全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第三十一話 歓迎されざる来訪者

 なんでだ。なんで冒険者たちがわっと押し寄せてくるはずが、このクソアマが来てるんだ。

 

「に、兄様・・・」

 

 その場にいたのは、当然だが継母・・・元継母だけではなかった。

 会えて嬉しいのが半分、迷惑をかけて申し訳ないのが半分という複雑な顔のヘルム。

 ハンサムな聖職者のようでいて、どこか目元が卑しい騎士アルガンも。

 

「お久しゅうございます、カエラさん。功成り名遂げたことお祝い申し上げます」

 

 ふん。見下すような目で言われても嬉しくも何ともないね。

 で、何の用ですか。

 

「それはもう、視察にですわ、カエラさん。

 『ニシカワ伯爵家の領地』をここまで立派にしてくださったのですもの、お礼の一つも言って差し上げなくてはね」

 

 ・・・は?

 俺の後ろに控えていたフジたちから怒気が放たれる。

 つまりこの女は、この村が自分のものだと言っているのだ。

 

「恐れながらゲルタ様。ここは伯爵家とは関係ない、カエラ様の所領にございます」

「ケイトー達もよくやってくれてるようですね。まこと伯爵家の忠臣」

「我々は既に伯爵家を辞した身でございます」

 

 ケイトー達の言葉にも耳を貸す気配が全くない。

 こっちに来るときに俺は分家を立ててる扱いだから、伯爵家傘下ではない独立勢力なのだが。友好関係にあるかどうかはまた別だし、支援関係があるなら話も変わってくるが、伯爵家との間にはどちらもない。

 

「カエラさんは伯爵家の係累、つまりここも伯爵家の土地ですわ。継承法にも・・・」

 

 そうかそうか。

 ()()()()()()()

 

「っ!」

「・・・!」

 

 剣は抜かない。

 その代わりに全力の殺気をぶつける。

 

 ものも言えずゲルタがへたりこんだ。

 アルガンが思わず剣に手をかけた――が、抜けない。

 抜いたら最後、俺に斬られるとわかっている。

 ガマガエルのようにダラダラと脂汗を流し、ピクリとも動けない。

 クソアマが連れて来た他の兵士や侍女達も同じだ。中にはクソアマと同じくへたり込んだり、吐いてる奴らもいる。

 

「ひっ――!」

 

 笑みを浮かべる。

 短く悲鳴を上げたのはアルガン。ゲルタを含め、ほとんどの人間は悲鳴すら上げられない。

 殺気を強める。ゲルタの侍女の一人が気を失って倒れた。

 アルガンを始めとする兵士達に視線を向ける。

 さあ、どうする。抜いてもいいんだぞ――

 

「ま・・・待って下さい!」

 

 一触即発の状況は意外なところから動いた。

 

「母様。ここは僕の受け継ぐべき土地ではありません。

 兄様が開いて兄様が発展させつつある土地は、兄様の子が継いでいくべきです。

 それに、こんな王都から遠い土地など持っても面倒なだけです!」

 

 ヘルムが一歩前に出ていた。

 母に言い聞かせるようでいて、俺に対する言葉。

 何よりも凄いのは、直接向けてはいなかったとは言え、俺が殺気を出してる中ではっきり物怖じせずにこれを言ったこと。

 

「へえ」

 

 思わず笑いが出ていた。それと共に殺気が雲散霧消する。

 多分、後ろのフジ達も同じ表情をしているだろう。

 ゲルタは呆然と、アルガンが肩を落として大きく息をつき、護衛や侍女たちは気絶したり、ゲルタ同様に呆然としたりしている。

 こんな中で、震えてはいるが普通に言葉が出せるのは大したもんだ。

 

「に、兄様?」

 

 一歩踏み出してヘルムの頭をガシガシ撫でてやる。

 いや、本気で感心したぞお前。

 いつの間にか随分強くなってたんだな。

 そう言うと、ほにゃっと顔が笑み崩れる。

 うーん、かわいいなあ。到底十四才の男とは思えん。

 と言うかマジで女の子みたいな綺麗な顔だちだから、成長したら女たらしにならないかどうかお兄ちゃん心配です。

 

「兄様! それはひどいです!」

 

 一転してぷんぷん怒るヘルム。うーむ、かわいい奴よ。

 怒るな怒るな、久しぶりに稽古をつけてやるから。

 

「本当ですか?!」

 

 ぱあっと明るくなる顔。

 どこまで強くなったか確かめたいからな。

 ついでに領主館に泊まってメシも食っていけ。

 丁度新築のが完成したばかりだしな。

 

「はい!」

 

 結構広い風呂もある。ヒノキ(っぽい)風呂だ、何なら一緒に入るか?

 そう言ったらヘルムの顔が真っ赤になった。

 

「な、何考えてるんですか! 兄様のエッチ!」

 

 この反応はカエラにとってはショックだった。

 男同士、兄弟同士で風呂に入りたいって言っただけじゃん。

 それ以上にエッチってお前、と思ったがこの世界ふつーに男色アリなんだった。

 そういう世界で一緒に風呂に誘う・・・なるほど、それはそう言う反応になるか。

 考えてみるとこいつと一緒に風呂に入ったりしたことなかったなあ。

 うん、これは俺の配慮が足りなかったかもしれん。

 

「兄様?」

 

 いやなんでもない、気にするな。

 そう言ってまたガシガシ撫でてやると、気持ちよさそうに眼を細める。

 大型犬みたいでかわいいやつよのう。

 

「実際どうだと思います?」

「いつも通り考えすぎて深読みし過ぎただけだと思うんだよ」

「カエラくんは頭が良すぎるのが難点ですねえ」

 

 うるさいぞ、そこ。

 俺はヘルムの肩を抱いて領主館に・・・おい、待て。

 なんでゲルタやアルガンがついて来ようとしてるんだ。

 

「なんでですって? 私たちも領主館に泊まるのですよ。当然でしょう」

 

 誰がおまえらを領主館に泊めるか。野宿しろ。

 

「なっ!?」

「か、カエラ様、それは余りに礼を失した行為・・・」

 

 無礼ならお前らの方が先だろう。無礼には無礼をもって返すのが俺の流儀だ。

 ああ、村の人間の家に泊まるのは許すが、ちゃんと金は払えよ。

 さもなくば村の財産を略奪する犯罪者と見なして成敗する。

 

 固まるゲルタとアルガンを無視して俺は弟とともに領主館に向かう。

 ちょっと困った様な顔をしてるがヘルムも何も言わない。

 結局二人はついて来なかった。




>この報告は孔明にとってはショックだった。
横山三国志のコラ素材の一つ。
「秋風五丈原」で呉の軍隊があっさり撤退してショックを受けた場面。
この後死ぬ。
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