全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第十七話 記憶したくない情報

「指揮してたのはそこのボンボンに憑いてた霊体で、俺達は下っ端なんだ。詳しい事は知らない。使い捨てにされる程度の立場だ」

 

 顔を青ざめさせて、ペラペラしゃべる使いっぱA。

 こいつらも剣士級(ベテラン)クラスだろうに、使い捨てに出来るとは中々豪気な組織だ。

 なおBにはシルの解毒呪文をかけさせたが、解毒がまだ終わってないのか、相方の話にも反応せずぐったりしている。時々痙攣してるけど大丈夫だろうなこれ?

 まあそれはいい。お前らに直接指示を出していたのは?

 

「一年前からはそいつ(ジロー)。正確には憑依してた何か。『ラダッソ』って名乗ってた。

 それより前はオルランディアと言う女だ。そいつに酒を飲ませて『ラダッソ』を憑依させた女で、俺達みたいなのを管理する立場にあるらしい」

 

 ジロー、顔は覚えてるか?

 

「ああ。髪は紫強めのワインブラウン、ゆったりしたウェーブで背中の半ばまで届いてる。

 眼はぱっちりしていてややツリ目、瞳は金色に近い琥珀色。

 まるで猫みたいで光の加減によっては赤くも緑色にもなったりしてあれアレキサンドライトの瞳って奴なのかな?

 まつげは自前だと思うが長すぎもせず短くもなく、慎ましやかに自己主張している。

 目じりにはごくごく薄くブルーシルバーのアイシャドウ。恐らくは『ヴァイセ』の結構な高級品。他の化粧もごく軽いものではあったけど高級品揃いで、ざくろ色の口紅は多分『ミヨシ』の去年の新色。白粉は『レ・シャロン』。

 鼻筋はすっと通っているが柔らかさがあってふっくらしている。

 唇も柔らかめの形をしてるんだが全体的にはきりっとした『お姉様』って感じの構成だな。

 シルバーのブドウの房をかたどったイヤリングを右耳だけにつけている。

 左耳の耳たぶ真ん中外側あたりにごく小さなほくろ。

 あごはすっとなだらかで尖っているという感じはしない。

 肩は撫で肩でも広くもなく、丁度良い感じで僅かに浮いた鎖骨がとてもセクシー。

 胸も尻も肉付きはメチャクチャいいんだが、首筋と腰はほっそりしていて、あれに匹敵するボディラインの持ち主はジューニャ先生くらいしか記憶にないな。

 服装は・・・」

 

 ・・・。

 

「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「「・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 使いっぱABを含めて沈黙する俺達。ドン引きである。

 

「なあカーヴェ・・・こいつキモくね?」

 

 全く同感だが言わないでやってくれ。今はそれに助けられてる訳だし・・・

 そういうわけでシル、これ記憶しておいてくれよ。

 

「・・・」

 

 シルがもの凄く嫌そうな顔で俺を見上げた。

 

 

 

 十分か、二十分か。

 独演会が終了すると俺達全員から一斉に溜息が漏れた。

 

「疲れました・・・」

「よくもまあ一度会っただけの女性のことでそこまで話すことがあるんだよ・・・」

 

 まあ化粧品の銘柄から靴を作った工房、売ってる店まで判明したんだから聞く価値はあっただろう・・・コラテラルダメージはプライスレスである。

 

「女性限定なら優秀な探偵さんになれそうですねえ」

 

 本人が自分の性欲を制御出来ればだがな。

 まあ今は尋問を続けよう。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 話をまとめると、こいつらは素行が悪くて傭兵団や冒険者の酒場からもはじき出された鼻つまみ者で、そこを二年ほど前に例の女に拾われたと。

 仕事は脅迫、誘拐、暴行、護衛、警備、エトセトラエトセトラ。

 殺人はやってないのか?

 

「や、やってませんって!」

「さすがにそこまで行ってたら逃げてるぜ」

 

 凄む俺、冷や汗を流すゴロツキ二名。

 ジューニャ、エフティ?

