全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第二十四話 小粋でアドリブの利く魔法の使い方

 結局、それから十分位も質問攻めにしてようやく俺はこいつの魔法を大体把握した。

 

「ふええ・・・やっと終わりました・・・」

 

 魔法使いはパーティの要だからな。

 なにが出来て出来ないかは知っておく必要がある。

 

「使える呪文さえ覚えておけばいいじゃないですか・・・」

 

 魔法ってのは呪文それ自体と同じくらい、どう使うかが重要なんだよ。

 剣だって、ただ振るだけじゃなくていくらでも使い方がある。

 何だったら包丁にもなれば工具にもなるんだからな。

 

「・・・」

 

 なんだ?

 

「いえ、私のお師匠様と同じような事を言うから・・・カエラくんは凄いですねえ。

 術師でもないのに、そこまで魔法に詳しいなんてよほど勉強したんでしょう?

 誰かお師匠様についたんですか?」

 

 まあ色々な。ご先祖様の古文書でそれっぽい事が書いてあったのもある。

 と、誤魔化しておく。

 どっちも嘘ではないが、転生前の記憶が元だとか言えん。

 俺がオリジナル冒険者族だと、多分フジ兄妹とタチバナ、ひょっとしたらシルあたりも感づいているかも知れないが、わざわざ広めてやる必要は無いのだ。

 まあ、三歳で本を読み始める時点で明らかに異常だと思われてる気もするがそこは考えないようにしよう。

 そう言えば一つ忘れてた。《仮物質創造(イミテイト)》だ。やりようによってはかなりあくどいことが出来そうだが・・・どれくらいの事ができるんだ?

 

「見せかけだけですけど、何でも作れます。ただ、剣ならポッキリ折れてしまいますし、水車を作ってもうまく回りません。食べ物を作っても栄養はないですね。

 もちろんずっと魔力を注いで維持する必要があります」

 

 便利だが使いどころが難しそうだな・・・ジューニャは何に使っていたんだ?

 そう言うと、駄エルフの顔がはっきり引きつった。

 つまみ食いや盗み飲みがばれたときと同じごまかし笑い。

 ・・・おい、この駄エルフまさか!

 

「偽金を!?」

「だとしたらジューニャ先生でも極刑は免れないんだよ。尻から口まで串刺しにして村の入り口にさらすんだよ!」

「ひいいいい!?」

 

 うわ、シルが怖い。どうどう、落ち着け。

 偽金でそこまでやる事はないだろう。

 

「カエラちゃんはあまいんだよ! お金一枚は血の一滴!

 人の命を支えるお金を偽造するって言う事は、人の命を偽造するのに等しいんだよ!」

「まあまあ」

「まあまあまあ」

 

 激おこシルをなだめる俺達。

 こいつがここまで偽金に厳しいとは知らなかった。お家柄という奴だろうか。

 しかし極刑は大げさとしても、偽金作ってたなら俺としてもお前をかばうのは難しいぞ?

 そう言うとジューニャは泣き顔でぶんぶんと首を振る。

 

「してません! 私にだってプライドがあります!」

 

 あったのか、初耳だな。

 

「ひどい!」

 

 日頃の行いだろ。だがじゃあ何に使ってたんだ?

 

「それはその・・・恥ずかしい事なので聞かないで頂けると・・・」

 

 ゴニョゴニョ口ごもる容疑者エルフ。

 歩く生き恥に、今更恥が一つ二つ増えたところでどうってことはないだろ。

 

「ひどい! カエラくんヒドいぃぃ!」

 

 いいからしゃべれ。

 割と本気で睨むと、悲鳴を上げて大人しくなった。

 

「その・・・おなかが空いたときに、《仮物質創造(イミテイト)》でパンを作ってたんです・・・」

 

 ・・・それだけか?

 

「ですが、その呪文でパンを作っても栄養はないのでは?」

 

 冷静に突っ込むタチバナ。

 

「はい。ですから《栄養付加(ヌートリション)》で栄養を付加して、おなかの中で消化されるまで術を維持すれば・・・」

「「おお!」」

 

 同時に手を打つヒョウとレイ。

 この生活無能力者がよくもまあこの5年生きてたもんだと思ってたが、そのからくりがこれか。不覚にもちょっと感心した。

 水を出す呪文も使えるんだから、それは生きていくだけならどうにかなるだろうな。

 そう言ったらジューニャがとうとう泣き出した。

 

「なりませんよぉ! 味もしない、歯ごたえもない、土瀝青(アスファルト)味のそぼろを毎食食べなきゃならない気持ちが分かります!?

 それを四年も続けたんですよ! 私のみじめさなんてわかりっこない! 一体どうすれば良かったんですか!」

 

「お酒を飲まなければどうにでもなったと思いますが」

「働け」

「むしろこれだけの術師ならいくらでも働き口はありそうなものですが」

「困った。これはちょっと――」

「――擁護出来ない」

 

 ほんとにな(溜息)。

 

「うう、せめて、せめてお酒があればあんなみじめな思いをしなくても済んだものを――!」

 

 悲劇のヒロインぶって泣き崩れるジューニャ。もちろん誰も同情してない。

 あのな、酒があったからみじめな思いをしてたんだぞ? わかってるか?

 

「うううううー!」

 

 まったくこいつは・・・ん? さっき上げた術の中、食料系の呪文だけ結構豊富だったな。

 《栄養付加(ヌートリション)》、《腐敗(デケイ)》、《発酵(ファーメント)》、《蒸溜(ディスティル)》・・・あっ! まさかお前、酒を造ろうとしてたのか!?

 

「はい・・・そのために辛い修行にも耐えたのに・・・肝心の水からお酒を造る魔法は食料系の素質が足りなくて習得は難しいって! わ、私は今まで何のために・・・!」

 

 身も世もなく号泣するジューニャ。

 すげえな、女が泣いてて何も感じないのは16年の人生で初めてだ。

 

「このごくつぶしがぁーっ! 酒が欲しければ働いて買えーっ!」

 

 あ、切れたシルにぽかぽか殴られてる。

 

「ひいいい!」

 

 泣きながら逃げるジューニャと追撃するシル。小学生に追われて逃げ惑う成人女性の図である。

 

「むきー!」

 

 猛り狂う珍生物(シル)を後ろから抱き上げて引きはがす。クズリかお前は。

 いいからお前ら全員、さっさと準備しろ。




>アスファルト味のそぼろ
名著「食前絶後」より。

>クズリ
ウルヴァリン。ヒグマより獰猛と言われる小型生物。
ゴールデンカムイでも主役回があった。
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