全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第十話 魔獣戦線

 トンネルを抜けると、そこは雪国だった。

 どこかの名作小説の書き出しではないがそんな感じだった。

 視界が光で覆われ、ついで暗黒がやってきた。

 そして再び世界が開けたとき・・・そこはジャングルだった。

 

 ザザーン・・・ザーザザン・・・ザザーン・・・ザーザザン・・・

 

 そして木々の切れ間から見えるのは白い砂浜と見渡す限りの青い空、青い海。

 あなたはこう言いたいのでしょう。ココはどこだ!

 

「カーヴェ?」

 

 エフティ? 無事だった、か・・・

 

「・・・」

 

 互いの姿を見て固まる俺達。

 今まで気付かなかったが、どちらも生まれたままの姿で・・・

 

「うわああああああああああああ!?」

 

 うわああああああああああああああ!

 

「馬鹿、向こう向けっ!」

 

 はいっ!

 

「なんで素っ裸なんだよ!?」

 

 お前だってそうだろ!

 ・・・それはそれとして、この現象には心当たりがないでもない。

 

「どういうこった?」

 

 ダンジョン・コアだよ。

 あれを精神力で支配した人間がダンジョンマスターになるんだが、その前に精神世界に引きずり込まれて精神力を試される。

 

「ああ・・・けどよ、もうあれはカーヴェが支配してたんだろ? その状態でも人間を引きずり込むのか?」

 

 それはわからんが、ここに来る前に積み石があったろう。

 あいつらここを目指していた様に見えたし、「俺達の勝ちだ」とも言っていた。

 あれが古代魔法文明時代の遺跡で、ダンジョンコアとなにがしかの反応を起こしたんだとしたら・・・

 

「そのせいでオレ達も引きずり込まれたって事か」

 

 多分な。

 取りあえずはフジたちと合流しなきゃだが・・・お前何も持ってないよな?

 

「見ての通りだよ・・・いや、見たら殺すけど」

 

 どっちだよ。

 

「うるせえよ! ともかく精神世界ってこんな風にすっぽんぽんになるもんなのか?」

 

 いや・・・前に入ったときは、その時着ていた服とか刀とか持ち込めたんだが・・・

 

「じゃあなんで今回こんな事になってんだよ!?」

 

 知らんわ! まあともかくナイフの一本もないのは痛いな。

 あれば木の幹から繊維をとってヒモくらいは作れるんだが・・・

 

「・・・ナイフがあればいいんだな?」

 

 持ってるのか?

 

「いいからやり方教えろよ。後こっち見んな」

 

 あ、ああ。

 まずそこの木の表皮を剥がして・・・

 あれこれ説明すると後ろからザクザクという音が聞こえた。

 ・・・何やってるんだ? まさか角で?

 

「いいから見るなっ!」

 

 拳ほどもある石が凄い勢いで飛んできて、近くの木の幹にめり込んだ。

 物わかりのいい俺はそのまま後ろを向いていることを選択する。

 しばらくザクザクという音が続き、波の音がそれに被さる。

 本当に何やってるんだお前?

 

「聞くな。後振り向いたら殺すぞ」

 

 とは言ってもな。この状況だ。何か俺の知らない隠し球を持ってるなら教えて欲しいもんだが。何か教えられない理由でもあるのか。

 

「そっ、それは・・・」

 

 ザクザクやってた音が止まる。響くのは波の音のみ・・・ん? なんだ。このゴロゴロ鳴るのは・・・違う、これは!

 音のした方に振り向くと、果たしてジャングルから虎が出てくるところだった。

 のっそりと近づいてくるそれは3m近くある。

 幸い俺には《波の加護》がある。刀はなくとも接触出来れば、ガイア・インパクトで確殺する自信はある。問題はエフティだが・・・ん? んんんんんん?

 ちらりと見たエフティの右手人差し指からは、湾曲した鎌のような鋭い鉤爪が生えており、豊かな臀部と太い足の付け根にはもう一本、足と同じ位太い・・・しっぽ!?

 こちらの視線に気付いたエフティが、一瞬で真っ赤になる。

 

「見るな馬鹿ァッ!」

 

 涙目のテールスイングが側頭部にクリーンヒットし、俺は脳震盪を起こして倒れた。

 虎? エフティが拳一発で頭を砕いて倒してくれましたが何か?

