全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

69 / 72
第二十九話 魔神教団

 何かいきなり爆弾発言が飛び出した。

 あの修道院が、ご先祖様(白のサムライ)が倒した魔神を崇めていた教団の砦?

 余りに衝撃的な内容に、海千山千のジョンおじさんや、盗賊ギルドのトップであるタムレインすら二の句が継げない。

 

「ちょ、ちょっと待てよ! 魔神ってあれだろ? カーヴェとフジの先祖が倒したすげえ悪魔だろ? 何でそんなのが残ってんだよ!?」

 

 いち早く再起動したのはエフティだった。そう言えばご先祖様の英雄譚はこいつのお気に入りだったな。何度も話をせがまれた記憶がある。

 タチバナがハッとした顔になる。

 

「ああいえ、言われてみれば確かにそう言う話がありました。

 魔神の勢力がはびこっていた時期に、占領されて王軍に包囲されたことがあると」

「そうだったんだよ!? ともかく悪魔と魔神は違うんだよ。悪魔はこの世の外から来るものだけど、魔神は今でも正体不明なんだよ」

「強力な魔術師が自らを作り替えた存在ではないかと、お師匠様は話してましたねえ。例えばモンスターと融合するとか。カエラくんの家には何か伝わってませんか?」

 

 確かにご先祖様の口伝は色々と伝わってるんだけど、そう言えば魔神についての具体的なあれこれってあまりなかった気がするなあ。

 しかしつーと何か。魔神教団が実はまだ存続していて、古巣の修道院を乗っ取ってあれこれやってたってことなのか?

 マリネスキー商会のアレン・ベグイルもその一味だと?

 

「それは・・・どうなんだ、タムレイン?」

「さすがに私も即答はしかねるね・・・」

 

 呆然と会話を交わす警察機構の実質トップと盗賊ギルドのトップ。

 この二人をして初耳ってことは、本当にそうだとしても、よほど深くまで潜ってるってことだ。

 それに、そうだとしても倒さなきゃならないことには変わりない。

 この話は頭の隅に入れておいて、目の前の敵に対処すべきだろう。

 特別調査部部長ウォルター・ゴットリープとマリネスキー商会大番頭アレン・ベグイル。

 ジローに霊体を憑依させたとおぼしき女、そして最大の難敵ダスキーニ・ヴォルタ。

 そう言うとジョンおじさんが気を取り直す。

 

「そうだな。昨日ジローやタチバナさんとも話したのだが、内務省の切り崩しはかなりのところまでうまくいっている。

 特に、私たちを裁判も無しに処刑しようとしたのがかなりの反発を呼んでいるようだ。

 これに関してはジローを褒めてやらねばなるまいな。不本意だが。不本意だが!」

 

 強調する割には結構嬉しそうな顔である。まあ野暮は言うまい。

 しかしそうすると内務省の内部でクーデターを起こせたりします?

 

「少なくとも道理はこちらにある。証拠を示さないまま逮捕して、裁判も無しに処刑。

 それが許されるほど我が国は無法の国家ではないよ」

 

 日本から近代法の概念が入ってきてからでも既に数百年は経過している。

 そもそもカーター家の初代がそうした方面で改革を遂行したオリジナル冒険者族の一人だ。

 まあ、国民としては自分の国がある程度真っ当なのは喜ばしい限りである。

 

「特調は手段を選ばない傾向があるが、それでも今回はさすがに強引すぎる。

 そうせざるを得ない事情があったと考えるべきだろうね」

「恐らくはな」

 

 頷きあうタムレインとおじさん。

 その事情ってのは足元に火がついているからなのか、それとも例の遺跡か。

 

「両方というのがありそうなところだが・・・現状では何ともだな」

「商会の方は?」

 

 ロウに頼んで探って貰っていますが、まだ何とも。

 

「ではまず内務省の方から攻めるべきだな。今日からはタチバナさんに頼んで私も直接官僚たちの家を回る」

 

 そう言う事ならジローはジューニャに幻影をかぶせて貰って手分けして行きましょう。

 ケーン兄さんには・・・いや、ジローじゃなくてケーン兄さんに回って貰った方がいいかな?

 

「姿隠しが出来る術師ならうち(ギルド)にもいる。と言うかこの屋敷に待機させてあるよ」

 

 さすが。じゃあジローの方には俺が護衛につきましょう。

 

「いや、君はここに隠れていてくれ。君は一連の事件全ての生き証人で、この件で訴訟を起こす場合に君以上の原告はいない。こう言っては何だが、私やジローより優先度は高いんだ」

 

 ・・・わかりました。

 結局タチバナにジョンおじさん、ケーン兄さんに例のカミソリみたいな秘印級と透明化の術師、ジューニャにジローと護衛としてエフティがつくことになった。まあエフティなら大丈夫だと思うが・・・ジローを頼むぞ。

 

「おう。新婚さんを未亡人にする訳にもいかねえからな」

 

 ピシガシグッグと拳をぶつけ、俺達は彼等を送り出した。

 

 数日後。

 あれやこれやの交渉と根回しが速やかに完了した。

 爺さんの人脈を通じて国王陛下にまで話を通し、内務大臣及びゴットリープの更迭と逮捕の内諾を得たのだから大したものだ。

 あと、一応シルのオヤジさんにも話を伝えておく。

 正直今でも敵か味方かわからん人ではあるが、最低限の連携はとっておいた方がいい。

 

「これから逮捕にかかる。君たちはいざというときに備えておいてくれ」

 

 おじさんがそう言った一時間後、内務省のおじさんの部下が早馬でやって来た。

 

「内務大臣は拘束しましたが、ゴットリープに逃げられました!」

「なんだと!? 警邏部隊は何をやっていた!」

 

 おじさんの雷に若い部下が身をすくめる。

 

「その、ローニンめいた剣士が殴り込んできまして、全く太刀打ち出来ずに・・・」

 

 ああ、ダスキーニか。そりゃしゃーないな。

 

「・・・わかった。怒鳴って済まなかった」

 

 おじさんが深い溜息をついた。

 ゴットリープがどこへ行ったかわかるか?

 

「現在追跡中ですが、ブルース大通りを西へ向かったようです」

 

 メットーの中央を東西に貫く大通りだ。

 西か。

 

「・・・例の遺跡もメットーから西にありましたね?」

「もの凄く嫌な予感がするんだよ」

「カエラくん、まだコアの場所は分かりませんか?」

 

 何度もやってるんだけどな・・・存在自体は感知出来るんだが、場所がさっぱりわからない。

 何となく反応が薄れていく気がする。気のせいかも知れないが。

 

「勘は信じるべきだぜ、カーヴェ。戦場でも進めばいいのか退けばいいのかわからないってのはよくあるんだ。最後には自分の勘を信じるしかねえ」

 

 真剣な顔のエフティ。

 よし、行くぞ!

 目標は例の遺跡だ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。