全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第四話 光る剣

 パラパラと、紙をめくる音が響く。

 翌日、俺は村長の屋敷で書類をチェックしていた。

 領主の館もどきに泊まりはするが、人別帳やら徴税記録やらあれこれの記録はこの家にあるので、取りあえず仕事はここでやるしかない。

 とは言え、二百人くらいしかいない村である。数時間でチェックは終わり、後は村を案内して貰うことにした。

 と、言ってもどこを回っても似たような赤茶けた畑と点在する家ばかり。

 代わり映えしない風景だなあ。

 

「まあ、開拓村なんてどこも似たようなものだとは思いますが・・・」

 

 水は問題ないんだな?

 

「はい、ご覧の通り大きな湖がありますので。魚も獲れます」

 

 畑は増やしてるのか?

 

「西側の荒れ地はクワを入れるのも一苦労ですし、森を少しずつ切り開いて畑にしております」

 

 とは言えその森もそこまで豊かな感じではなさそうだからな。取りあえず「野盗」から剥いだあれこれをいくらか使って肥料を買うか。

 後農法も調べて、必要なら手を入れんと。

 

「そう言う事でしたら、丁度いい肥料がありますよ。

 農業書も何冊かは揃えてきましたが、いかがでしょう」

 

 後ろからかかった声に、俺達は一斉に振り向いた。

 いやまあ、俺とフジは最初から気付いてたが。

 

「お久しぶりです、若様。フジさんも」

 

 笑顔で一礼したのは、行商人風の若い男だった。

 こいつはロウ・アイランド。見ての通りの商人なのだが・・・何でこんなところに?

 元許嫁の家が運営してる商会の若手で、優秀だがムラッ気があるのが玉に瑕とか言われてたが、どうした。何かしくじってドサ回りに左遷されたか?

 

「いえ、若様が辺境の村の領主になると聞きましてね。

 慌てて馬車を調達して追っかけてきた次第ですよ」

「・・・まさか、商会を辞めてこられたのですか?」

 

 唖然とするフジ。

 

「もちろん。若様が一国一城の主になる。ニシカワ家ではもう食い込む余地がありませんが、ゼロからの出発となったら取引独占も夢じゃない。

 そうなればリターンは莫大なものになるでしょうね」

 

 ちょっとあっけにとられた後で苦笑する。

 それは俺の領地経営が大成功するのが前提だろう? ずっと貧乏開拓地かも知れないぜ。

 

「さあ、どうでしょうねえ」

 

 にやにやするロウ。随分と自信ありげだな?

 

「さてね。ですがバクチってのは、分が悪いほどリターンが大きいんですよ。

 シル様(俺の元許嫁)にはお世話になりましたが、どのみちあそこであくせく働くのは飽き飽きしてたんで」

 

 どう見てもギャンブラーです、ありがとうございました。

 

「と、いうのは理由の半分でして」

 

 お?

 

「実はね、シル様に頼まれたんですよ。開拓村の立ち上げなんてお金がかかるんだからサポートしてやってくれないかって。餞別に結構な額の金貨と宝飾品も頂きました」

 

 マジか。

 フジと一緒に目を丸くする。

 

「まあ『どうせお前はそのうちやめるんだから、今のうちから食い込んでおけばリターンも大きいよ』とも言われましたがね」

 

 くっくっ、と笑うロウ。

 シルの言い方がおかしかったのか、商会やめることを見抜かれてたからか、多分両方だろう。

 

「内助の功、だそうですよ。愛されてますね」

 

 無言で肩をすくめると、またロウは笑った。

 

「で、話を戻しますがどうです。肥料に干し魚と油かすを三十樽、それにこの土地に適した農業書をいくらか。オリジナル印ですよ」

「用意のいい方ですね・・・」

 

 フジの呆れた声にも、ロウの笑顔は揺らがない。

 

「需要を先取りするのがデキる商人ってものでして。で、どうします? 初回って事で今回はタダにしておきますが」

 

 ここまで来ると最早苦笑するしかない。

 オーケー、貰おう。うちの御用商人の座はお前のもんだ。ついでにあれこれの下取りも頼む。

 

「毎度!」

 

 ロウが輝く笑顔で頷いた。

 

「それじゃ荷物を下ろしてきますよ。村長さんの家でいいですか?」

 

 村長に確認をとってから頷く。

 

「では失礼」

 

 そう言えば村長、この村で今困ってることとかないのか?

