全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第二十五話 必殺スーパーダイナマイト

 あれこれ相談と騒動を終えて、ようやくダンジョンに侵入する。

 何故俺たちはあんな無駄な時間を・・・

 閑話休題(それはさておき)

 

 ジャンケンで負けたヒョウを残し、俺、フジ、シル、ジューニャ、タチバナ、レイが突入組。

 近接戦闘力が高い俺とフジが前衛、近接戦の出来ないシルとジューニャを挟んで、タチバナとレイが後衛だ。

 ジューニャの《光》の呪文が周囲を照らし、フジの松明とレイのランプがそれを補う。

 

「・・・来ました」

 

 ダンジョンに入って五分。

 夜目の利くフジが前方に小型の人型生物の群れを確認した。

 

 

 

「手応えのない敵でしたね」

 

 斬り倒されて光のチリになって消えていくゴブリン。

 投げ捨てた松明を拾い上げながらフジが独りごちた。

 まあゴブリンに苦戦するわけもなく。

 逆に初っぱなから強敵が出てくると営利ダンジョンとしては困る。

 後、ジューニャの《(アーマー)》の呪文が強かった。何度かわざと斬らせてみたが、ゴブリン程度だと攻撃が通るどころか衝撃も感じない。

 

「あ、魔力結晶が出て来ましたよ」

 

 一人だと普通に喋れるレイがゴブリンの死体のあったところを指さす。

 ゴブリンが消えた後には、小指の爪くらいの透き通った結晶があった。

 これが魔力結晶なんだな。

 松明(戦闘中は投げ捨てていた)を拾いながら、フジも物珍しそうに覗き込む。

 

「魔力結晶が生まれるところ、私も初めて見ました」

 

 ジューニャでもか。まあダンジョン潜るようなキャラではないわな。

 

「むしろダンジョンに潜ってたら身を持ち崩すこともなかったでしょうに」

 

 それはそれで収入を全部飲み干してひどい事になってた気もするな。

 

「ジコカンリが出来ない人は何やってもダメなんだよ」

「みなさん言いたい放題ですね!?」

 

 自業自得だろ。タチバナやレイが何も言わないのはやさしさだと思え。

 そう言えばゴブリンって基本緑色だよな?

 

「え? ええ、そうですね。森に侵入したゴブリンを退治したときに見たことがあります」

 

 今倒したゴブリン何か黒くなかった?

 

「確かに。黒いまだらというか・・・」

「色自体も黒みがかかってましたね」

 

 《光の加護》持ちで夜目の利くタチバナと視力の鋭いエルフのジューニャが言うんだから間違いないだろう。

 シルとジューニャは何か心当たりあるか?

 

「私はちょっと思いつかないんだよ」

「何か引っかかってるんですが・・・すいません、思い出せなくて」

 

 ジューニャもか。俺もどこかで読んだような気がするんだよな。

 まあ思い出せないものはしょうがない。魔力結晶拾って先に進もう。

 

「了解です」

 

 

 

 

 その後も探索は順調に進んだ。

 オーガなんかは冒険者の旅人級(最下級)剣士級(第三級)を区分けする壁なんて言われてるが、俺とフジにとってはゴブリンと大差ない雑魚でしかない。

 やはりジューニャの《鎧》呪文の威力もあり、あっさりと下す事が出来た。

 

「あのオーガははっきり黒かったですね」

 

 だな。ジューニャはオーガは見た事あるか?

 

「自分で見た事は無いですけど、黒いのは余り聞きませんねえ・・・」

 

 そんな事を話しながら、かなり奥まで来た時だった。

 !?