 声をかけると、エルフの魔法使いと鬼姫がくんくんと鼻を鳴らす。

 

「ええ、嘘はついてないみたいですね」

「こっちもだ。怯えの匂いはするけどな」

 

 にやにやするエフティ。

 いいじゃんかよ、舐められてたら尋問はできん。

 つまりどういう事かというと、嗅覚である。

 ジューニャは《嗅覚強化(キーン・ノーズ)》の呪文で、エフティは《鬼の加護》改め《百獣の加護》で嗅覚を犬並に強化して、生きた嘘発見器になって貰ったのだ。

 人間は感情や心の動きに応じて一定の化学物質を分泌する。

 意志の力で怯えを隠せる人間はいるが、こうした生理現象まで制御出来るのはごく一部の達人か特異体質の持ち主くらいだ。

 汗を舐めて相手の嘘を判別するマフィアの兄ちゃんもいるが、あれもあながち絵空事ではないと言うことだ。人間が実行出来るかはおいといて。

 

「・・・」

 

 なおフジがエフティの頭のイヌミミを妙にそわそわした様子で見ていたが、みんなして気付かぬふりである。メイドのモフモフ趣味を見過ごす情けが一同にもあった。

 閑話休題(それはさておき)

 

 

 

 ・・・本当に知ってることはそれだけか?

 

「それだけっす・・・」

 

 嘘じゃないだろうな?

 

「嘘ついてもバレんだろ! この状況で『飛竜殺し』に嘘つく度胸はねえって!」

「命捨てるほど金は貰ってねえっすよ!?」

 

 悲鳴を上げてジタバタする二人。

 結局黒幕が誰か、目的が何かと言う事すらこいつらは知らなかった。

 雇い主は本当に徹底して情報を与えてなかったらしい。

 

 ただ、気になる情報がいくつか。

 同じ女の下で働く連中がいて、時々組んでいたのだが、その中に「バルザック」という術師がいたらしい。しばらく前から顔を見てないとのこと。偶然かも知れないが、例の修道院で倒した中にもバルザックという術師がいた。留意はしておくべきだろう。

 

 例の赤い液体は身体能力を上昇させる魔法薬と言う触れ込みで渡されたそうだ。

 こいつらの仲間内では「ブラッド・リー」という名前で通っていた。

 ここに向かってきていたのはジローに憑依していた「ラダッソ」の指示で、とにかくダンジョンコアをここに持って来れば目的が達成出来ると言われていたらしい。

 

 つくづくあの憑依体をブッ殺してしまったのが悔やまれる。

 多分精神世界じゃないと対処出来なかったから、あそこで殺すしかなかったのはそうなんだが。

 ジューニャ、この遺跡が何か分かるか?

 

「うーん・・・真なる魔法文明の時代の遺構ではないかと思いますがなんとも。

 私たちエルフの遺跡という可能性もなくはないです」

 

 そうかー・・・

 ちなみにこの世界の歴史はおおよそ三つに分けられている。

 まず「創造の八神」が世界を作り、直接運営していた神代。

 「八神」が世界を去り、弟子の〈百神〉が昇神して、唯一地上に残った弟子筆頭が真なる魔法文明を作り上げた古代。

 魔法が衰退してそれを維持出来なくなり、崩壊してからが現代。

 

 神代の終わりに八神に代わって天に昇ったのが彼等の弟子だった真なる魔術師たち、今の〈百神〉。

 世界を運営する助手として彼等が人間を元に生み出したのがジューニャ達妖精族だ。

 なので妖精族、特に寿命の長いエルフには当時の文化が色濃く受け継がれている。

 まあそんな事を考えても仕方がない。やる事をやらないとな。

 

「では?」

 

 ああ。行きたかないが、行くしかないだろう。

 目的地は王都メットーだ。




>この味は嘘をついている味だぜ!
ジョジョ第五部のブチャラティ。
なお匂いを利用して嘘を発見する研究は実在するそうな。

>神代、古代、現代
大体神代と古代の境目が五千年前、古代と現代の境目が二千年くらい前。
なおこの世界の暦は古代の始まりである五千年前を起点としています。
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