全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第二十五話 納得のいかない潜伏場所

「ちくしょう! ちくしょう! どうすんだよカーヴェ!」

「わめくな馬鹿野郎! お前のオヤジさんが逃げろって言ったんだろうが!」

 

 言い争うジローとエフティ。

 ジロー、今考えてる。

 エフティも少し加減してやってくれ。

 ジョンおじさんはジローの親父さんなんだ。

 

「・・・」

「・・・」

 

 二人が黙り込む。

 今、俺達は影の一族の脚力とバネ足ダッシュで一目散に逃走している。

 ジューニャの念動で浮かせたその他のメンバーを、フジたちと俺が担いで高速移動している形だ。

 おじさんが足止めしているのか、ダスキーニは追ってこない。

 そうだヒョウ、ニシカワの家に行け。顛末を報告してくるんだ。しばらくはあっちにいろ。

 

「はっ!」

 

 ヒョウが別れて駆けていく。

 さて、これからどうするか。

 じいさんとヘルムに迷惑かけないためにも、取りあえずニシカワとは関係切らないといかん。あの宿には戻れないな。

 

「どうしましょう? 個人的なツテはいくつかありますが・・・」

 

 それにしても影の一族なら見当をつけられなくもないだろう。

 

「何かお考えでも?」

「シル様のご実家ですか?」

 

 それにしたってこっちの情報は完全に漏れてると考えていい。

 そんなわかりやすい場所には行けないな。

 

「じゃあ、どこ行くんだよ? 誰にも知られてないツテとか・・・」

「あー・・・あるかもしんない」

 

 ジローに視線が集中した。

 

 

 

「事情は分かりました。どうぞお好きなだけ滞在なさって下さい」

 

 にっこりと微笑むのは白いドレスの娘さん。

 貴族のお姫様か、それとも裕福な商家のお嬢さんか。

 深窓のご令嬢ってのがぴったり来る感じのひとだ。

 名前はクレア。ジローの知り合いだという彼女の瀟洒なお屋敷に、今俺達は匿われていた。

 にしてもジロー、どういう関係なんだ?

 それ次第では特調・・・特別調査部にすぐ嗅ぎつけられるぞ。

 

「大丈夫じゃない? 三ヶ月くらい前にナンパ成功して、一晩共にしてそのままさっくり別れただけの関係だから」

 

 この野郎・・・。

 

「エフちゃん、任せたんだよ」

「歯を食いしばれっ!」

「ぼげぇっ!?」

 

 エフティに殴られてジローが派手に吹っ飛ぶ。

 それを見てコロコロと笑うご令嬢。

 

「構いませんわ。こうして私の元に戻ってきてくれたんですもの」

 

 何者かは知らないが、肝の据わった娘さんである。

 心苦しいがしばらくお世話になるとしよう。

 

 

 

 しばらく時が過ぎた。

 透明になったタチバナやジューニャの幻影をまとったレイ、あるいはニシカワの家に潜り込んだ(もちろん表向きには存在しないことになっている)ヒョウからの連絡などで情報を集める。

 おじさんと兄さんはやはり犯罪者として拘禁されている。俺達も指名手配確定。

 ニシカワの家には現状おとがめ無し。

 特調も名家であるニシカワ伯爵家には簡単に手出し出来なかったのだろう。

 一応俺は分家とは言え別の家の人間だし、勘当されたようなものだからな。

 なお継母がこの機にマット村を接収しようと動いているらしいが、後で絶対泣かす。

 

 内務省の一角、特別調査部と警邏隊の入る庁舎が崩壊したのは王都でもちょっとした騒ぎになっているらしい。

 それらも含めて俺はテロリスト扱い。

 「英雄・飛竜殺しはテロリストだった」という噂やかわら版が出回っているそうな。

 出来ればカウンターで大々的に特調の陰謀を広めたいところだが。

 

「多少はやっておりますが、何分人手が・・・」

 

 そうだよなあ。

 影の一族の有志に協力して貰っているが、余り大っぴらにやるとニシカワの家に累が及びかねない。

 

「御父様個人ならむしろ巻き込みたいところだけど、下手に手を出したら最後なんだよ」

 

 それな。

 あの吸血鬼に借りを作ったら後が怖すぎる。

 伝達だけはしておいたが。

 

「でもこうしてる間にもジローの親父さんや兄貴がどうにかなっちまったりはしないのか?」

 

 こっちは今のところ何も出来ないが、向こうも焦ってるはずだ。

 特調ってのは元から敵の多い組織で、そこが人望のある内務次官を無理矢理拘束なんて、容疑が本当だとしてもかなりの反発を食らってるはずだ。

 大臣とおじさんの仲が悪いというのは聞いていたが、そこから攻められるかもしれん。

 というか、タチバナとジローにその辺の家に接触して貰っている。

 これがもう入れ食いで、省内クーデターが起きかねない勢いで味方が増えていた。

 このままなら大臣と特調部のバランスを崩すところまで行けるだろう。

 

「なるほど。ま、このジロー様のコミュ力のおかげだな! このジロー様の!」

「ええ、やっぱりジロー様は素敵ですわ」

 

 ニコニコしながらジローの頭を撫でるクレアさんと、膝枕をされながら鼻の舌を伸ばすジロー。おまえなー。オヤジさんとお兄さんがあんな事になってる状況でなー。

 いや、タチバナと一緒に危険覚悟でジョンおじさん派閥の官僚の家をあちこち歩き回ってるから仕事はしてるんだが。

 ともかくこっちも向こうも攻め手を欠いている。

 そして状況はジリジリとこちら優位に向かっている。

 動くならあちらからだろう。こちらの味方を強引に逮捕しに来るかそれとも・・・

 それから更に数日、事態が動いた。

 

「公開処刑!?」

「はい、今兄貴からの連絡で、今日正午に中央広場で」

 

 ヒョウからの連絡を伝えるレイに、その場にいた全員の顔がこわばる。

 そっちで来たか・・・

 

「カエラ様」

 

 硬い表情のフジ。

 

「間違いなく、あの剣士が待ち構えてるんだよ。

 せめてスカージがいれば・・・」

 

 考え込むシル。

 

「・・・」

 

 緊張して言葉もないジューニャ。

 

「どうするんだ? お前が突っ込めって言うならオレは突っ込むぜ」

 

 剣の柄を握り、静かに俺を見るエフティ。

 

「カエラ・・・」

 

 顔をこわばらせてこちらを見るジロー。

 そんな顔をするな。何度も言ってるだろ。

 行くぞ、おじさんたちを助け出す。

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 賛同の声が一斉に上がった。

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