全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第十一話 《百獣の加護》

「・・・」

 

 普段使ってない脳みそをフル稼動させたせいか、頭から煙を噴いて機能停止したエフティ。

 おーい、ほら、目を覚ませトラゴロウ。

 

「・・・はっ!」

 

 ほっぺたをぺしぺし叩いてやるとようやく再起動する。

 起きてるかー? 普段から頭使ってないせいだぞ。

 

「うるせえよ! そう言うのは大体ナイのおっさんとブーンに任せてるし・・・」

 

 事務仕事してる修道士のことだ。

 今は良くてもその二人がいなくなったら辛くなるぞ。

 せっかく読み書きとか勉強はできるんだから、出来る範囲でやっとけ。

 

「くそ、おっさんやハーラみてーな事を・・・」

 

 そう言うもんだ。団長やってんだからがんばれ。俺だって領主頑張ってんだぞ。

 

「お前は元から頭いいだろ・・・」

 

 出来ないなりにやれって言ってんの。

 

「あー、わかったわかった! それより急ごうぜ! 合流しなきゃいけねーんだろ!」

 

 逃げたな。後でちゃんと説教してやる。

 しかし《鬼の加護》なんて言ってたけど、どっちかと言うと《百獣の加護》とかのほうが近いな。きっと獣神(ガイラー)あたりの与えた《加護》なんだろう。

 

先代(おふくろ)もそんな事言ってたよ。まあ鬼よりはそっちの方がかっこいいな」

 

 個人的には某泣いた赤鬼の影響で鬼に余り悪印象はないんだが、まあ頷いておこう。

 

「それでどっちに向かうんだ?」

 

 とりあえずは山だ。あたりの地形を確かめておきたい。

 

「オーケイ」

 

 

 

 いきなりつまったな。

 

「だなあ」

 

 ジャングルで見えなかったが、陸側に歩いて行ったら十五分くらいでそそり立つ断崖絶壁に突き当たった。それも500mくらいあるんじゃないか?ってレベルの。

 

「いや、ちょっと待てよ。これおかしくねーか?

 いくらジャングルだからって、こんな高い山がすぐそばにあったら見えるだろ?

 いきなり現れた様にしか思えねーぞ!」

 

 そこに気付くとは・・・やはり天才か。

 そう言うとエフティがじとっとした目になる。

 

「お前オレを馬鹿にしてんだろう?」

 

 まさか。

 ただ、思ってたよりは鋭いなーって。

 

「殴るぞ?」

 

 殴られるのも嫌なのでまじめな話に戻ろうか。

 ここはダンジョン・コアの作った精神世界である可能性が高い。

 だから南の島のジャングルにいきなり雪が降ったり、おっさん二人がチャンバラ始めたり、兵士達が大泣きしたりするのもない事じゃない。

 

「嫌な精神世界だな・・・」

 

 まあもののたとえだ。言ってみれば夢みたいなもんだからな。

 閑話休題(それはさておき)

 お前、このくらいの高さなら飛んで上まで行けるか?

 

「んー・・・疲れるけど多分出来るな。ただ、お前もってなると難しいな。

 上からすーっと降りて来るならお前ぶら下げてても出来ると思うんだが」

 

 滑空なら行けるのか。まあそういう事なら俺は自力で上まで行くか。

 

「自力? お前これ登れるのか?」

 

 まあ見てな。

 

 

 

 数分後。

 

「お前それホントに《加護》なのか? 魔法じゃないのか?」

 

 魔法には確かにそう言うのがあるし、自分でもそう思うけどな。色々やってたら何かできた。

 

「何かで出来るのかよ・・・」

 

 本当に色々試行錯誤したからな。

 ともかく例の「くっつく」波動である。ファンデルワールス力とかそう言う奴(適当)。

 それでスルスルと絶壁を昇っている。

 両手両足が壁面にくっつくので、感覚的にははしごを登っているのと変わらない。

 ほらあれだ、アメコミで糸出したり家族や恋人がもれなく不幸になったり巨大ロボ出したりしてるクモ男みたいな感じ。最後のは違うか。

 秘印級(第二級)の身体能力をもってすれば、常人が階段を上るよりも遥かに早い。そこ、壁を這うゴキブリみたいに見えるとか言うな。

 

「くそう、こっちは自力で羽ばたいて昇ってるってのに・・・」

 

 エフティは腕を鷲のような翼にして旋回しながら上昇しているのだが、ともすればそれより早いくらい。

 俺だって自力で昇ってるのは変わらんだろ。なんだったらお前もヤモリみたいに壁にひっついて昇ればいいじゃないか。

 

「ぜってぇ嫌だ」

 

 わがままな奴だ。

 

「・・・だって、ぬめぬめした顔なんかお前に見られたくないし・・・」

 

 何か言ったか?

