全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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登場人物紹介

カエラ ニシカワ伯爵家を追放された元嫡子。オリジナル冒険者族(転生者)のサムライでマット村の領主、飛竜殺し。《波の加護》を持つ。通称カーヴェ。
フジ 冒険者族(転移者の子孫)のニンジャメイド。《畳の加護》を持つ。ヒロイン。
シル 商人と貴族の二足のわらじを履くマリネスキー男爵家の次女。写真記憶の持ち主で商売と事務仕事に長け、愛の神(アルリカ)の司祭位も持つ才女だが幼児体型。《そろばんの加護》を持つ。ヒロイン。
ジューニャ エルフの大魔術師(ウィザード)。広範な知識と隔絶した魔力を持つが初歩の呪文しか使えない。容姿も性格も完璧だが度を超した酒好き。《汗の加護》を持つ。ヒロイン。
タチバナ カエラの乳母でフジの母。《光の加護》を持つ腕利きのニンジャ。ヒロイン。
ヒョウ、レイ フジの双子の兄。《双子の加護》を持ち、離れていても意志疎通が出来る。
ケイトー 伯爵家からついてきたカエラの家臣団筆頭。
ロウ・アイランド 元マリネスキー商会所属で、現カエラの御用商人。商売をギャンブルのように楽しむ性格破綻者。

ニムバス 傭兵団「真紅のオーガ」団長。
ナイ 「真紅のオーガ」の副団長的人物。ハゲヒゲの巨漢。
ハーラ 「真紅のオーガ」の裏方を取り仕切る中年女性。あだ名は「女人喰い鬼(オーガレス)」。
ジロー・カーター 宮廷官僚の次男で冒険者族。カエラの旧友。

ケンシン・ニシカワ 伯爵家現当主でカエラの祖父。
ゲルタ・ニシカワ 伯爵家の後妻でカエラの義理の母。カエラを追放した首謀者。
ヘルム・ニシカワ カエラの腹違いの弟。母と違ってカエラとも仲がよい。



第二巻 火界の鬼姫
第一話 傭兵団


 ダブルエッジの起こした迷宮暴走(ダンジョン・スタンピード)から二ヶ月、夏もそろそろ終わろうという頃。

 村にやってくる冒険者が増え始めた。やってくる連中に上げ膳下げ膳でサービスして良い評判を持ち帰って貰った結果だろう。

 レンタル火炎槍とか耐火装備とか火矢クロスボウとか、マップとかダンジョン内のモンスターの一覧とか格安豪華料理宿泊所とか。

 ダンジョンモンスターの生態調査や安全地帯の設置、宿屋の建設と従業員の教育、突貫工事でやったかいがあった。まあ宿屋とか作ってくれたのは大工の人達だけど。

 

 ちなみにやってくる連中が一様に目を見張るのが、春に植えた麦が地平線まで青々と続き、風にそよぐ光景だ。

 連中の大半も農村出身だから、これだけ広い畑の凄さはわかるのだろう。

 (なお一気に作付面積が増えて水が足りなくなりかけたが、ジューニャの《水生成(クリエイト・ウォーター)》で事なきを得た。やはり便利な女である)

 ダンジョンだの酒だのも重要だが、やはりここは農村である。

 金貨より金鎚よりまずはパンだって誰かスーパー皇帝っぽい人が言ってた。気がする。

 閑話休題(それはさておき)

 

 仕事の合間にフジとシルを連れて散歩してると、また一団の冒険者たちが馬車でやって来た。

 冒険者と言うより傭兵団みたいな感じだな。坊さんやそれっぽい女たちまでいる。

 実際この世界だと冒険者と傭兵の違いなんてあってないようなもんだ。

 もちろんどっちかを専門でやる連中もいるが、戦争やゴブリン討伐はいつでもやってるわけじゃないし、ダンジョンも「おいしい」ダンジョンというのは意外に少ない。

 仲間を失った冒険者パーティが傭兵団に身を投じたり、傭兵団が戦間期の小遣い稼ぎにあれこれ依頼を受けたりダンジョンアタックしたりするのは珍しい光景ではなかった。

 

 ちなみに第三の選択肢として山賊というのもあるが、地球と違ってそう言うのは大体長生き出来ない。

 山賊が稼げる人通りの多い街道だと商人たちや領主や都市の盗賊ギルド(!)が金を出して冒険者を雇い、討伐する。交易を邪魔されるのはダイレクトに収入に響くからな。

 軍隊は動かすと金がかかるが、手ごろな価格で動かせて山賊くらいなら討伐出来る「冒険者」という小規模傭兵部隊がいるのが、地球の中世との大きな違いだ。

 ちなみにさびれたところで山賊をやると、大体野性のゴブリンやらオーガやらに食われて終わるそうな。ナムアミダブツ。

 

 後は日本人の影響も大きいかも知れない。

 豊かで平和な国で育った俺達は、この世界から見ればお人好しの呑気者だ。

 そういう連中が強い力を持ってやってくると、秩序を保ち犯罪を抑止する方向に無意識に動く。

 警察に相当する組織が既にあったり、山賊は割に合わないという考え方が強かったり、交易の重要性が何となく理解されてたり、そうした社会レベルの地道な上昇が治安の維持に一役買っているんじゃないかと思っている。

