全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
第八話 友遠方より来たアル
「ヨークの船乗りロビンソン・クルーソーの生涯と奇妙で驚くべき冒険:彼はアメリカの海岸、大河オロノコ川の河口近くにある無人島で、たった一人で28年間生き延びた;難破によって岸に打ち上げられ、乗組員は彼を除いて全員命を落とした。そして、最終的には海賊によって驚くべき方法で救出された。」
――「ロビンソン漂流記」――
「ダンジョン管理登録官ですか?」
「ああ、国の機関で、ダンジョンの簡単な審査と登録をするところなんだよ。まあ書類上のやりとりをちょっとするだけだからどうってことはないんだよ」
数日後。溜まっていた仕事を片付けてるとそんな話が聞こえて来た。
ちなみに「ダンジョンの出口までいけるなら、もっと遠くまでいけねぇの?」というエフティの意見を取り入れて実験してみたら、村のすぐ近くまで普通に転移出来た。
何これすごい。
どういう事でしょう、教えてジューニャ先生!
「そう言う例は一つ聞いたことがありますね。その時はダンジョンがその近辺の地下まで延びてたらしいんですけど」
マジか怖い。
あるいは
「ああ・・・可能性はありますね。モンスターというのはダンジョンの分身のようなものですから。ダンジョンの力がこの辺にまで染みついてるのは有り得る話です」
まあ気軽にダンジョンと行き来出来るようになったのはベネだ。
これまでは《加護》全開でも往復一時間かかったからな。
そう言う訳で、エフティが地上に戻ってくる今日は領主館での晩飯に誘っている。
結局のところ中層でガンガン誘爆させてるほうが効率がいいって言うんで、そんなに深くまで潜らないようにしてるし。
エフティは暴れられなくてちょっとご不満のようであるが、修道士の人とナイのおっさんが収益を見て泣きながら抱き合ってたので何も言えないらしい。
それでシル、管理登録ってのは何すればいいんだ?
大体ダンジョンってのは見つけた人間か領主のもので、こればかりは国も迂闊に介入出来ないはずだが。
「その通りなんだけど、どこにダンジョンがあるか知っておかないと、いざというときに困るからなんだよ。
私が聞いた話では最低限場所と名前と管理者――つまりカエラちゃんだね――を登録すればいいらしいけど、詳しい情報があればあるだけ喜ばれるみたいなんだよ」
そうなると、攻略のしおりを渡せばそれで終わりか?
「多分。私も実務は知らないけど、法律の条文だとそれで十分なはずだよ」
さすがは六法全書を暗唱出来る女、頼りになりすぎる。
まあここでは慣習法もかなり幅を利かせているんで頼りっきりって訳にもいかないが。
それで到着はいつだ?
「先触れの方によりますと、順調なら今日明日と言うことでした」
この世界鉄道も自動車もないから旅は遅い。悪天候とか川の氾濫とかで足止めを食うことも普通にある。
まあのんびりと待とう・・・
「領主様。ダンジョン・・・ええと、ダンジョン管理登録官の方がお着きになりました」
マジか。
「カーヴェ! 久しぶりだなあ!」
ジロー? ジローかお前?!
驚いた事に、監督官としてやって来たのは俺の旧友だった。
ジロー・カーター。
うちと同じ冒険者族で宮廷貴族の次男。
こちらは領主貴族、あちらは官僚の家だが、同じ冒険者族って事で代々家族ぐるみの付き合いがある。
「ジロー」って名前も冒険者族だから日本人っぽい名前ってことでうちの祖父が名付け親になったのだ。
ちなみに俺に「カーヴェ」という愛称をつけたのもこいつである。
「お、フジちゃんにシルちゃん! ええと、そっちはジューニャ先生だっけ?」
「お久しぶりでございます、ジロー様」
「元気そうで何よりなんだよ」
「ああー、カエラくんのお友達ですか。立派になられましたねえ」
互いの家に遊びに行く事も多かったから、こいつら三人とも顔見知りだ。
と、そこでジローが首をかしげた。
「あれ? ジューニャ先生やめたって聞いたけど、お前についてたのか?」
「え、その、それは・・・」
言いよどむジューニャ。
別に隠す事はないだろう。身を持ち崩して俺にたかりに来たので雇ってやったんだ。
「カエラくぅぅぅぅん!?」
俺の襟元を掴んでガシガシ揺する駄目エルフ。
どうせそのうちお前の本性はばれるんだ。早いとこゲロったほうが身のためだぞ。
お前もそう思わないか、ジロー?
「お、おう・・・」
なんだ、引いてるな?
「いや、噂は本当だったんだってな・・・」
噂?
「お前、方々の美人どころを集めて首輪をはめて奴隷にして、日夜酒池肉林の限りを尽くしてるって・・・」
待てい!
真実を知らぬものは想像のみにて他人を推し量り、ありもしない事実を紡ぎ出す・・・人それを妄言という!
それはともかくどこで聞いたそんな話!
フジは昔からのお付きだしシルは婚約者だし、ジューニャ先生は村の学校その他で働いて貰ってるだけだ!
「本当か? 本当にそれだけか~?」
じとっとした目。
こいつ、信じてやがらねえ・・・!
「どう見ても距離感がな・・・ご婦人方、そのへんどうなので?」
「カエラ様がそうおっしゃるならそうなのでございましょう」
「私は婚約者! 婚・約・者・! なんだからね! 何をしてても問題ないんだよ!」
「知りません。カエラくんは意地悪ですし」
こいつら・・・!?
実際そう言う関係になってるのは事実だから、強く否定もしづらい。
ま、まあとにかく入れよ。仕事があるだろ。
「・・・まあ、そうだな」
ちっとも信じてない顔でジローが言った。
「やっぱり酒池肉林じゃねえか!」
ジローが壁に拳を叩き付ける。
血涙を流すその視線の先には、それなりに着飾って化粧もしたエフティ。
ドレスや装飾品は娼婦のお姉さんたちのものだろうか、かなり気合が入っている。
違うんだ! お前と同じで古い馴染みなんだよ! 俺だって甲冑姿で来ると思ったのになんでオシャレしてるんだよ!
「い、いや、ハーラとか姉さんたちがお呼ばれしたんだからちゃんとしたカッコで行けって・・・ナイのおっさん達もお前の機嫌損ねたらダンジョン締め出されるから心証良くしておけって・・・後さすがにオレでも甲冑はねえよ!」
「ほらな!? ほーらな!? 取引をテコにして肉体関係を迫る汚いやり口だ!」
ええい、凄まじく人聞きの悪い事を抜かすな!
お前だって婚約者がいたろう!
「フられたよ! 『宮廷貴族の次男より、領地持ちの子爵夫人の方がいいに決まってるでしょ』だとさ!」
お、おう。そうか・・・お前も辛かったんだな。
「ええい触るな裏切者!」
お前が勝手に裏切られたんだよ!
「この野郎! いや、彼女がお前の女じゃなくて親友だってんなら、俺が口説いても問題ないよな?! なあ!」
それはまあ・・・そうなるか? もやっとはするが・・・
「あ、悪いけど無理。弱っちそうだし」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおお!」
先の先を取ったエフティによる、無慈悲な攻撃。
口説き文句を口にすることすら出来ないまま、我が友ジローは轟沈したのであった。
冒頭の言葉はロビンソン漂流記の原題まんま。
なろう系タイトルの元祖だな!
>人それを妄言という
パァァァァイル・フォォォォウメイションッ!
ロム兄さん風のあれではあるが、文言はオリジナル。