全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
ジューニャは三十分ほどして目を覚ました。
今までのルートを地図に起こしていたシルが顔を上げる。
「ああ、よかったんだよ。助けてくれてありがとうなんだよ先生」
「いえいえ。シルさんも大した怪我がなかったようで何よりです・・・はい? 何で爆発したか? いえ、さっぱりわかりません」
わかんないのかよ。
「ええ。シルちゃんをかばって、咄嗟に《
「は?」
ちょっと待て。
《発火》の呪文? 爆発も気になるが呪文で斬りかかるってどういう事だ。
「何と言われても・・・こんな感じです」
!?
ジューニャがワンドを立てると、白い炎?が先端から立ちのぼり、細長い棒状になった。
「長さは3mくらいまで伸ばせますし、鉄の棒くらいならすっぱりと斬れちゃいます。
木工とか工作にも便利ですね」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
のほほんと笑うジューニャに黙り込む一同。
言えよ! こんな凄い術持ってるなら! いや、術自体は凄くないのか! 本来着火用の小さな火を出すだけの呪文だもんな! こいつの馬鹿術力があるからこんな規格外の威力になってるだけで!
「えぇ・・・? こんな呪文あるからって、気休めくらいにしかならないですよ? そりゃ狼くらいは追い払えますけど」
そりゃ術師のお前からしたらな・・・
「ジューニャ様、接近戦をする人間からしたら、剣や鎧をすぱすぱ切ってしまう、受ける事も防ぐことも出来ない炎の剣というのは恐ろしいどころの話ではないんですよ」
「ははー。そういうものですか」
タチバナの話に感心するジューニャ。いやお前のことだからな?
人並みの剣の腕があったら、無敵の剣士として売り出すことも不可能じゃないぞ。
それはともかく、その炎の剣で切ったら爆発した?
「はい」
うーん。人間爆弾か? でもこの世界火薬はないしなあ。
最初のオリジナル冒険者族が現れて以来、この世界で火薬を再現しようとした連中は多いが、いずれもが失敗している。モンスターの素材を使えば近いことは出来るし、それで花火を再現したやつはいるが・・・。
花火の三尺玉で金貨一万枚、日本円で一億くらいするってところから察しろ。
「斬られたら爆発するモンスターですか・・・やっぱりあの黒いのが関係しているんでしょうか?」
まあそう考えるのが妥当だろうなあ。体内に可燃性の液体を持ってるモンスターもいるが、ロック・トロール自体にはそんな生態はないはず。
ダンジョンの神ごとに色々な特色が付与されることはあるから多分それだ。
例えば同じゴブリンでも
それを考えるとこのダンジョンの元になった神は・・・燃えやすい油とか・・・
「燃えるものですか」
「ロウソクの神とか」
「ピンポイント過ぎるだろ。石炭や泥炭なんてのも・・・」
あ。
「あ」
俺とジューニャが同時に声を上げ、互いの顔を見る。
「「
ちょっと興奮する俺達に比べ、フジたちの反応は鈍かった。
「ええと・・・」
「
「聞いたことないんですがそれ神様なんです?」
あー。まあそうだろうな。
れっきとした〈百神〉の一柱なんだが、大概の人間は下手すると存在も知るまい。
「ひょっとして
そうそう。
さすがにシルは物覚えがいい。
「
彼らが昇神して〈百神〉となったあと、『地中の富』の信仰は
石炭や泥炭も司ることから、炭焼きの人にも信仰されてるとか」
「ははー」
感心するフジたち。
ちなみに今ではラードでもオリーブオイルでもコールタールでも全部この神様の管轄になっている。ドワーフたちが
いやしかし、そうなるとかなり特殊なダンジョンになるな。
高レベルのモンスターが全部あんな爆弾だとしたら対策が必要だぞ。
ジューニャは黒こげになったし、俺も《鎧》の呪文がなければ大火傷するところだった。
火の付いた油みたいなものが周囲にまき散らされるのは普通にヤバい。コールタールみたいな性質があるのか、水をかけても簡単には消えなかった。
本当にナパームだ。もしくは火炎放射器か。
「ですねえ・・・」
「そこはロウに言ってレンタルの耐火装備を用意すればいいんだよ。
むしろびじねすちゃんす!なんだよ!」
むう、言われてみればそうか。
ダンジョンの所有権は最初に踏破したものに与えられるが、それが誰であれ領主である俺ならダンジョンがらみの商売をロウの専売特許に出来る。
つまり俺の懐にもその分け前が転がり込んでくるわけだ。
さすがだなシル。
「この世のあらゆるものには値段が付けられるんだよ! そうじゃないのは私とカエラちゃんの愛だけなんだよ!」
得意げに胸を張るシル。
はいはい、すごいすごい。
苦笑しながら俺は頭を撫でてやった。
ああ、忘れてた。
シルをかばってくれてありがとうな。
俺からも礼を言っておく。
「いえいえ」
何でもないことかのように、ジューニャは笑った。
その後何度か、実験を繰り返した。
松明を押しつける程度では、着火はするが爆発はしない。
ジューニャの《発火》が馬鹿術力で多分2000度くらいは行ってるからああなったわけだ。
白熱するまで熱した棒手裏剣を刺したり、即席で火炎ビンを作って投げつけたり、色々試してみる。
「こんな事まで若様が調べる必要あるんですか? それとも学術的興味ってやつで?」
いいや、実利だよ。強いモンスターを簡単に倒せる方法があったら、このダンジョンにたくさん冒険者が押しかけて来るだろ。
たくさんモンスターを倒してくれれば、俺の懐にもその一割が転がり込むって寸法だ。
ダンジョン利権! しかも税がかからない! 領主俺だから!
「夢の不労所得生活なんだよ!」
働かずに食うメシはうまいか? うまいに決まってらぁ!
盛上がる俺とシル。周囲は苦笑。
まあこの辺は貴族とか商人じゃないとわかるまい。
「いえいえ。働かずに食うメシがうまいのは分かりますよ」
「これっ」
笑顔で頷くレイを苦笑しながらたしなめるタチバナ。
時折現れるモンスターをさっくり片付けつつ、俺達は奥に進んでいった。
>ひまわり神
「ひまわり」という古い映画と主演のソフィア・ローレンの名前を見てて思いつきました(ぉ
>一割
営利ダンジョンを利用する際の伝統的な利用料ですw