全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

79 / 80
第一章「火神の鎚」
第二話 ハト王都より来たる


「しばしも休まず鎚打つ響き」

 

      ――「村の鍛冶屋」――

 

 

 クルッポクルッポーとロウからハト便で手紙が来た。

 マット村に来てくれる魔剣鍛冶が見つかったとか。

 

「例の、火の魔鉄鉱を加工してくれる職人さんですか?」

 

 ジューニャの言葉にああ、と頷くのはシル。

 

「あれはダンジョン攻略に必須だけど、産出するそれに加工が追いついてないんだよ。

 ひまわりダンジョンに来るお客さん(ボウケンシャ)も増えたからもっと増産したいけど、王都じゃないと中々加工出来ないんだよ」

 

 ダンジョンで産出した魔法の鉱石をロウの商会の馬車で王都に送り、職人に燃える武器に加工して貰ってからまたマット村に送り返す。

 ロウのとこの商隊は生体活性化波動を受けてる訳でも、ニンジャな訳でもない。

 原材料が製品になるまで、職人の作業期間を含めて三ヶ月以上はかかるし、職人も暇ではない。その間にも魔鉄鉱のドロップは溜まっていって、今ではだぶついてる有様である。

 なので前々から探してくれるように依頼はしていたのだ。

 

「輸送費と加工の手間賃も馬鹿にならないんだよ。だったらいっそ魔剣鍛冶を高いお給料で雇った方が『りーずなぶる』なんだよ」

 

 魔剣鍛冶。武器に限らず魔道具を作る職人の総称だが、術師ではない。

 本来魔道具を作るのは術師の仕事だが、魔法を学ばずに(学べずに)ダンジョンのドロップアイテムを加工して魔道具を作れる人間がいる。それを一般的に魔剣鍛冶と呼ぶのだ。

 今ではむしろ魔道具を作る術師より魔剣鍛冶のほうが多いくらいらしい。

 

「へー。じゃあオレの『エンテイ』もそうやって作ったのか」

 

 エフティが持ってる炎の魔剣のことである。

 さあ、どうだろうな? 本職の術師が作る場合もあるしな。

 まあともかく魔剣鍛冶だ。見つけはしたが説得に難航してるので直接来てはくれないかって話だな。

 

「何があったんでしょうか?」

 

 はっきりとは書いてないな。

 まあハトの足にくくりつけられる程度の手紙だ、細かいところまで書くスペースはない。

 収穫も一段落して農繁期も終わりだし、領主の仕事もしばらくは暇だ。

 メットーに行ったところでケイトーも嫌な顔はせんだろう。

 

 予想通りケイトーも反対はしなかったので旅支度を整える。

 俺とフジ、シル、ジューニャ、エフティのいつもの面子。

 ちなみにエフティの部下たちは現在正式に俺の家臣になり、警備とかダンジョンでの救出業務とか、一般兵のパワーレベリングとかを任せている。

 エフティの仕事は俺の警護なので、こうして一緒に行動してる訳だ。

 しかし魔剣鍛冶についてはかなりいい待遇を提示していると思うのだが、それで引き抜けない理由ってのはなんだろうな?

 

「そりゃお前の悪評のせいだろ。

 男も女も構わず食っちまう好色領主のところに好き好んで行きたがる奴がいるとは思えないね」

 

 はっ、とむかつく顔で笑うのは我が竹馬の友ジロー。

 オーケー、よくわかった。いいか、これから俺はお前を殴るっ!

 

「へぶぅっ!」

 

 虹色の液体をまき散らして吹っ飛ぶジロー。

 

「『これから』と言ったと同時に殴るのはどうなのでしょう」

 

 「殴る」と頭の中で思ったその時には! スデに相手を殴っている!

 だから「これから」とか「殴る」なんて言葉は使う必要がないんだ!

 「殴った!」なら使ってもいいっ!