 

「おはようございます。ダンジョンに挑戦する冒険者の方々ですか?」

 

 そんな事を考えている間に自警団の兵士が冒険者の一団に声をかけた。

 敬語である。ちゃんと挨拶するのである。

 兵士ってのはとかく横柄になりがちだが、そのへんは俺自ら厳しく教育した。

 何と言っても冒険者はお客様なんだからな。気持ちよく働いて貰わないといかん。

 トラブルは無い方がいいに決まってる。

 

「はい、『真紅のオーガ』団です。手続きは私が」

 

 馬車から出て来たのは修道士らしい僧服の男。

 意外に思うかも知れないが、傭兵団に僧侶がいるのは良くあることだ。

 魔法が使えない場合がほとんどだが、知識人なので契約手続きとか経理とか、事務処理を一手に引き受けてるのだ。

 

「わかりました。あちらの事務所へどうぞ。簡単な登録手続きをします。他のみなさんは受付の外でお待ち下さい」

 

 そこで兵士が俺達の方に視線をチラリ。

 

「一応念のために申し上げておきますが、もめ事は起こさないで下さいね。

 領主様のお出ましを願うことになりますから」

 

 これも俺が教育したことだ。

 さっき言ったことと矛盾するようだが、冒険者やら傭兵やらは脳筋の荒くれ者だから、丁寧に応対するとこちらを舐めてくる奴が一定数いるのだ。

 「竜殺し」の俺という鬼瓦をちらつかせる事で、あちらにも大人しくなって貰う。

 こちらの応対は丁寧に、あちらも丁寧に。ついでに村人も丁寧に。三方ヨシ!

 

「ははは、それは存じておりますよ。

 わたくしどももあの巨大な飛竜の死骸は見ましたからね。度肝を抜かれましたよ」

 

 うんうんと頷く傭兵団の面々。こちらに畏怖の眼差しを向けてくる奴もいる。

 良い傾向だ。繰り返すが余計なトラブルがないに越したことはない。

 互いに敬意を払うのが重要だ。

 

「冒険者もやってる傭兵団なんだよ。30年前隣の国の戦争で名前をあげて、今は代替わりしてるの。腕が良くて、重要な商隊の護衛を高額で頼む事があるって」

 

 へえ。さすがにシルは博識である。

 しかし「真紅のオーガ」か。

 

(大きくなったら冒険者になって一緒にダンジョンに挑むんだ!)

(オレは騎士! お前はサムライ!)

(約束だぜ!)

 

 ・・・。

 

「カエラ様? いかがされましたか?」

 

 いや、ちょっとな。

 昔の友達を思い出しただけだ。

 どうしてるだろうな、あいつ。

 どこかで元気にやっててくれればいいが・・・。

 遠い目をしてると、向こうからジューニャがズンズンと歩いてくるのが見えた。無視していたが、俺の目の前で立ち止まって睨んでくるので、嫌々視線を向ける。

 

「カエラくん。お話があります」

 

 アーアーキコエナーイ。

 綺麗な思い出にふけっているのに汚い話で邪魔するな。

 

「その汚いものを私に飲ませたのはカエラくんですよねえ!?」

 

 必要だったんだよ。

 高級酒が飲めただろ、それでチャラにしとけ。

 

「できますか!」

 

 じゃあ、あれをもう一本飲ませるから来年も頼むと言ったらどうする?

 

「ぐっ?!」

 

 面白い顔で固まるジューニャ。

 

「そこで悩むから先生は駄エルフなんだよ」

「うぐぅ」

 

 外見幼女の言葉が鋭いナイフとなって飲んだくれの胸に刺さる。

 俺とフジが顔を見合わせ、同時に肩をすくめた。

 

 ・・・ん?

 視線を感じて振り向く。

 馬から降りた真紅の甲冑の戦士。頭をすっぽり覆ったフルヘルムには牙を剥いた鬼の顔と角があしらわれている。

 

「『赤鬼の』ニムバスって言って、『真紅のオーガ』の団長だそうなんだよ。いつも鎧を着ていて、中身はおろか声を聞いた人もいないんだって・・・あ、ちょっとカエラちゃん?」

 

 シルの話を最後まで聞かず、俺は歩き出していた。

 こちらに気付いた傭兵団の荒くれ達が、恐れるように分かれて道を譲る。

 開いた道の先には傭兵隊長。

 

「・・・」

 

 無言で再び視線を向けてくる赤の戦士。

 おまえ・・・エフティか?

 

「!?」

 

 「赤鬼」の体が激しく震えた。




>誰かスーパー皇帝っぽい人が言ってた。
Civ4スパイ経済の人、通称スパ帝。
言ってないが誰か言ってた。

>第三の選択
洋の東西を問わず中世は戦時の傭兵=平時の山賊です。
日本だと野伏せりとか野武士とか言われる連中。
この辺は「ホークウッド」という漫画に詳しい。
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