 モンスターとか。

 

「はい、まさにそれをご相談しようとしておりましたところで。

 ゴブリン程度なら村の若い衆でも何とか追い払えるのですが、この近辺のどこかにワイバーンの巣があるようでして。

 時折やってきて家畜を・・・」

「ひえっ!?」

 

 遠くからロウの悲鳴が聞こえた。

 振り向いた瞬間、風圧。

 巨大な影が俺達の上空を通過していく。

 俺の目はそれが翼竜のようなシルエットを備えた、体長15m、翼長30mほどの爬虫類じみた生物であるのを捉えていた。

 

 飛竜(ワイバーン)

 この世界を形作った「黄金の虹竜」の遠い子孫である亜竜の一種。

 右足には悲鳴を上げるロウをわしづかみにしている。

 しかしでかいな!? 俺の読んだ書物ではせいぜい体長5m、全翼長10mほどと書いてあったぞ!

 村長、ここのワイバーンはあんなでかいのか!

 

「い、いえ! 私もあのような大きなものは・・・!」

 

 通り過ぎたワイバーンはそのまま飛び去るかと思いきや、Uターンしてこちらに戻ってくる。

 もう片足で掴める分を持ってこうって腹か。その欲張りが命取りだと教えてやる。

 フジ、畳を出して村長を守れ。

 それから・・・

 

「ちょっと待って下さい! あれは今まで一度も成功してないでしょう!?」

 

 ままよ、だ。ここで負けるようならそこまでだ。

 こいつくらいあしらえなけりゃ、この先どうにもなるまい。

 

「・・・わかりました。ご武運を」

 

 迫り来る翼長30mの巨鳥。まるで空が落ちてくるようだ。

 抜いた西川正宗を大上段から背中に担ぐ。

 高い音を立て、刃が振動し始めた。

 やれるかな、と。

 

(疑念は即ち失敗に通じる!)

 

 まだ俺のことを可愛がってくれていた頃の祖父の声がする。

 思わず笑みがこぼれた。

 その通りだな。

 自分で言ったじゃないか、こいつくらいあしらえなきゃどうにもならん、と。

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!」

 

 ワイバーンが急降下してくる。

 ドップラー効果で甲高く聞こえるロウの悲鳴。

 シェルター状のタタミに隠れたフジと村長は無視し、俺に一直線に向かってくる飛竜。

 

「キエェェェェェェェェイッ!」

 

 裂帛の気合いと共に俺の剣が光った。

 そのまま剣から光が延び、振り下ろされる。

 光の帯が正確にワイバーンの正中線をすり抜けた。

 

 左足の爪で俺を狙っていたワイバーンは、俺を襲うことなく上空を通り過ぎていく。

 俺の後ろで重い墜落音が「ふたつ」した。僅かに遅れて軽い墜落音。

 振り向く。

 

「は、はあっ、はあっ・・・!」

 

 まず視界に入ったのはフジの出した畳表・・・つまりゴザの山の上で荒い息をつくロウ。

 そして真っ二つに斬り割られてその向こう側に墜落した、巨大なワイバーンの死骸だった。

 ・・・人間、追い詰められると力が出るもんだな。

 まさしく火事場のクソ力か。

 

「い、いったい何が・・・?」

 

 畳シェルターから顔を出し、絶句する村長。

 こいつはフォノン・メーザー。

 振動を収束して放つ、何でも切れる刃さ。




フォノン・メーザーは言ってみれば音波のレーザー。
魔法科高校の劣等生の方ではなく、ガメラの怪獣ギャオスの超音波メスのイメージですね。
真っ二つにされるのがワイバーンなのもギャオスリスペクト。
ガメラを苦しめた超音波メスで、今度はワイバーン(ギャオス)が真っ二つになるのだw
ちなみにこの武器、概念自体は結構昔からあったらしくガンダムのゾックとかが装備してたり、もっと古い「8マン」でも最終兵器として登場したりしてます。
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