全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
取りあえず全員が卓に着き、飲み物も用意して貰って話を始める。
シルが閉じ込められていた修道院での一件。
人為的に「
継母にその男を紹介したのと、修道院で生産されていた「ブラッド・リー」を流通させていたのがマリネスキー商会の大番頭、アレン・ベグイルであること。
ダンジョン管理登録官として訪れたジローに「ラダッソ」を名乗る謎の霊体がついており、コアを奪って逃げたこと。
謎の遺跡に到着した瞬間コアによって精神世界に引きずり込まれ、その中で「ラダッソ」を倒してコアを奪い返したこと。
その辺をざっと説明すると、ジョンおじさんとケーン兄さんから溜息が漏れた。
「そのラダッソから情報を引き出せなかったのが痛いな」
すいません。
「まあしょうがないでしょう。話を聞いている限り、精神世界でなくてはそもそも干渉出来ない相手だったようですし。
霊術師なんてどこにでもいるようなものではありません」
「うむ、責めている訳ではないよ。人間だったら何故取り押さえなかったかと言うところだが、今回はな」
ご理解頂けて幸いです。
ジューニャも霊体の存在を感知出来るだけで、後は魔力で間接的に干渉するのがせいぜいだから、除霊の類は無理だろうと言っていた。
しかしジョンおじさんもちょっと安堵しているように見えるのは、何だかんだジローの父親って事だな。
「で、私たちには内務省の中を探って欲しいと言うことだね?」
はい。ジローに命令を出した流れを探れば、敵の姿も見えてくるのではないかと。
・・・そう言えば、ジローって最初からダンジョン関連の部署にいたのか?
「ああ。特に親父からいいところに配属しては貰わなかったし」
「お前が『忙しそうな部署はやだ』ってダダこねたんだろうが」
何をやってるんだお前は・・・。
「む? そうか。そうなるとジローがダンジョン管理局に配属されたのも、『敵』の思惑だった可能性があるな?」
ええ。カーター家に影響を与える策だったのと同時に、当初からダンジョンに対して何らかの干渉を考えていて、そのための手駒にしようとした可能性があるのでは。
「否定はできないな・・・」
「父さん、人事の方に先輩がいますので当たってみます」
「わかった。ジローを指名した経緯についてはわしが調べよう」
こっちでもツテを辿って調べてみますので、そうですね、三日後にまたここでというのはどうでしょう?
「いいだろう」
「え、俺?」
我関せずと香草茶と茶菓子をほおばっていたジローが顔を上げる。
当たり前だろ。今やお前は重要人物なんだからな。
「そうなの? 暇だからガールハントに行こうと思ってたのに」
あほう。
お前は重要な生き証人なんだよ。
そうそう外に出せるか。
まあ、自分の部屋で・・・いや、明かりがついてるとばれるし、地下室かどこかに隠れ潜んで貰うのがベストだな。
「ええっ! それじゃ町を歩いて女の子を口説くのも、綺麗なおねーちゃんのいる酒場に行くのも、自由な恋愛を楽しめるお風呂屋さんに行くのもダメなの!?」
「ダメに決まっておるだろうがっ!」
「お前、女性もいるというのに・・・!」
オヤジさんの雷が落ち、お兄さんが頭を抱え、女性陣からは冷たい視線が一斉に突き刺さるがそれでもジローは反論する。
「カワイイ女の子に触れなきゃ俺は生きていけないんだ! 必要な栄養素なんだよ!」
「「「「「お前は死ねっ!」」」」」
俺やオヤジさんや兄さん、フジたちやトリスにチコまでもが心を一つにして突っ込んだ。
カーター家に仕えるメイドさんたちも声を揃えてたのは見なかったことにして上げよう。
「はなせー! もどせー! 俺は生きる! 生きてまだ見ぬカワイコちゃんと添い遂げるっ!
大体お前達は俺の護衛じゃなかったのか!」
「護衛だから守るんでしょうが・・・」
「悪いけど、あんたから給料貰ってる訳じゃねえんで・・・」
トリスとチコに両脇を抱えられ、
あいつら二人が見張り兼護衛になって、地下牢に放り込まれるそうだ。
何のためにそんなものがあるのかは聞くまい。怖いし。
それじゃ、ジローのことはお任せしますね。
「うむ。あんなのでも息子には違いない。これ以上迷惑をかけないようにするから・・・」
「ごめんなカエラ。きつく言っておくから・・・」
揃って頭を下げる親子の姿に、ちょっぴり心が痛んだ。
「お嬢さんたち、今から帰り? いい喫茶店知ってるんだけど、ちょっと寄ってかない?」
三日後。
ロウとタチバナたちが集めてくれた情報を持ってカーターの屋敷に行く途中、大通りで少女二人に声をかけるジローに出くわした。
ものも言わず殴り倒し、引きずって屋敷に向かう。程なくして馬鹿は目を覚ました。
「いてえ・・・俺は確か、ハニーブロンドとヘーゼルの髪のお嬢さんたちと仲良くおしゃべりをしていたはず・・・」
通りすがりの暴れ牛がお前をはね飛ばしたんだ。運が悪かったな。
「嘘つけ! お前が俺を殴りつけたんだろう! この頬に残った拳の跡・・・照合すれば犯人は明らかだぞ! 大人しくお縄につけ!」
ただ殴っただけじゃ足りなかったようだな。
次はガイア・インパクト叩き込んでみようか。
何、石壁を砕く程度のちょっとした震動を与えるだけだ。大事には至るまい。
「やだこの人過激・・・!」
まじめな話お前なら死なないんじゃないか?
今だって割と本気で殴ったのに五分経たずに復活してるし。
というかどうやって出てきた。トリスとチコを買収でもしたか。
「それがあいつらマジメでさー。まあ俺のパッションは鉄格子位じゃ抑えきれないってことだな!」
地下牢の鉄格子なりカギなりに細工がしてあるんだな。
後でおじさんと兄さんにチクっておこう。
「鬼かお前は!」
ともあれ、屋敷に到着するとケーン兄さんはまだ戻っていなかった。
「あれも忙しい身だからな。茶でも飲んで待っていてくれ」
ジローにゲンコツを落とした後、肩をすくめるジョンおじさん。
談話室でだべりながら、雑談をして時間を過ごす。
お茶が二杯、三杯と重なり、夕食の時間になる。
夕食の時間が過ぎても兄さんは帰ってこなかった。