 

 

 

 にしてもこの状況で味方を攻撃するのはどうかと思うんですがねえ・・・

 

「見るなって言ったのに見るからだろ!

 ・・・それで、これからどうするんだ」

 

 ここにお前が剥いで俺が海で洗って来た虎の毛皮があります。

 爪で適度に切り分けて穴を開けて、俺がほんのりガイア・インパクトで柔らかくした木の皮の繊維を糸みたいにしてだな・・・

 

 あれこれやって、なんとか服らしきものを手に入れた。

 俺は虎の皮の腰巻き、エフティはビキニである。

 虎皮ビキニの鬼娘・・・うっ、頭が!

 しかし・・・

 

「見るなっつってんだろ!?」

 

 再びのテールスイングを、今度は余裕を持ってスウェー回避。

 ふふふ、サムライに同じ技は二度通じない。これはもはや常識だ!

 と言うか何だそりゃ?

 

「わかんねえよ。

 気がついたらこんな風に、色々な動物になれるようになっててさ・・・けどうまく戻れなくて、お前には見られたくなくて・・・」

 

 言われてみれば、肌にうっすらと鱗の模様が浮かんでいる。

 参った。男ならこんな時「外見なんか気にするな」って必殺技が使えるんだが、こいつこれでも女だからなあ・・・んー。よし、これでいこう。

 

「・・・なんだよ?」

 

 まあ余り気にするな。その尻尾はお前の太ももと同じ位太くてセクシーだぞ。

 

「死ねっ!(怒)」

 

 頑張って考えた慰めの言葉は通用せず、俺は初見の頭突きを食らって目の前に星が散ったのであった。

 ちょ、首相撲からの膝蹴りはやめて!

 

 

 

 まあそれはともかく、具体的にはどういう能力なんだ?

 

「やだ。教えねー」

 

 やだ、ってお前なあ・・・いや恥ずかしいのは分かるが、この状況じゃ、手札はあるだけ把握しておきたい。

 ニホンの書物にもある。「彼を知り己を知れば百戦するとも危うからず」だ。

 お前だってよく知ってる団の連中じゃなくて、手の内を知らない見ず知らずの連中と一緒に戦ったら実力発揮出来ないだろ?

 

「それは・・・そうだけど」

 

 頼むよ。俺達が生きて帰れるかどうかがそれで決まるかも知れないんだ。

 そう言うとエフティは溜息をついた。

 

「お前、昔から本当に口がうまいよなあ」

 

 相手を説得するために出来るだけたくさんの材料を集めてるだけだよ。

 戦う前に兵力を集めるのと変わりない。

 

「わかった、わかったって! いいよ、何でも聞けよ!」

 

 すまない。それじゃ行かせて貰うぞ。

 動物なら何でもコピー出来るのか? 一度変身すると元に戻るまで変身出来ないのか?

 

「調子次第だな。人間に戻るのが難しいだけで、別の動物に変身するだけならだいたい出来る」

 

 完全な動物の姿になったりはできるか?

 

「狼男みたいな感じが精一杯だな。大抵はこうして体の一部だけだ」

 

 その姿はトカゲか・・・あるいは恐竜か? 良く見たら歯も少し変わってるな。

 骨格も僅かにだが変化してる。

 そうだ、翼を生やして空を飛べたりするか?

 

「出来る。あんまり高くも長く飛べ・・・なくはないけどしんどい」

 

 知らない動物になったりはできるか?

 

「できるみてーだな。カモノハシってやつに変わってみろって言われて出来たことがある。まあ大笑いしやがったんでボコボコにぶちのめしたが」

 

 うんまあそりゃ怒るわ。

 それじゃ次は・・・

 

「どこまであるんだよ?!」

 

 エフティがどこかで聞いたような悲鳴を上げた。




>魔獣戦線
石川賢の漫画。
動物を体内に取り込むことで、その力を使えるようになるバイオ改造人間の話。

>虎皮ビキニの鬼娘
一世を風靡した「うる星やつら」。
実は世代ではないので詳しくはないが、親が単行本全部持ってた。
作者の人、うる星やつらからMAOに至るまで、ずっと少年漫画のヒットメーカーやってるの漫画の神に愛されすぎである。

>聖闘士に同じ技は二度通じぬ。これはもはや常識!
聖闘士星矢のフェニックス一輝のセリフ。
なお作中で最初にこの設定を使ったのも、多分一番恩恵を受けているのも彼。
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