 

「ドン引きなんだよ」

 

 まあ自分で言っててそう思うが、騎士とか侍ってのも割とヤクザ商売だからな・・・

 というか武士をマイルドに真似たのがヤクザだし。

 

「マイルドになってあれなんですか・・・」

 

 そうだよー? 王族貴族なんて成功した山賊のなれの果てだし。

 無数の暴力団を傘下に持つ広域暴力団ディテク組の組長が今の国王よ。

 閑話休題(それはさておき)

 

「いてて・・・」

 

 結構本気で殴り倒したのに、五分で起き上がって茶をすするジロー。

 本当にタフだなこいつ。一般人なら下手すりゃ死んでるぞ。

 

「お前は死ぬくらいの勢いで人を殴るのかっ!?」

 

 顔色を変えて俺に詰め寄るジロー。

 死なないんだからいいじゃん。

 やっぱりお前の《健康の加護》は特別製だな。

 

「ええ、実際夜も・・・あら嫌だ、聞き流して下さいね」

 

 にっこりと笑うのはおなかが目立ってきたジローの新妻クレアさん。

 ちなみにここはメットーではなく、この前内務省特調部長のゴットリープが封印を解いた古のダンジョン、カピラ・ダンジョンである。命名は俺。インドの百の頭を持つ怪物から取った。

 ともかくジローが独立するというので、それならとここの代官を頼んだのだ。

 自称シティボーイであるこいつはメットーを離れるのを嫌がったが、何故か乗り気のクレアさんには逆らえなかった。

 嫁の実家(盗賊ギルド)から腕利きも派遣して貰っていて、例のカミソリみたいな兄ちゃん(本当に「レイザー」って名前だった。まんますぎる)もいるし、前の一件で関わりのあったスネ傷冒険者、トリスとチコもこっちで働いている。

 今はまだ客も少ないが、ロウに宣伝して貰ってるからそのうち訪れる冒険者も増えるだろう。中級者向きのひまわりダンジョンと違って、こっちは低レベルでも比較的稼げるダンジョンだから、住み分けができるだろう。

 気になるのはダンジョン・コアだ。元からマット村とひまわりダンジョンを転移出来るくらい力の及ぶ範囲が広かったが、カピラ・ダンジョンと連動した結果、ここのダンジョンにも転移出来るようになってる。

 ジューニャ曰く色々特殊すぎて何も言えないとか。

 本来ダンジョン・コアによる転移ってダンジョン内限定のはずなんだがなあ。

 

「オレ達がダンジョンマッピングしたときも、ガーディアンもいなきゃダンジョン・コアもなかったじゃねえか。

 コアが無くなるとダンジョンって消えちまうんだろ? 本当のコアはどこ行ったんだろうな」

 

 それな。

 封印されていたから何かと思ったけど、割と普通のダンジョンだったしなあ。

 出てくるモンスターが動物系・魔獣系ばかりだから獣神(ガイラー)のダンジョンかもとは思うが、確証はない。

 それはそれとして、俺についてのそんな噂、マジで広まってるのか?

 いやまあ、フジたちと関係してるのは事実だが。

 

「王都でも割と広まってるぞ。というか俺が率先して広めたし」

 

 おまえなあ!?

 

「百歩譲ってハーレム作るのは容認しよう! 俺も作りたいし!

 だが俺は女に首輪つけて悦に入るような変態じゃあないっ!」

 

 いや、これはだなあ!? エフティが首輪プレイしたのをうらやましがって、他の三人も真似しただけで・・・!

 エフティに首輪をつけてから、何故か他の三人も真似して皮の首輪とか、それっぽいチョーカーをつけるようになったのである。ファッションだろうから気にしてはいなかったのだが・・・

 

「自分から首輪を望んだってか!? 何だよその高度なプレイ! ある事ない事広めてたのがある事ある事になっちまったぜHAHAHA・・・グボォッ?!」

 

 先ほどより強めにジローを殴り倒し、礼儀正しく奥方に礼を述べてから俺達はメットーに向けて出発した。

 




>カピラ
インドの高僧だったが自分の知識を鼻にかけて傲慢だったので、死後百の動物の頭を持つ怪物に転生し、お釈迦様に救われるという話。
「ア・バオア・クー」の元ネタである幻獣辞典にも載っている。20世紀半ばのアルゼンチン人がよく調べたなこんなもん。

>俺はこれからお前達を殴る!
八〇年代のドラマ「スクールウォーズ」の名セリフ。
対外試合で負けた生徒たちを殴って「その悔しさを忘れるな!」という、今では訴訟不可避な案件らしい。

>ブッ殺した!なら使ってもいい!
言わずと知れたプロシュート兄貴の名セリフ。
この人かっこいいけど心底ヤクザの殺し屋なんだよなあw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。