全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第十八話 ゴローとツッキー

 俺達のもジローたち三人のも、馬は疲労困憊してたのでやむを得ず今日はここで一泊。

 フジにはひとっ走りして貰って村に経緯を伝えて貰う。

 翌日、疲れの抜け切れていない馬に生体波動で鞭打って、夕方村に到着。六頭同時に手綱握るのはさすがにつらかった。

 ダンジョン・コアでダンジョン前に移動して真紅のオーガ団の連中に事情を説明。

 エフティの装備も回収して村にとんぼ返り。

 さすがに時間も遅いので領主館に一泊、新しい馬を用意して翌朝出発。

 ちなみにケイトーに話をしたらめっちゃ恨みがましい目で見られた。

 すまん、こっちはこっちで多分凄く重要な案件なんだ――!

 戻ってきたら仕事するから!

 

「あの、それでなんで俺達が一緒に行くことになってんでしょう?」

「正直ここで放逐するなりしてもらった方がありがてぇんですが」

 

 身を縮こまらせてるのはゴロツキAとB。

 そりゃお前ら、ここで解放したら俺のいない村で何しでかすかわからんだろ。

 

「だからってねえ・・・」

「なあ」

 

 放っておいたら、多分組織から追っ手がかかって口封じされると思うがそれでいいか?

 

「一生ついていきますぜカエラ様!」

「今日から俺達の剣はあんたのもんだ!」

 

 軽っ。

 まあ自分の置かれた状況が分かったならそれでいい。

 それでジロー、こいつらなんて名前だ?

 

「いや、そう言えば俺も知らない」

 

 いい加減な奴だな・・・

 

「だって全然喋らなかったしさあ」

 

 まあいいや。お前ら何て名前だ? ゴローとツッキーか?

 

「そりゃいくらなんでもひどいですぜカエラ様!」

「そうですよ! 俺達にだって立派な名前があるっすよ!」

 

 わかったわかった。で、何て名前だ?

 

「俺はトリスタンです」

「ナポレオンッス」

 

 全員一斉に吹いた。

 こめかみに傷があるのとアゴに傷があるの、くらいでしか区別出来ないような量産型ゴロツキのくせに!

 ちなみに少し背が高めのこめかみ傷がトリスタンで、5センチくらい背の低いアゴ傷がナポレオンである。

 

「親がつけたんだからしょうがねえでしょうが!」

 

 うんまあそりゃそうだが。呼びにくいからトリスとチコにするぞ。

 トリスタンなんて贅沢な名前だねえ! 今からお前の名前はトリスだよ!

 

「うーっす」

「ちょ、ちょっと待って下さいよ。トリスはともかく、なんで俺はチコなんです?」

 

 いや、ナポレオンなんて言うからさ。

 まあチコもニホン由来の名前だ、ありがたく受け取っておけ。

 

「へえ。そう言う事でしたら・・・」

 

 この世界でニホン由来のものは何となくかっこいいという風潮がある。

 外国のものにミーハーなのは古今東西どこでも同じらしい。 

 ネーミング元が安酒(い○ちこ)なのは黙っておこう。

 

 

 

 例によって時速180kmで街道を爆走する。

 前回もそうだが、普通の旅人たちが目を丸くしてるのでそろそろ噂になってるかもしれん。

 後さっきも言ったが六頭(俺とシル、ジューニャ、エフティ、ジロー、トリス、チコ)ともなると手綱を握って波動を送るのも辛い。

 なので長い革ひもを用意して、それで何とか車間距離ならぬ馬間距離を維持していた。

 そんな事を言っているうちに最初の町に到着し、替え馬を用意して貰う。

 ジローとゴロツキ改めトリス&チコが化け物を見る目で見てくるが、これでへたれてたら後が続かないぞ?

