当に魔力は凄いわ。

 

「でしょう! でしょう! だからもっと・・・」

 

 探索が終わったらワインをグラス一杯飲ませてやる。

 

「けちぃ!」

 

 

 

 装備品やらの最終チェックをしながら、ふと気付く。

 そう言えばお前、具体的にはどんな呪文を使えるんだ? 一応把握しておきたい。

 

「え? はい。ええとですね。《(ライト)》、《土くれ(アース・ピース)》、《水生成(クリエイト・ウォーター)》、《発火(イグナイト)》、《そよ風(ブリーズ)》、《獣よけ(ビースト・リペレント)》、《植物治癒(キュア・プラント)》、《念動(テレキネシス)》、《作音(サウンド)》、《(イリュージョン)》、《仮物質創造(イミテイト)》、《染色(ステニング)》、《栄養付加(ヌートリション)》、《腐敗(デケイ)》、《発酵(ファーメント)》、《蒸溜(ディスティル)》、《嗅覚強化(キーン・ノーズ)》、《気休め(スーシング)》、《霊気感知(センス・オーラ)》、《方位感知(センス・ディレクション)》、《時計(タイムウォッチ)》、《疲労回復(レンド・エナジー)》、《(アーマー)》、《霊魂会話(スピリットトーク)》の十九系統二十二個ですね」

 

 おおー、と声が上がる。

 

「ふふん!」

 

 自慢げな顔のジューニャ。

 実際人間の術師なら二十以上というのはかなり多い方だ。

 本当に基本的な呪文ばかりで、まがりなりにも「エルフの大魔術師(ウィザード)」がこれでいいのかとは思うが。

 ところで呪文についていくつか質問いいか?

 

「ええ、どうぞ。なんです?」

 

 生物に《腐敗》の呪文をかけて生きながら腐らせるとかできる?

 

「なんて恐ろしいこと考えるんですか!?」

 

 ドン引きされてしまった。

 それ位普通じゃないのかと思うがまあそれは言わないでおこう。

 んじゃ血液を《発酵》させたり《蒸溜》したりして相手を殺すのは?

 

「発想が暗殺者です! できませんよ!」

 

 まあモンスター含めて生物には天然の魔力防御があるらしいからな。その辺の呪文は大概無生物にしか効かないのは俺も知ってる。

 あ、傷口に《腐敗》の呪文をかけて、敗血症とかにするのは?

 

「・・・それは・・・できるかも、です」

 

 よし、戦術の一つとして考慮しておこう。竹槍トラップにクソを塗るのはベトコンの専売特許ではないのだ。

 それと今の《念動》の術は見事だった。あれで重い岩やナイフを投げて攻撃するのは?

 軽いものなら高速で投げつけられたりしないのか?

 

「残念ながら無理ですね。お見せした《念動》の呪文は力を効率よく伝えるために、移動速度が犠牲になってるんです。

 押さえつけることは出来ますが、攻撃するなら速度を重視する別の呪文が必要になります」

 

 残念。

 《作音(サウンド)》と《(イリュージョン)》に関してはどうだ?

 例えば《作音(サウンド)》で敵の鳴き声をコピーして気をそらすとか、幻影の岩壁を作ってその中に隠れるとか。

 

「可能ですが、どちらも初級呪文だけあって精度が低いので、感覚の鋭い相手には通用しないかも知れませんね」

 

 大きな音を立てて相手を怯ませるとかは? 複数の場所から音を出して混乱させるとか。

 

「余り大きな音も出せないので、難しいですね。複数箇所からはできると思います」

 

 《染色》で相手の目つぶしをするのは?

 

「可能ではありますが・・・接触しないと正確に染められないので、成功率は余り高くないかと」

 

 それじゃ・・・

 

「どこまであるんですかぁ!?」

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