全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第六話 春は田起こしの季節です

 受けよ巨神の足踏みを! ガイア・インパクト!

 足に気合いを入れると同時に、周囲の大地が爆発した。

 直径100mほど、大量の土砂を吹き上げるその様は、さながら身長50mの巨人が大地に降り立つがごとし。

 

「うおおおおおおおお!?」

 

 歓声が上がる。

 笑顔で手を振り返すが、もうちょっとやりようがあったかな、これ。

 目や口まで土が入ったわ。ぺっぺ。

 で、何をやってるかというと開拓作業、正確には土おこしである。

 何かカッコイイこと言っているが、要するに振動を足の裏から叩き込んで、地面を粉砕してるだけ。

 ガッチガチの荒れ地を振動爆砕して、水まいて肥料まいて種まいて畑にするのだ。

 これが人力ではもちろん、牛や馬を使っても深く掘り起こすにはかなりの手間がかかる。

 五百人分となったら間違いなく数年がかりだ。それまで作物が取れないから、金だけ出ていく。

 が、俺の《加護》で地面を砕けば、少なくとも作付けだけはできる。まだ春だし最低限の収穫は出来るだろう。

 で、どうだ、村長。

 

「おお・・・まさしくカエラ様は神の如き力をお持ちでございますな・・・」

 

 そう言うのいいから。これくらいでどうよ?

 そう問うと、村長が手に持った鋤で地面をかき回す。

 

「そうですな、このくらい深く砕けていれば十分かと思います。

 後は水と肥料を与えれば、そのまま種をまくこともできるでしょう。

 石も細かく砕けておりますから、本当に手間いらずでありがたいことでございます」

 

 オーケー。ならこのまま行くか。

 

「誠にありがたいことでございます! カエラ様こそは神! 即ちゴッド!

 困窮するマット村を救うべく、地上に降り立った天使!」

 

 お目々グルグルさせて、逝っちゃった表情で拳を掲げる村長。

 この前ワイバーン倒してからこんな感じである。どうも刺激が強すぎたらしい。

 後神から天使だとランクダウンしてないか?

 

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

 

 村長に感化されたのか、後ろで見てた村民や新規開拓民まで拳を掲げて合唱し始めた。

 全員目が逝ってるので結構怖い。大丈夫かなあ、これどうにかならないかなあ。

 

「もう手遅れじゃないでしょうかねえ・・・」

 

 フジが頭痛をこらえるように呟いた。

 なおそう言うこいつも新規開拓民からは女神の如く崇められている。

 何となれば新規組の家はこいつが作ってるからだ。

 

 畳で家を作り、中に畳を何枚か敷いて食事スペースとベッドにすれば、それだけで当座の宿として機能するのである。

 やだ、この子有能・・・!

 

「まさかこんな事に使うとは思いもよりませんでしたよ」

 

 まあその辺はね、フジの鍛錬の時参考にしたのが軍の壁術師(ウォーラー)だからね。

 読んで字の如く壁を作る術師であるが、普通に戦闘時の障壁やシェルターとして使う以外にも橋を修復したり野営の仮宿を作ったり、要するに地球の工兵に相当する連中だ。

 本式の稲藁畳は藁をみっちりプレスして作ってるから防水性にも優れているし、重い分安定してて頑丈だ。こう言う構造物を作るには十分な素材と言える。

 今は体力を使い果たして休んでいるが(この世界では体力を元に魔力を練る)、回復したらまた仮設住宅の建築作業続行である。がんばれ。

 

「うー」

 

 睨まれても困るな。大体俺の方が働いてるだろ、っと。

 肩をすくめつつ、俺は大地を爆砕する作業を再開した。

 

 

 

「キエエエエエエエイッ!」

 

 渾身の気合いと共に剣から伸びた光る刃が振り下ろされる。

 それは100mほども伸び、今度は一直線に土砂が吹き上がる。

 土ぼこりが収まった後には深い溝。

 村人からまたしても歓声が上がり、拳を突き上げて合唱が始まる。

 

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

 

 だからそれはもうええっつーに。

 肥料とか種まきはともかくとして、土を掘り返した後に必要になるのが水である。

 桶でえっちらおっちら運ぶ手もあるが、水路があればその手間が大幅に省ける。

 ので、ある程度の掘り起こしが終わったら、次は水路。

 と言うわけで俺は、今度はワイバーンを倒したフォノン・メーザー切りを活用して用水路を掘削しているわけだ。

 

 え、必殺技をこんな事に使っていいのかって?

 うちの爺様なら青筋立てて怒りそうだし、フジも微妙な顔してるが俺は別に。

 むしろ戦いより平和活用した方がいいでしょ。俺は刀で刺身を作っても気にしない人なのだ。

 まあ「飛ぶ斬撃」と言えば達人の代名詞みたいなところはあるし、呆れたり脱力したりする人がいるのは理解出来るけど。

 閑話休題(それはさておき)

 

「お疲れさまでございます、若様。

 そろそろお休みになられますか?」

 

 後、二回か三回くらいは行けると思う。

 

「では後二回水路を掘ったら休息に致しましょう。

 今の水路をそのまままっすぐ伸ばして下さいませ」

 

 オーケイ。

 頷いて、俺は掘った水路の先端に歩き始める。

 地図を開きながらあれこれ指示してくれてるのは現在家臣団筆頭のケイトー。

 農地の区割りとか測量とか、そのへんさっとこなしてくれる有能オブ有能だ。

 俺もやり方自体は本で読んだが、やっぱり実地で経験積んでるかどうかは重要。

 メイドのルマはへたばってるフジと俺のためにあれこれ用意してくれてるし、門番だったロージは村を回って、もとからの村民と新規組にいさかいが起きないよう見張ってくれてる。

 嫁さんに逃げられたケインは旧来新規問わず村民の要望を集めて整理してくれてるし、医術と薬草の知識もある。

 他の面々もそれぞれの得意分野で貢献してくれていて、ほんとありがたい。

 都会の暮らしと安定した貴族家勤めを捨ててわざわざついてきてくれたんだ。

 大事にしなきゃな。

 感謝しつつ、俺はもう一度光る剣を振り下ろした。




>ガイア・インパクト
イメージ的にはホラあれだ、ガイアを始めとするウルトラマンが着地するときに大量の土砂を吹き上げるやつw

ダイナ「ガイアガイアって、最初にやったのは俺なんだぞ!?」

>刀で刺身を作る
石川賢の「魔界転生」コミカライズより。
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