全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第四章「魔獣戦士」
第三十話 追跡


閑話休題(それはさておき)

 

      ――魔獣戦士ルナ・ヴァルガー――

 

 

 準備を整えている間に続報が入ってきた。

 やはりダスキーニは王都を出て街道を西に向かったらしい。

 止められるなら城門で止めておきたかったところだが、アイツ相手に普通の兵士が何千人かかっても死体を量産するだけだ。

 封鎖してなかったのはむしろ幸いだっただろう。

 その情報を話してくれたおじさんと入れ替わるように、タムレインが口を開く。

 

「それと、コネを辿って学芸神(テンジン)歴史神(バセン)の神殿で調べて貰ってたんだけど、カエラ卿の村近くのその遺跡、ひょっとしたら魔神教団と関係のあるところかもしれないね」

 

 マジかよ。

 

「魔神教団は封印された古のダンジョンを解き放ち、モンスター軍団を組織してディテクの半分を滅ぼした、そう書かれているそうだよ」

 

 そのダンジョンが封印された理由とかは?

 

「引き続き調べて貰ってはいるが、今の時点では何ともだね。

 ただ破壊ではなく封印というのが引っかかる、と調べてくれた司祭殿は言っていたよ」

 

 危険なダンジョンなら、ダンジョン・コア砕けば消滅するわけだしな・・・

 まあ、どっちにしても出たとこ勝負にならざるを得ないか。

 全員準備は出来たな?

 

「はい」

「とっくになんだよ」

「大丈夫です」

「待ちかねたぜ」

 

 フジ、シル、ジューニャがそれぞれに頷く。エフティはニヤリと笑ってサムズアップ。

 それじゃみなさん、行ってきます。

 

「武運を祈る」

 

 代表するようにおじさんが頷いた。

 

 

 

 街道を疾走する。

 例によってシルは俺の前鞍に乗せて、ジューニャとエフティの馬が併走する。

 フジ、タチバナ、ヒョウ、レイは自前の足で疾走。

 俺達も指名手配されていたが、内務省から既に話が行っていて門はすんなり通れた。

 仕事が早い(平手打ち)。

 

 馬を飛ばし、宿場宿場で取り替えて、二日ほどでディテクの西の端、マット村から100kmほどのところにある例の遺跡に到着。

 タチバナ、ヒョウ、レイ、どうだ?

 

「ここ最近は誰も来ていないようですね」

「ここで馬が転んだ跡がありますが――」

「――多分十日から半月くらい前のものです」

 

 俺の馬が横転したときのあれだな。ジューニャ、そっちは?

 

「遺跡の方も前に見たときと同じで、何らかの干渉を受けた形跡はないですね」

 

 道中ではそれらしき奴らには出会わなかったが、追い越してしまったか?

 

「さすがにカエラちゃんのあれより早く移動する手段ってそうそうないと思うんだよ。

 ダンジョン・コアの感知能力のほうはどうなんだよ?」

 

 言われて集中してみる。

 だが何も感じない。

 

「・・・コアとの接続が消えていますね」

 

 とジューニャ。

 

「恐らくは、管理権を上書きされたのでは」

 

 だろうな。

 コアは相手の手の内にある。

 むしろ今まで上書きされてなかったことのほうが不思議だ。

 

「あのダスキーニとか言う男なんだよ?」

 

 可能性は高いな。

 ダブルエッジのことを考えると、多分俺と同格以上の精神力を持つ人間じゃないと書き換えは難しいんだろう。

 そしてコアを持っていたのがゴットリープなら、一番手近にいてそれが可能そうなのはダスキーニだ。

 まあどちらにしろやる事は変わらない。むしろ上書きされたなら、ここに来る可能性が更に増した。

 

「じゃあ待ち伏せか」

 

 そうなるな。経験があるか、エフティ?

 

「まあ、いくらかはな」

 

 オーケー、任せた。指示出してくれ。

 そう言うとエフティは嬉しそうに笑った。

 

「まず足跡は適当でいいから消してくれ。

 馬の口には木片を噛ませて、いななきが聞こえないように。

 本当なら飛び道具で狙い撃ちにしたいとこだけど、持ってるのが・・・ええと、フジたちの手裏剣だけか」

 

 あいつ相手でもまあ牽制くらいにはなるだろう。

 

「一応痺れ薬も塗っておきますが、余りご期待はされませんように」

 

 だよな。巨人級ともなれば、毒物に対しても相応の抵抗力はある。

 一応俺のフォノン・メーザー斬りもあるけど、まあこれは撃つ前に気付かれるだろうな。

 

「気配とかそんな感じか」

 

 魔力を集中させると鋭い奴には感づかれるからな。こればかりはどうしようもない。

 その後、木の枝を切ってきてジューニャの呪文で塹壕を掘り、枝で屋根を作って土をかぶせて念を入れてカモフラージュ。

 三時間ほどで準備は終わり、俺達は身を隠してそれを待ち受けた。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 結局その日ダスキーニとゴットリープは現れず、俺達は森の奥まった場所で一夜を明かした。

 翌日も現れず、代わる代わるに見張りをして三日後。

 最初にそれを感知したのは、コウモリの力を呼び出していたエフティだった。

 

「来るぜ、馬のヒヅメの音だ。二頭、1kmほどに近づいてる」

 

 街道を通ってるんじゃないんだな?

 

「間違いなくこっちに向かってる」

 

 よし、全員気配を消せ。

 できるだけでいい。

 

「・・・」

 

 みんなが無言で頷くのを確認して、俺もまた息を潜める。

 それから数分。俺の耳にもヒヅメの音が聞こえてきた。

 重なった枝の隙間から外を見る。

 ・・・来た! 木々の間から僅かに姿が見える。

 

「・・・?」

 

 唐突にヒヅメの音がやんだ。

 森の中の広場、円形の石畳とストーンサークルのあるそこから20m位のところで奴らが馬を止める。

 ・・・やばい、ジューニャ、全員に《鎧》!

 

「は、はいっ!」

 

 ジューニャの呪文が発動した次の瞬間、「飛ぶ斬撃」が俺達の籠もっていた塹壕を吹き飛ばした。

 

 

 

 塹壕を吹き飛ばした「飛ぶ斬撃」が爆発を伴って消滅する。

 奴の顔に浮かぶのは、歯ぐきをむき出した、凶悪で獰猛な笑み。

 脇で硬直するゴットリープのことなど構いもせず、第二撃を放とうとして。

 残念ながらこっちのターンが残ってるんだなあ!

 やれ、タチバナ!

 

 頭の上の方で動きがあった。

 タチバナだけは塹壕に籠もらず、透明化と隠形を駆使して木々の上に潜んでいたのだ。

 そして広場の手前数十メートルの木の上には、下から完全に隠れるように大量の袋が結びつけてある。

 ジューニャの《仮物質創造(イミテイト)》で作った袋、中身はジューニャの《汗の加護》で大量生産した影の一族特製揮発油。

 

「これは――!?」

 

 それが一斉に雨のように降り注ぎ――次の瞬間着火した。




>魔獣戦士ルナ・ヴァルガー
秋津透のライトノベル。ゴジラの頭部に合体してしまったおてんば王女様の冒険譚。
閑話休題(それはさておき)」と言ったトンデモルビを生み出した偉大な作品。
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