全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
三時間ほど仮眠した後で俺達は出発した。
俺はバネ足ダッシュで、フジたちニンジャ組は自前の足で、エフティは馬娘モードで、そしてスカージは単に素の脚力で高速移動する。
特に魔法とか特殊能力とか無しに時速120km出せる巨人級はやはり人外である。
夕方頃に例の封印ダンジョンに到着し、馬や荷物を改める。幸い何もなくなっていなかったし、馬も逃げ出していなかった。
しかし封印とやらは解けてしまったが、これどうする? ジューニャなら再封印出来るか?
「ちょっと無理かなって・・・見た事のない術式です。
まず研究から始めないとですねえ」
知識オバケのジューニャをもってしてもだめか。
「それはないと思います。ダンジョンの魔力はかなり落ち着いていますし」
あの解放とやらで取りあえず力は使い果たしたか。
だがいずれ地脈からエネルギーを吸い上げて充填するわけだし、破壊するなり攻略するなりする必要がありそうだな。
「それなんですけど・・・どうもこのコアが、『ひまわりダンジョン』のコアであると同時に、このダンジョンのコアになってしまっているみたいなんです」
・・・そう言う事あるのか?
「わかりません。ただ、このダンジョンとのリンクが出来ているのは確かです」
うーむ。
翌日コアの管理権を再度上書きすると、ジューニャの言っていることが正しかったと分かった。ひまわりダンジョンと全く同じように、ここのダンジョンの制御を掴んでいるのを感じる。
「ゴットリープが封印を解いたのに伴って、リンクが出来たのかなだよ?」
「可能性はありますが、なんとも」
ともかく封印出来ないんじゃ、冒険者を呼んで魔力結晶を採掘する(=ダンジョンのエネルギーを弱める)か、破壊するしかないが・・・こいつはうちの村のダンジョンのコアでもある。
破壊したらうちのダンジョンも破壊されることになって、大変よろしくない。
俺がこのダンジョン踏破したことにして、所有権主張するしかないかなあ。
「だね、なんだよ。まあそのへんはそれこそカーター卿にうまく頼みこめばいいと思うんだよ」
持つべきものはコネやな。
まあ、取りあえず
ヒョウは村に走って、一部始終をケイトーと傭兵団の連中に伝えておいてくれ。
あいつらもいいかげん心配しているだろう。
「かしこまりました」
王都に戻ると既におじさんたちが俺達の濡れ衣は晴らしてくれていた。特調も内部調査を綿密にやった上で再編成するそうな。仕事が早い。
空席になった内務大臣の座にはおじさんが付くことになり、災い転じて福となした格好だ。
例のダンジョンも、俺が踏破したことにして所有権を確保してくれた。うちの村の人間をダンジョン管理人として移住させないといけないな。
そのうち発展して村が出来たら、そこも俺の領地と言うことになるらしい。
そう言えばスカージ。大番頭のアレン・ベグイルはどうした?
「私が出立する前に捕縛せよと御当主様から命が下ったのですが、既に姿を消しておりました」
後でロウに聞いたが、まだ見つかっていないとのこと。逃げ足の早い奴だ。
まあ、マリネスキー商会を利用できなくなっただけでもよしとするか。
「ブラッド・リーの生産が止まったから、流通網の利用価値が無くなったのかもだよ」
そう言う考え方もあるか。まあいずれ探し出して吐かせてやる。
なおこの件の裏側で暗躍していたあのクソ継母だが、影の一族がじいさんにチクって、凄い目で睨まれて引っ込んだそうである。
「いやあ、あの顔! 若様にも見せて差し上げたかったですねえ!」
その場にいたヒョウが記憶を共有するレイとゲラゲラ笑ってたのだからよほどだったんだろう。
チクショウ、俺も見たかった。
それはそれとしてメットーではもう一つイベントがあった。
言わずと知れたジローとクレア嬢の結婚式である。これ以上延期するとお腹が目立ってくると言うことで、あっという間に準備してあっという間に挙式してしまった。
目の死んでるジロー、複雑な顔のジョンおじさんとケーン兄さんと、ニッコニコなタムレイン・クレア父子の対比が印象的だったとだけ言っておこう。
まあ・・・幸せにおなり、だ(投げやり)。
ジローの結婚式を見届けた後、王都のみんなに別れを告げてマット村に戻る。
行きほどには急がないが、それでも三日の道程だ。
ケイトーたちの喜びの声とお小言を頂戴して、赤鬼傭兵団の面子も加えて祝いの宴を張ったその夜。
さすがに結構飲んだので今日は一人で寝るかと思っていると、部屋のドアがノックされた。
「その、今ちょっといいか・・・?」
薄物を羽織って入ってきたのはエフティだった。
いいけど・・・まさかその、だな。
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
ベッドに並んで腰掛ける俺達。
沈黙が続く。
「その、あの・・・なんだ」
顔は真っ赤。意を決してその眼が俺を見る。
「オレを・・・お前の女にしてくれ」
俺だって木石じゃない。
それくらいは察しがつくけど、お前はその・・・親友だし。
そう言う関係になるのはちょっと二の足を踏む。
それに俺は・・・
「分かってる! 全部分かってるから!」
そう言ってエフティが取り出したのは何度も見たことのある紙切れ。
エフティの名前が既に記された隷属契約書。
そうか、そう言えばお前には全部見られてたな。
「オレだってお前には全部見られてる。別に正妻にしろとは言わねえよ。
愛人とかでいい。それでいいから・・・頼むよ、カーヴェ」
抱きついてくるエフティを抱きしめ返す。
鍛えた、それでいて柔らかく弾力のある肉体と息づかいを感じる。
・・・いいんだな?
「ああ」
サインを書き込んだ隷属契約書が光を放つ。
「それでさ、もう一つ。これ・・・」
エフティが差し出してきたのは革製のチョーカー。見ようによっては首輪に見えなくもない。
「お前につけて欲しいんだ。飼い慣らした獣には、首輪をはめるもんだろ?」
やばい、ちょっとゾクッと来た。いいだろう。これからお前は俺の
チョーカーをエフティの首にはめ、俺は新しい
なお翌日、あれこれが盛大にばれて、周囲に割とドン引きされた。
タチバナ! お前何でニコニコしてんだよ!
傭兵団のハーラおばちゃんも!
エフティはむしろ自慢げだし、フジは何か自分も首輪欲しそうな感じだし!
俺の領主ライフは、まだまだ前途多難のようである。
「・・・ここか?」
ああ。ロウとタチバナが探し出してきてくれた。
俺とエフティ、二人が立っているのは王都の片隅にある小さな屋敷。
裕福な平民かそこそこの官僚が住んでるような家。
エフティが俺と出会う前に怪我させてしまったという、王宮に仕えていた侍女。
その後治療を受けて回復し、良縁に恵まれて今では三児の母だという。
「・・・」
ちらりとこちらを見るエフティに頷いてやる。
深呼吸をしてから、エフティが呼び鈴を鳴らした。
足音がして扉が開く。出てきたのは老齢の召使い。
「はて、どなたでしょうか?」
「オレ、あたしはエフリーティ。昔ここの奥さんに世話になったんだけど・・・」
眼を細めて、俺はその様子を見守っていた。