全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
カピラダンジョンからは例によって生体活性波動馬で爆走。
惑星エナジーの解放点から地球が裂ける!とかゲェー!お前はノースダコタの超田舎パワーを吸収した復活魔神将軍!とかそう言う展開もなく、無事翌日夕方にメットーに到着。
いつもの影の一族の宿に一泊、翌朝ロウと共に職人のところに向かった。
「ここか」
「はい。それで・・・なのですが」
何か言いにくそうにしているロウ。
まあわざわざ呼ぶんだから何かあるだろうとは思ってたが。
「何を言われても怒らないで下さいね・・・?」
・・・?
メットーの南東、職人街にその鍛冶場はあった。
結構敷地のでかい家だが、工房特有の雰囲気がある。周囲の家も工房らしく、焼けた金属の匂いとそれを叩く鎚音がそこかしこから流れてきていた。
「失礼します。お約束していたロウ・アイランドですが」
「あ、はい。いらっしゃいませ・・・」
奥から出てきたのは15,6くらいの少年だった。
くしゃくしゃの茶色の髪にそばかす、鍛冶屋の徒弟にしては華奢な感じだ。
「っ」
ロウに挨拶したところで、俺達を見てぎょっとする少年。
いや、俺と言うより後ろのフジたちを見て驚いたのか?
それともジューニャかな。エルフなんて、メットーでもまずお目にかかれない存在だし。
「・・・お待ちしておりました、どうぞこちらへ」
その後、どことなく暗い表情になった少年に案内されて俺達は家に入った。
「・・・」
「・・・」
応接間。
親方であろう老齢一歩手前の職人とその妻、娘らしき少女。それに徒弟らしき数人のマッチョが俺達を迎えた。
やはりロウではなく俺達に視線を向けて、一様にうつむく。
その雰囲気はまるでお通夜のようで、中には泣き出すものもいた。
おいロウ、どういう事だこれは?
「いやその、経営難に陥ったここの工房を買収して、腕のいい若手をひとり召し抱えるって話でまとまったんですけどね・・・」
こっちを向け。何故視線をそらす。何故冷や汗をかいている。
ロウが答える前に、親方が地面にひれ伏した。土下座の形だ。
「ニシカワさま! ロウさん! どうかお許し下さい! お金は必ずお返し致します!
ですが、悪名高き『好色伯』に娘を差し出すことだけはどうかお許しを!」
ちょっと待てぇぇぇぇぇ!?
ガニア工房の応接間は控えめに言ってカオスの一歩手前だった。
土下座する親方、泣き崩れる奥さんと娘さん、拳を握ってこちらを睨む徒弟たち、固まるフジシルジューニャエフティ。
この期に及んで全力で目をそらすロウの頭をわしづかみにし、無理矢理こちらに向かせる。
「あいだだだだだ!?」
さあ、話を聞かせて貰おうか?
「ば、買収して商会の傘下に入るまでは問題なく合意してたんです!
魔鉄鉱の加工が出来る若手を召し抱えるという話も、むしろ喜んで貰えて!」
それで? 何がどうなってこう言う話になっている?
「そのですね、若様はこっちでは飛竜殺しの英雄であると同時に手当たり次第に女性に手を出す好色漢として名前が通っておりまして・・・それでガニアさんたちが態度を硬化させて、直接説得頂ければと思ったんですが・・・」
ほーぉ。
思わず手に力がこもり、ロウの頭蓋骨がミシミシ言う音が聞こえる。
「俺が広めたわけじゃないです!
前回の件でゴットリープが広めた偽情報の一部らしいんですよ!」
あれか! もっと苦しめてブッ殺すべきだったっ!
俺が吼えると、親方が勢いよく身を起こす。
「ロウさん、あんたニシカワ卿はそんな人じゃないってさんざん言ってたがどうだ!
エルフから10歳の子供まで、女に首輪をつけて連れ回すような男じゃあないか!
そんな所に俺の娘をやるわけにはいかん!」
先ほどまでとは別の意味で固まるフジたち。
ええい、おまえらが変な事やるから誤解されただろうが!?
「だってエフリーティ様が嬉しそうに見せびらかされますので・・・!」
「誰が10歳の子供なんだよ!? 私は16歳の花の乙女なんだよ!」
「落ち着いて下さいシルさん!」
「お、オレ悪くねえからな!?」
ええい、いいからお前ら黙れ!
「俺達にだってプライドってもんがある!」
「そうだ! 妹分を差し出してまで生き延びたくはねえ!」
「お願いですニシカワ様! どうか、どうか娘だけはお許しを!」
エキサイトする徒弟や親方の奥さんも加わり、もう手がつけられない・・・と思った瞬間。
どん、と大きなカップが応接間のテーブルに叩き付けられた。中身がちょっとこぼれる。
「粗茶ですが」
お、おう。
固い顔で香草茶を置いたのは最初に出迎えた少年。
そう言えばまだ椅子に座ってもいなかった。
少年はそのまま向かいの席にもう一つ、横の席にも一つ置いて親方と徒弟たちを見る。
「何を興奮しているんですか。
お貴族様がいらしてるんですから、ここで騒いだら余計に話がこじれるでしょう!」
「け、けどよぉ、ロビン・・・」
おずおずと反論する親方。
ロビンっていうのかこいつ。
鉄仮面かぶった狂乱の奇行子な感じだが、少なくとも常識的な人間ではあるぽい。
「気持ちは嬉しいですが立って下さい! ガニアさんはうちの親方なんですから! いつでも胸を張っていて欲しいんです!」
そう言って親方に手を伸ばし、立たせるロビン。
筋骨隆々のおっさんを軽々と立たせるあたり、さすがに鍛冶屋の徒弟ってところか。
「アリサさんもローラちゃんも、バーンさんもケビンさんもナイトさんも。
そもそも相手の話を聞いてすらいないじゃないですか。
怒るにしても土下座するにしてもそれからでいいでしょう?」
すごい、なんて正論。涙が出てきそう。
叱られた親方はばつが悪そうに視線をそらし・・・あ、滑ってこけた。
倒れまいと伸ばした親方の手の先には大きな火鉢。
大きいと言ったって五十センチほどのものだし、もちろん親方の体重を支えることは出来ずに一緒に転がり、部屋中に灰をまき散らす。
「あっ」
「あっ・・・」
「あ~~~~っ!?」
鍛冶屋連中が一斉に悲鳴を上げる。
「・・・ふぁっくしょいっ!」
何がどうなってるんだと思う間もなく、灰をかぶったロビンが盛大にくしゃみをし、次の瞬間その場にいた俺達全員の服がはじけて飛んだ。
>惑星エナジーの解放点
伝説の勇者ダ・ガーン。
作中二回も地球が裂けた。
>ニューヨークの大都会パワーを吸収した劇場版悪魔将軍
旧キン肉マンの劇場版でそう言う話があった。
強化悪魔将軍のデザインがめちゃくちゃださい。
>ノースダコタ
アメリカの千葉県。
詳しくはパタリロを読んでどうぞ。