全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第十三話 アトミックバズーカ

 エフティを背負って300mほど絶壁を登った後、虎柄ビキニ鬼娘を正座させてお説教。

 それで、二回連続でフラグを立てたエフティさんは何か言うことはないかな?

 

「・・・わかったよ、悪かったって」

 

 口を尖らせてそっぽ向きながらでも謝罪は謝罪だ。まあ許してやろう(えらそう)。

 まじめな話、古代の大魔術師でなくても、ここは精神の世界なんだからな。

 ぽろっと口に出したことが本当になる可能性も否定出来ないんだ。

 

「マジかよ。ってーか、昔の魔法使いってそんな事が出来たのか?」

 

 世界を作った神様たち・・・〈創造の八神〉がまだ地上にいた頃の話だがな。

 後に昇天して〈百神〉になった神の直弟子や、それに近い力を持っていた真なる魔術師は言葉にするだけである程度現実を改変出来たそうな。言霊って奴だな。

 

「はー。んじゃ口にするだけで山と山の間に橋をかけたりとか出来たのか?」

 

 純粋な言霊の術でそこまで出来たのは言葉神(クーリエ)くらいらしいがな。それでも幸運を呼び込んだり、物事の流れを自分に都合良く改変するくらいは出来たらしい。

 元々魔術ってのは神の力を人間に扱える技術に落とし込んだものだ。

 神代の大魔術師ならそれ位は出来たんだろう。

 ともかくそう言う訳で、以後は謹むように。

 

「へーい」

 

 気のない返事と共にエフティが立ち上がり、俺達はまた走り出した。

 

 

 

 更に数時間、真昼くらいまで走り続けて到着したのは、こんもりと盛上がった山であった。

 お椀を伏せたような形をしていて、高さ1km近くはある。

 目の前には、誘うようにぽっかりと口を開けた洞窟。

 

「・・・この中か?」

 

 多分な。

 ダンジョン・コアの気配がかなり強くなってきている。

 近づいたせいか、正確な方向はぼんやりしてるが恐らくは。

 エフティ、お前明かりがなくても物が見えるか?

 コウモリとかイルカになれるか?

 

「コウモリはやった事があるな。イルカってなんだ?」

 

 海に住んでる魚じゃない魚さ。まあコウモリになれるならそっちの方がいい。

 イルカのクリック音は人間にも聞こえるからな。

 コウモリは超音波だから大概の生物は聞き取れない。

 じゃあ変身して貰って中に入るか。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 これは想定してなかったなあ・・・。エフティが小声で囁いてくる。

 

(・・・どうすんだ、これ?)

 

 時間くれ。今考えてる。

 暗い洞窟をしばらく進んだ俺達の目の前に広がっているのは洞窟の広間。

 そこにぎっしりと群れている――本当に洞窟の床面が見えない――無数の狼たち。

 

(さすがにあの数は突破する自信はねえなあ)

 

 今こちらの武器はエフティの爪や牙、俺にはエフティに切って貰った木の枝だけ。

 木の枝や素手でフォノン・メーザー斬りも出来なくはないが、「斬り」というほど収束は出来ない。収束の甘いフォノン・メーザーでは吹き飛ばすのが関の山だろう。

 天井に張り付いて移動することは出来るが、出口近辺は天井が低いので意味がない。

 数百匹の狼を、その半分としても木の棒だけで倒すのは・・・む。

 ふと思いついて、唾液で濡らした指を一本立ててみる。

 空気の流れはあるな。

 おあつらえ向きに入口から奥に流れている。

 

(お、どうした。何か思いついたのか・・・なんだ、その顔は)

 

 ・・・。

 

(おいちょっと待て、何考えてる・・・?)

 

 冷や汗を浮かべて後ずさるエフティ。

 すまんな、おまえの(そんげん)をくれ。

 

(やだ! オレやだよ!)

 

 まだ説明してないだろ!

 

(やだー!)

 

 

 

 しばし後。

 泣きそうな顔で・・・いや、ちょっと泣きながら通路で待機するエフティの姿があった。

 俺の誠意を込めた説得の賜物である。

 

(ちくしょう・・・お前絶対後で泣かすからな!)

 

 うんまあ、ひどい事言ってるのはわかってる。後で何されても文句は言わない。

 そう言う俺は外から転がしてきた大きな岩を準備している。

 こいつが行動を起こし次第、これを転がして洞窟を塞ぐのだ。

 ガイア・インパクトで崩落させることも考えなくもなかったが、さすがに危険すぎる。

 こう言う時フジがいればさっと畳で通路を塞いでくれるんだけどなあ。

 いなくなって初めてわかるアイツの便利さよ。

 ともかくエフティ。

 

(わかったよ! やりゃあいいんだろ!)

 

 号泣しながらエフティは四つん這いで広間の入口に尻を向ける。

 次の瞬間、尻から大量の液体が噴出した。

 液体は広間の入口付近に広がり、それを直接かぶった狼たちはものも言わずに倒れる。

 俺はエフティをすかさず引っ張り上げて岩を落とす。

 岩の向こうからは異臭と狼たちの悲鳴、そして断末魔の声。

 

 スカンク。

 食肉目イヌ型亜目スカンク科。

 肛門の分泌線から臭い液体を噴出し身を守ることで知られるほ乳類。

 体重1kgの小型スカンクでさえその匂いは最大2kmまで届き、あらゆる生物を苦悶させる。

 ましてや女性としては体格のいい、しかも秘印級(第二級)の身体能力と《加護》を持つエフティが全力で放ったそれだ。

 人間の一億倍の嗅覚を持つ狼が密閉空間でまともに食らえば、どう考えたって耐えられるもんじゃない。

 

 悲鳴が途切れたところで集中する。

 波動感覚で周囲の世界がモノクロームのフレームワーク世界になり、生命力の波が揺れる。

 広間に並ぶ生命力の波はいずれも非常に弱く、中には消えるものもあった。

 よし、成功だぞエフティ。お前のおかげだ。

 渾身の力で殴られる覚悟をして振り向く俺。

 

「・・・」

 

 目の前の顔を見て固まった。

 無言で、目に一杯の涙を溜めるエフティ。

 参った。激怒したこいつにボコボコにされることは覚悟してたが、これは全く予想してない。

 

「・・・」

 

 睨むでもなく、本当にただ俺を見るエフティ。

 いやその、ほら、むかついただろ? 好きなだけ殴って貰ってかまわないから。

 

「う、う、うわああああああああああああああああああああああああん!」

 

 せきを切ったように涙をこぼし、俺の胸にすがりついて泣く。

 俺に出来たのは、物凄い罪悪感と共にこいつを泣かせてやることだけだった。




果たしてヒロインにやらせていいことだったろうか・・・?(悩
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