 

「言ってねえ!」

 

 結局、巨大な鳥に襲われたり、崖の穴から人喰いミミズが飛び出したりということもなく、無事十分ほどで俺達は崖の上に登った。

 

 

 

「・・・なんだこりゃ?」

 

 断崖絶壁だなあ。

 上に登ってみると、海際からいきなり絶壁が続いているような地形だった。

 上の方はずっと平坦な・・・でもないが、同じ位の高さで地面が続いている。

 イギリスの大陸側沿岸・・・いや、ギアナ高地かな?

 バネ足でちょっとジャンプして見てみたが、下と同じジャングルが地平線の向こうまで続いているので、少なくとも差し渡し十キロ以上はありそうだ。

 ギアナ高地で最大のテーブルマウンテンは面積が東京二十三区くらいあるらしいのでそこまで大きくないことを祈るばかりである。

 エフティも自前の翼で高く飛んでくるのはきつかったらしく、ここで少し休憩。意地張らずにイモリになれば良かったのに。

 

「いやだっつたろ! で、今度はどっち行く?」

 

 ちょっと待ってろ・・・お、ダンジョンコアレーダーに反応があった。

 距離は・・・ぼんやりしててちょっと分からんが方向は大体わかる。

 とりあえずあっちいくぞ。

 

「了解」

 

 

 

「でもちょっと思い出すよな」

 

 またしてもジャングルの中を歩いていると、いきなりエフティがそんな事を言い出した。

 何の話だ?

 

「ホラ、昔お前が話してくれた奴。

 犬神(ケイナン)の魔法の王国目指して、冒険者が南のジャングルを進んで行く話だよ。

 確か三つの試練があって、一つが9の9の9倍のライオンの群れ、もう一つが物凄く高い絶壁で・・・あと一つなんだっけ?」

 

 あー、あれか。

 日本で読んだ子供向けの話をいくつかアレンジして話してやったんだったな。

 その話は・・・えーと、多分あれだ。霧に包まれた犬神の王国。

 一度入ったら永遠に出られないって奴じゃなかったかな。

 

「あーそうだそうだ、そんな感じ。お前語り部の才能もあるよなー」

 

 まあ色々本も読んでるからな。その辺から適当にひねり出しただけさ。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「・・・」

 

 エフティがフラグ立てるから。

 

「お、オレのせいじゃないぞ!?」

 

 否定しながらも冷や汗を浮かべるエフティ。

 まあ想像は付くだろうが、ジャングルが唐突に途切れ、広い草原に出た。

 そしてそこに見渡す限りのライオン、ライオン、ライオン・・・!

 どうすんだこれ。




>目を覚ませトラゴロウ
子供向けの絵本。舞台にもなっている。内容は覚えてないが歌だけは今でも歌える。

>クモ男
あなたの親愛なる隣人スパイダーマン!
おじさんや恋人が死ぬ男スパイダーマン!
地獄の使者スパイダーマッ!
最後のもマーベルでは公式にマルチバーススパイダーマンの一人にしてる訳だし、東映も向こうの会社が使ってたショーグンウォリアーズ(ライディーンとかコンバトラーとかがアメコミヒーローズと競演する奴)公式に活用してもいいと思うんだ。

>ジャングルに雪
「南の島に雪が降る」。
元ネタはメチャクチャ重い話。

犬神(ケイナン)の魔法の王国
元ネタは「大長編ドラえもん のび太の大魔境」。
作者はこれと鉄人兵団が一番好き。
特に新大魔境のサベール隊長(小栗旬)がかっこよすぎで、原作版のギラーミン(宇宙開拓史)と同じ位好き。
でも映画版最強の敵は宇宙小戦争のドラコルルだと思うw

なお原作の三つの関門は「7の7の7倍のライオン」「降りられない登れない死霊の谷」「霧に包まれた永遠の王国」。
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