全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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エピローグ 俺の所有物(おんな)たち

 三十分ほどでヒョウが到着。

 その頃には近場の火も鎮火していて、焼け跡から色々回収する。

 なんといっても目玉はオリハルコンの剣と、巨大守護者の魔力結晶だな。

 この前のもでかかったが、こいつのは何と3m近くある。

 ジューニャの呪文でふよふよ浮かんで後をついてくるのは中々圧巻だ。

 これだけでかいとむしろ売り先を探すのが難しそうだな・・・まあその辺はロウに任せよう。

 ああそうだ、焼け野原に広がる数万の魔力結晶も回収させんとな。

 

 一方でオリハルコンの剣である。魔法を切り裂く神代の超合金。

 刃渡りが50cmくらい。青銅剣のような青緑色。

 なのだが魔力を流してみるとオレンジに光り、滅魔力場が発生した。

 フォノン・メーザー斬りとの併用は出来ないようだが、魔法をたたっ切れる剣なんて使い道がありすぎる。

 幸い短めだから、鞘を作らせて脇差し代わりに差そう。

 そんなこんなで出発し、村に戻ったのは九時くらいだった。

 

「領主様ばんざい!」

「カエラ様ばんざい!」

「やはりカエラ様こそは我が村の神! 即ちゴッド!」

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

 

 戻ってきていた村人たちの歓呼の声に迎えられ、笑顔を作って手を振る。

 笑顔が引きつっていた自覚はあるが気にしない。と言うか疲れたのでメシ食って寝る!

 風呂に入って飯を食って仮眠をとると、もう夜だった。夜の七時くらいか。

 

「今六時五十二分・・・あ、五十三分になりました」

 

 声に振り向くとジューニャがいた。時計もないのにそんな細かく・・・あ、魔法か。

 

「《時計》の魔法ですね。錬金術とか天文学には正確な時間がどうしても必要になりますので。お料理にも使えるんですよ」

 

 ぼんやりした魔法の光の中で、少女のように笑うエルフの女。

 それは子供の頃に憧れた初恋の人そのもので、思わず溜息をついてしまう。

 

「あら、どうしたんですか?」

 

 何でもないよ。

 というか俺に嫁入りする話、まだその気なのか?

 タチバナから事情は聞いたんだろう?

 そう言うとジューニャが真顔になった。

 

「そのつもりです」

 

 なんでまたそこまで? 無理に俺に輿入れすることもないだろう。

 多分正妻にはしてやれないぞ?

 裸を見られたのがそんなに重要なことだったのか、それとも本気で俺に惚れたか?

 

「ええと、まあそのどっちも重要なんですけど・・・私がカエラくんを守りたいな、と」

 

 はい?

 

「カエラくん、実家でいじめられてたじゃないですか。それも子供相手に大人がひどい事を。

 私はそれに全然気付かずに、止めることも注意することすら出来なかった」

 

 それはそうか。

 忘れがちだがジューニャはエルフだ。

 それも美人で知的で、一般人からしたら半分神様か精霊みたいなものだ。

 だから元継母も、その手下のメイドたちも、ジューニャのいる所で俺に嫌がらせをするのは避けていたのだろう。

 

「だから私が守ります。今度は絶対に私がカエラくんを守るんです。

 それが大人の義務・・・いえ、私がそうしたいからするんです。そうさせてください」

 

 そう言って机の上に置くのは隷属契約書。

 既にジューニャのサインが書き込まれている。

 ・・・いいんだな?

 

「はい」

 

 覚悟を決めてサインをする。契約書がまばゆく光り、魔力が放出される。

 立ち上がると、目の前に微笑むジューニャの顔。

 抱きしめて口づけする。

 その夜、俺は初恋を遂げた。

 

 

 

 翌日。

 慌ただしく帰ることになった母親についてヘルムも帰京することになった。

 夜中に寝床から追い出されて野宿することになったゲルタは始終不満そうな顔をしていた。

 「俺が死ねばこの村を手に出来るんじゃないか?」なんて考えてたかもしれんな。

 とらぬ狸の皮算用お疲れさま。

 

「兄様」

 

 切なそうな顔で俺を見上げてくる弟の頭を、わしゃわしゃとかき混ぜてやる。

 気が向いたらまた来い。お前ならいつでも歓迎だ。

 

「はい・・・」

 

 うつむいた拍子に懐から折りたたんだ紙がこぼれ落ちる。

 これは・・・

 

「あ、何でもないです! 何でもないですからね!」

 

 慌てて紙片を拾って懐に隠すヘルム。

 その反応で中身に見当が付いた。

 恐らく紙を開いたら日本語でこう書いてあることだろう。

 「まつとしきかば いまかえりこむ」。

 地球では迷い猫が戻ってくるようにとのまじない、こちらの世界では猫に限らず、誰かに戻ってきて欲しい時にするまじない。

 俺自身がこいつに教えたことだ。

 残念だがその願いには応えてやれない。俺の居場所はもうここなんだ。

 馬車から顔を出して手を振る弟に、俺はその姿が消えるまで手を振り返してやっていた。

 

「カエラ様」

 

 フジの声に振り向く。

 シルとジューニャとタチバナもそこにいる。

 

「ケイトー様がお呼びです。ダンジョン入口の工事についてご相談したいと」

 

 ん、わかった。

 頷くとタチバナが一歩前に出た。

 

「私も昼には発ちます。息子たちは先に行かせました。

 王都の情報収集について、ロウ様にお任せっきりにするわけにも参りませんので」

 

 そうか、また寂しくなるな。

 そう言うと、タチバナはもう一歩進んで俺の頬に唇を当てて来た。

 

「お呼び頂ければすぐに参ります。タチバナはあなた様のものですもの」

 

 ああそうだ。

 フジもシルもジューニャも俺のもの、俺の所有物だ。お前らそれを忘れるなよ。

 

「はい、カエラ様」

「もちろんなんだよ!」

「私もカエラくんに隷属していますので」

 

 笑顔で頷く三人。

 何となく照れくさくて彼女たちから目をそらし、大きく伸びをした。

 あの家を出てからまだ数ヶ月だが、随分と色々なことがあった。

 これから先はいいことが待っていると信じたい。

 さて、仕事だ。この村は――この俺も、まだまだ発展途上なんだからな。

 

「「「「はい!」」」」

 

 俺の愛すべき所有物(おんな)たちの声に背を押され、俺は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

「全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~」

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、あの隷属契約書が母様の術で光るだけの紙だって、カエラ様いつ気付くでしょうか?」

「さあ? 一生お気付きにならないなら、それはそれでいいんじゃないかと思うけど。

 どうなるかしらね、ふふふ」

 

 

 

 

 

・・・END?




ここまで読んで頂きありがとうございました。
終わりじゃないぞい、まだまだ続くんじゃ。

ラストの落ちですが、これ第一話にもってった方が良かったなと思って途中で第一話の方に追加しております。
でもそれだと最初から読んで頂いた方々には分からないと思うのでしばらく残しておき、いずれ削除する予定。
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