全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第七話 伝言

「ふんっ!」

 

 今日も今日とて開拓作業。

 震脚っぽいポーズから足元に震動を送り込んで地面を爆砕するだけのお仕事です。

 これがホントの震(動)脚だな、HAHAHAHA!

 しかし広い!

 地平線の彼方まで広がる荒れ地とか、どこまで爆砕すればいいんだ。ケイトー?

 

「このペースだとあと二日ほどで完了するかと」

 

 まだ二日かかるのかー。

 そう言うとケイトーが呆れた顔になった。

 

「普通なら最低でも数年、下手をすると十年以上かかる規模ですぞ。

 若様のお力が素晴らしいのは誰もが認めるところですが、それはそれとして異常なのだと言う事はご自覚下さい」

 

 へいへい。

 

「取りあえずあの木のところまで土起こしが終わったら水路の延長をお願いします。それが終わりましたらご昼食を」

 

 手元の書類と地図に目を通しながら指示を出すケイトー。

 既に昨日土起こししたところでは水と肥料を撒いて種まきが始まっている。

 ロウがワイバーンの代金でそつなく揃えてきたものだ。

 

 取りあえず1ヘクタール(100mx100m)ごとに一人、または一家族。

 円形にえぐられた農地の端っこにフジがお菓子の家ならぬ畳の家を立て、新規の開拓民たちが村人の指導を受けて俺が掘った水路を整えていく。

 水路の「あぜ」を作るには普通木の板を使うが、フジであれば小さな畳を並べて出現させるだけで済むので実にスピーディ。

 

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

女神(ゴッデス)! 女神(ゴッデス)! 女神(ゴッデス)!」

 

 今では俺と並んで女神呼ばわりされているくらいだ。

 気の早い奴の中には祭壇作って、俺とフジの人形を並べて祭ってる奴もいるとか。

 ひな人形かな?

 

「どうにかなりませんかねえ、これ・・・」

 

 お前が言っただろ。もう手遅れだよ。

 

「はぁぁぁぁぁ・・・」

 

 フジが深い深い溜息をついた。

 

 

 

 三日後。

 土起こしが終わったと思ったら今度は木こりと来たもんだ。

 まあこっちはまだ気楽なもんだ。ぶった切ればいいんだからな。

 抜いた刀を燕返しにすぱすぱっと閃かせる。フォノン・メーザーの光る刃が幹をすり抜け、「く」の形にえぐり取った。

 ヘイヘイホー、っと。いやむしろ、侵攻する巨人みたいだな。ほら、あの首の後ろをすぱっとやる奴。

 ん? おい。

 

「・・・っ! た、たーおーれーるぞー!」

 

 呆然としていた木こりの脇腹をつつくと、大声を上げて倒れてくる木から身をかわす。

 十秒ほどして直径2m、高さ50mを越す巨木が倒れ、地響きを立てた。

 

 再度20センチほどのフォノン・メーザー刃を発生させて枝をすぱすぱ落としていく。

 製材や仕上げは専門の木こりに任せるが、こう言う雑なところは俺がやるのが手っ取り早い。

 

「はあ・・・」

 

 後ろで見ていたフジが、それはもう深い溜息をついた。

 なんだよ、別にいいだろ。

 

「そうですけどねえ・・・《剣の加護》の奥義中の奥義と言われる『飛ぶ斬撃』を木こりに使うと言うのは・・・」

 

 使えるものは使うのが俺のポリシーなの。

 それより村長、これって森の中でもかなりのでかい木だよな。

 伐採しちゃって大丈夫だったのか?

 

「領主様の新しいお屋敷の大事なところに使うものですからな。

 これくらいのものは必要でございましょう」

「執務室や広間の壁や天井に使う事になるでしょう。

 一枚板で晩餐用のテーブルってのもありですなぁ」

 

 と、これは呼び寄せた木こり(イコール製材業者でもある)の長。

 なるほどなー。

 

「いいですな! 領主様の住まわれるお屋敷です。それくらいでなくてはなりません!」

 

 お、おう。ありがとな。

 

「何故ならばカエラ様こそは我が村の神! 即ちゴッド!」

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

 

 だーかーらー。

 村人たちがまたしても・・・木こりまで混じってる!?