 

 シルを助け出しにいった時同様、町ごとに次々に馬を取り替えてメットーに向かう。

 二日後、あの時のロウと同じくジローはもの言わぬ屍となったのであった。合掌。

 

 

 

「ジローの旦那はどうします?」

 

 その辺のソファに転がしておけ。

 取りあえずはこいつがいなくても何とかなる。

 

「わかりやした」

 

 前と同じ安宿。

 実のところはタチバナたち影の一族が確保してる拠点の一つで、ここなら比較的安全だ。

 

「また無茶をなさいましたねえ・・・」

「だから鍛えてない人には――」

「――あの速度はきついですって」

 

 タチバナたちも来ているが、呆れた顔だ。

 しょうがないだろ。ダンジョン・コア盗み出されて、謎の遺跡がいきなり出てきて、あのまま敵の計画がうまく行ってたら何が起こったか分からんぞ。

 

「それはまあそうでしょうが」

 

 困った様に笑うタチバナ。こいつには見透かされてそうだな。

 実際のところ俺は怒っていた。

 うちの村の宝であるダンジョン・コアの件もそうだが、何と言っても敵は俺の友人に手を出しやがったのだ。

 絶対に許さん。ぶっ潰す。

 そんな事を考えていると、肩をポンと叩かれた。

 

「お前の仇ならオレにとっても仇だ。

 ぶっ潰してやろうぜ」

 

 エフティ。

 周囲を見回すと、フジも、シルも、ジューニャも、ヒョウもレイも笑みを浮かべている。もちろんタチバナも。

 参ったな、俺そんなにわかりやすい人間だったか?

 

 

 

 なおその後間もなくジローは目覚めたが、オールヌードのミス・ヨシワラ百人だのメガトンおっぱい軍団の襲撃だの言い始めたので、エフティによって望み通り夢の世界に逆戻りした。残念でもなく当然。

 

「それで、いかがなさるおつもりで?」

 

 顔のひしゃげたジローを無視してタチバナが口を開く。

 ああ。まずは情報だ。タチバナたちとロウにも動いて貰うが、俺は・・・シルのオヤジさんのところに行こうと思ってる。

 

「ええ!?」

「それはちょっと・・・カエラちゃんでも危ないんじゃないかな?」

 

 まあな。黒幕って事も有り得る訳だし。

 ただ、情報を集めてもシルのオヤジさんが白か黒か、はっきりすることは多分ない。

 

「それはまあ――」

「――そうですね」

 

 だから、ジューニャとエフティという嘘発見器がいて、かつ恐らくは俺達がここに来ていると知られていないこのタイミングでオヤジさんを直撃するのは一つの手だと思うんだ。

 シル、どう思う?

 

「・・・」

 

 しばらく考え込んだ後、シルが顔を上げる。

 

「正直かなりのギャンブルだとは思うんだよ。

 私は御父様に必要とされてはいたけど、愛されていたかどうかは今一つ自信がないし」

 

 十六才の娘にこう言われる父親ってのも中々にアレだな。

 

「ただ、今ならカエラちゃんと私に一定の価値は見いだしてると思うんだよ。

 だったら仮に黒だとしても、交渉の余地はあるんじゃないかなって」

「どういう親父さんだよ・・・」

 

 小悪党のくせに妙に常識的なトリスとチコが引いてるが、悲しいかな、上流階級でも下層階級でも、こう言う親は一定数いるんだよな・・・。

 ともかく決まりだ。

 ジローと護衛と連絡係にレイとチコを残してマリネスキー男爵家に潜入する。

 いいな?

 そう言うと全員が頷いた。




> 千尋なんて贅沢な名前だねえ! 今からお前の名前は千だよ!
「千と千尋の神隠し」より。主人公が名前を半分奪われて支配の呪いをかけられるシーン。

>トリス
戦前からあるサントリーのウイスキー。
「トリスを飲んでハワイへ行こう」というフレーズが昔流行った。

>下町のナポレオン
焼酎「いいちこ」のキャッチフレーズ。
半世紀くらいの歴史がある有名な焼酎。安くてうまくて強い(らしい)。
ちなみに「いいちこ」は大分の方言で「ああ~いいっすね~」という意味らしいので、チコもそれ自体悪い名前ではない(たぶん)。
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