全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第三話 マット村

 物思いから覚めると森の中の街道だった。

 ぶつくさ言いながら、フジが死体からあれこれ集めている。というか剥いでいる。

 

「あーあー、何やってるんです。わざわざ鎧ごと斬ることないじゃないですか。

 首をはねるなり心臓一突きなり、いくらでも綺麗にやれたでしょう。

 金属鎧一式は高く売れるんですよ?

 これからを考えたらお金はいくらあっても足りないのに」

 

 へえへえ、悪うござんしたよ。むかついてたんだ。

 お詫びにお手伝いしましょうか、フジ様?

 

「身分のある方に死体漁りなんてさせられますか。いいから黙って馬を見てて下さい。

 馬は売ってよし、使ってよしの貴重な財産ですからね。逃がさないで下さいよ」

 

 あいよ。

 まあ、やり過ぎたのは事実だ。

 むかついた以上に浮かれてたのはあるかもしれない。

 あの家での生活を思い出して遠い目になる。

 

「そもそも、あれ見せてれば御当主様も廃嫡まではしなかったんじゃないですか?

 カエラ様はやれば出来る方なんですから、もっとアピールすべきでした」

 

 例の高速振動剣のことだ。

 どうかなあ。それっぽくはあるが、《剣の加護》じゃないのは事実だしなあ。

 そもそもこれをものにしたのは十五の時、今から一年前だ。

 多分そのずっと前から廃嫡と追放は決めてただろう。

 《加護》で電動マッサージしたのがまずかったか。

 そういうとフジがちょっと視線を逸らす。

 

「・・・まあそれは。

 しかし《波の加護》にあんな使い方があるとは思いませんでした。

 初めてお聞きしたときには半信半疑だったものですが、さすがカエラ様です」

 

 発想自体は割と前からあったんだが、会得に時間がかかったからな。

 お前の《畳の加護》は俺の言った通りの使い方が出来てたろ。

 俺の場合はコツを掴むのに手間取ったんだよ。

 

「もっと早くできていればとは思いますが・・・よっと」

 

 手際よく剥いだ武器や鎧、金目のものをフジが馬車に積み込む。

 捕まえた馬を馬車に繋ぎ、死体は脇の森に放り込んだ。

 ついでにいい頃合いだったので昼飯。

 しかしこの刀随分とよく切れるな。乳母(タチバナ)が用意してくれたらしいが・・・

 (こしら)えも日本のものっぽいし、日本刀のコピーとしては随分出来がいい。

 

「ええ、母が用意いたしました。ニシカワの宝物庫から持ってきたとか」

 

 思わずお茶吹いた。

 おまっ! まさかとは思ったが西川正宗じゃねえか! 家宝だぞ!

 初代『白のサムライ』が日本から持ちこんで、その後ありったけの魔力強化を施したガチ名刀だぞ!?

 

「違います。刀身から鞘から金具から全部そっくりですが別のカタナです。

 『本物』はちゃんと宝物庫に収まっておりますのでご心配なく」

 

 にしたってなあ・・・

 

「じゃあ返しに行きますか?」

 

 馬鹿言え、これはそっくりな別の刀だ。こんないい刀が観賞用とかありえん! 俺が持ってこそ輝く!

 

「そういうことです」

 

 すまし顔でフジが言った。

 

 

 

 馬車で街道を進み二十日後、目的のマット村に到着する。

 

「・・・ほんっとーにド田舎ですねえ」

 

 ここは地の果てアルジェリア、って感じだな。

 

「あるじぇりあ?」

 

 何でもない、忘れろ。我ながら古い。

 まあアルジェリアの砂漠って程ではないが、ほどよい感じの荒れ地だな。

 西を見れば赤茶けた地面が地平線まで広がっている。その先のどこかに国境があるはずだ。

 東にでかい湖があり、周囲に森があるあたりはまだ恵まれてるかもしれない。北の方には山も見える。

 しょぼい畑、点在する粗末な家。

 いいだろう、まずはここが始まりだ。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 メットーに帰りたくなってきた。

 

「くじけるの早いですね」

 

 まじめな話、メットーで冒険者やってた方が安牌そうじゃないか?

 

「それはまあ、わからないでもないですが」

 

 領主の館、そう称するものはひどい有様だった。

 館って言うより大きな小屋だし、あばら屋と言ったらあばら屋に失礼なくらいな代物だ。

 と言うか廃墟って言わないかこれ。壁も天井も穴だらけだぞ。

 

「命じられて建てましたのですが、肝心の領主様が30年以上いらっしゃらずにこの有様でして。修理するまではわたくしの家にご滞在を・・・」

 

 村長の老人が身を縮こまらせながらいう。

 オーケイ、別に怒ってないから安心してくれ。

 そのうち修理というか建て直して貰うとして、今晩はどうするかねえ。

 チラチラ見ると、フジが溜息をついた。

 

「まあ、しばらくは私がどうにかします」

 

 そうか? 悪いなー。

 

「言葉に感謝が籠もってませんね」

 

 いつだって感謝してるさ。

 何だったらフジに感謝を促すダンスを踊ってもいい。

 

「お願いですからやめてください。

 ガマガエルのラインダンスを見る方がまだマシです」

 

 もう一度溜息をつくと、フジは腰を落として地面を叩く。

 

「!?」

 

 廃屋寸前の領主の館を覆うように、次々と畳が地面から生え、生えた畳の上からまた畳が延びる。

 あっという間に全体をコーティングして、畳の壁と屋根を持つ小屋にジョブチェンジ。

 

「取りあえずこれでしばらくはもつでしょう」

 

 よーしよしよし、よくやった。

 頭を撫でてやろう。

 

「恥ずかしいのでやめて下さい」

 

 そう言いつつ、フジはなすがままになっている。顔がちょっと赤い。かわいい奴。

 一通りフジの髪の感触を堪能すると、俺は村長に向き直った。

 とりあえずはこれとして、農閑期に人を集めて建て直して貰うって事でいいな?

 

「は、はい・・・」

 

 呆然とする村長を後に残し、俺達は館の中に入っていった。




>青眼の白龍が観賞用になるなどあり得ん! オレが持つ限り、戦いの中でこそ輝く!
遊戯王の海馬社長の名セリフの一つ。テンションたけぇなあ・・・

>ここは地の果てアルジェリア
昭和三十年の「カスバの女」という歌謡曲。
製作中止でお蔵入りになった映画の主題歌なのに、その後何故か多くの歌手がカバーしてヒットという数奇な運命を辿った歌。
70年経ってるので著作権は切れてるはず。

>フジに感謝を促すダンス
やってみせろよ、マフティー!

>畳の家
ちなみに家具もボロボロなので、寝床は畳の上に毛布、テーブルと椅子は畳を積み重ねたものを使ってます。
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