 

「なっ!」

 

 その瞬間、生命の波動も何も発していない床や壁が、瞬間的に人型生物に変わった。

 壁の一部が人型に切り取られて動き出した様な感覚。

 コールタールのように真っ黒い、身長4mの毛むくじゃらの巨人。

 

「ロック・トロール!?」

 

 トロールの一種だ。岩との親和性が高く、岩に擬態というか一体化することが出来る。知力も高く、魔法も使える。本来は様々な岩の色をしているはずだが、こいつはコールタールのように真っ黒だ。

 最後尾のタチバナとレイが咄嗟に振り向いて、後ろからの不意打ちを回避。

 俺の刀が正面の一匹のふとももを切り裂き、フジがもう一匹のすねを切り裂くとともに地面を叩いて、シルとジューニャを囲むように畳の障壁を生み出す・・・いかん!

 

「!?」

 

 フジより一瞬早く、俺の波動知覚がジューニャの足元のロック・トロールを感知していた。

 地面から生える畳の障壁。その中に立ち上がる4mの巨人。()()

 フジ! 正面任せた!

 

「はいっ!」

 

 シルをかばって立ちはだかるジューニャがちらりと見えた。

 《念動》の呪文を発動したのか、片方のロック・トロールが動きを止めるが、もう片方が拳を振り上げたところで、視界が完全に遮られる。

 いくら《鎧》の呪文があってもトロール相手にどこまで通用するか!

 僅かに焦りを抱いて畳の壁を切り裂いた瞬間、内側からの爆発が俺を吹っ飛ばした。

 

 

 

 !? 周囲は一瞬にして火の海になった。俺も火だるまだ。まるでナパーム。

 幸い《鎧》呪文の作る防御障壁の表面が燃えてるだけで、直接焼けてはいない。

 吹き飛ばされた俺はごつごつしたものに当たって止まる。

 俺が足を斬ったトロールか!

 つかみかかろうとしてくるトロールの顔面に高周波震動剣を叩き込む。

 びくん、と痙攣して動かなくなる巨体。

 そこに殴りかかろうとするもう一匹。

 

「しゃっ!」

 

 フジの忍者刀が、ロック・トロールのアキレス腱を断ち切る。

 バランスを崩したそいつの首を、跳ね起きた俺の西川正宗が刈り取った。

 

「カエラ様! 火が!」

 

 後だ! シル! ジューニャ! 無事・・・か?

 

「ふが! もが!」

 

 燃える畳をかき分けて俺が見たものは、黒こげになってくすぶりながら大の字にぶっ倒れたジューニャと、その下敷きになってもがいているシルだった。

 

 

 

「ふう、これで大丈夫なんだよ。傷は塞いだからそのうち目を覚ますと思うよ」

 

 何とか残りを倒し、俺の火を消して、黒こげになったジューニャを回復させると、全員が大きく息をついた。

 俺達もジューニャの防御呪文がなければ、かなりの火傷を負っていたろう。

 いったい何があったんだ?

 

「わからないんだよ。ジューニャ先生が私の前に立ちふさがったかと思ったら、いきなりトロールが爆発炎上して・・・もう一匹も爆発したみたい。

 下敷きになって、先生の鎧の呪文がなかったら私も怪我してた」

 

 ふうむ・・・。

 

愛の神(アルリカ)様の神殿では《意識覚醒(アウェイクン)》の呪文は教えてないから、今すぐ意識を回復させたいなら叩き起こすしかないけど・・・」

 

 いや、いい。火も消えたことだし、少し休ませておこう。

 ここで少し休息だ。レイもシルに治療して貰っておけ。さっき、ロックトロールの岩つぶての呪文を食らってたろう?

 

「はい、若様」

「了解なんだよ」




タイトルは爆発で有名な科学戦隊ダイナマンの必殺技。

>投げ捨てた松明
投げ捨てても火が消えず、ランプのように壊れたりもしないので雑に扱えるのが松明の強みである。

>魔力結晶が初めて
ダンジョンのモンスターはダンジョンの魔力で形成・維持されているので魔力結晶を落としますが、地上で野生化した第二世代以降は通常の生物と同じなので魔力結晶を落としません。
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