 

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

(ゴッド)! (ゴッド)! (ゴッド)!」

 

 色々諦めた俺は倒れた木に目をやる。

 既に木こりたちが取り付いて表面の処理を始めており、中々手際が良くて見てて楽しい。

 しかしこれ、ホント立派な木だな。

 屋久島の千年杉とは言わないけど、かなり立派なものに見える。

 樹齢何年くらいだろう?

 

「杉ですから、恐らくは――」

「――三百年ほどかと思います、若様」

 

 おや、この独特の会話リズムは。

 

「兄様がた!?」

 

 振り向くと、そっくりな顔の青年が二人。どことなくフジに似た顔立ちだ。

 ヒョウとレイ。タチバナの双子の息子で、フジの兄たちである。

 

「お久しぶりです若様。お顔が――」

「――見れなくて寂しかったですよ」

 

 にっ、と笑って一礼する二人。

 何でも《双子の加護》とやらで、互いの考えていることが分かってしまうのだそうだ。

 そのせいか、こうして片方が話し、もう片方がその言葉尻を引き継ぐという変わった話し方をしている。

 俺に対しても兄貴分のように接してくれていた数少ない味方だ。

 

 んであれか。

 こうしてこっちに来たって事は、王都の方で何かあったか?

 向こうに残ったタチバナとあれこれ動いていてくれたはずだよな。

 

「はい、若様。緊急の――」

「――連絡です」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

「以上が母からの――」

「――伝言ですが、いかがいたしましょう?」

 

 しゃーないな、すぐに王都(メットー)に戻る。

 覚悟を決めて出て来たら、この三月で二回もとんぼ返りとか何なんだろうね。

 あ、まだ開拓民連中の家がないな。フジはここに残って――

 

「お供します」

 

 いや、春とはいえまだ天幕(テント)で生活してる連中も・・・

 

「お供します」

 

 だから・・・

 

「お供します」

 

 こちらを睨みつけたまま、同じ言葉を繰り返すフジ。俺は溜息をついて彼女の同行を認めた。ヒョウ、レイ、それにタチバナもいるんだから心配はないと思うんだが。

 にしても隷属契約書にサインしてるのにいまいち絶対服従って感じじゃないんだよな、とこれは口には出さずに呟く。

 

「フジは若様のこと――」

「――大好きだからなー」

「ちょっと! そう言う事言わないで下さい!」

 

 微笑ましそうな顔でフジの頭を撫でる兄二人、抗議するフジ。ほっこりするのう。

 そう言えば(ヘルム)はどうしてるかなあ。あいつもあんな感じで良く頭を撫でてやったもんだが。

 取りあえずケイトーや村長、後ロウとも話さなきゃならんから、お前らはその間にメシ食って休んどけ。

 

「かしこまり――」

「――ました」

 

 一礼すると二人は去っていく。

 しかし互いの考えてる事がダダ漏れって事は恋人とか作れそうにないな。

 いつも一緒にいるし、妙に距離近いし、結構耽美系だし、ひょっとしてあいつらホモなんじゃないか? いかんぞ、非生産的な!

 

「刺しますよ?」

 

 フジの冷たい声。

 そうだな、そこは重要じゃない。

 重要なのはフジが俺のことをどれだけ大好きかってことだからな。

 

「刺しますよ!?」

 

 怒りと羞恥で赤くなったフジの頭を撫でると、俺はケイトーたちの方に歩き出した。

 




ちなみにフォノンメーザー斬りなら木を一刀両断することもできますが、そうしなかったのはどっちに倒れるか分からないからです。

>1ヘクタールごとに一家族
一家族が食って行ける広さらしいです。
間違ってたら後で修正。

>ホモはいかんぞ、非生産的な!
「南国少年パプワくん」の名セリフ。
なのだが、近年の風潮で修正されてしまったらしい。残念。
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