全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
灰の舞う応接室。
全員が固まっていた。
すっぽんぽんである。
全裸なのである。
空飛ぶフルモンティ・パイソンである。
いや象さんパオーンだからフルモンティ・エレファントだなHAHAHAHA。
「・・・いやあああああああああああ!?」
フジが悲鳴を上げると同時に、床を叩く。
フジたち四人を隠すように畳がせり上がり、それと同時に思い出したように奥さんと娘さんの悲鳴が上がった。
「きゃああああ!?」
「いやああああ!」
「ロビン、お前またやりやがったな!?」
「す、すいません! すいません!」
そのロビン君も当然すっぽんぽん。
しゃがみ込んで体を抱えてる。
おい、どうした、大丈夫か? 多分こいつの《加護》か何かの暴走だろうけど、副作用で負傷でもしたか。
「い、いえ、大丈夫です! お構いなく!」
あたふたしてるが遠慮することはない。
というかこう言うのは体に深刻なダメージが残ることもあるからな。
治療するならすぐにしないといけない。経験者は語る。
よっと。
「きゃあっ!?」
手を掴んで立ち上がらせると、ロビンは女みたいな悲鳴を出した。
別にいいだろ男同士なんだから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?
くしゃくしゃのくせっ毛。
少年らしい中性的な顔立ちにそばかすの目立つ頬。
ぜい肉がほとんどなく均整の取れた、細いがしっかりした少年の体。
そして股間にぶら下がる・・・ぶら下がる・・・何故だろう、何もぶら下がってねえな?
「俺の娘に手を出すなあっ!」
衝撃を受けていた俺は、父親である親方の怒りの一撃を避けきれなかった。
うんまあ傍から見たら、全裸の娘さんの手をねじり上げる、色狂いのフルチン兄ちゃんだからね、しょうがないね。
でもこの外見で女の子ってのは反則だと思うんだ。
「うぐぐぐぐぐ」
「親方・・・手、大丈夫ですか?」
取りあえずどたばたを何とか収めて、改めて応接間。
服やエフティの皮鎧は幸い大きな損傷はなく、着直すだけで済んだ。
なお親方が手を水を張った桶に突っ込んでいるのは、俺が反射的に波動防御を使ったせいである。
普段は攻撃をそらすように使うのだが、咄嗟のことで全力で弾いてしまった。
骨にヒビくらいは入ってるかもしれん。
で? 全部説明して貰おうか。
「はい・・・」
鍛冶屋組は全員真っ青になっている。
まあ貴族を素っ裸にひんむいた挙げ句にブン殴った(殴った方が痛がってるが)となると、普通に死罪が有り得る。頭が冷えてその辺に思い至ったんだろう。
「その、この子はですね・・・」
数年前に引き取って鍛冶を教えていたのだが、天才的な飲み込みの速さと人並み外れた身体能力があって、今や腕前は親方レベルだとか。
親方夫婦には娘同然に扱われているし、徒弟たちからするとかわいい妹分。仲の良い一家でうらやましいなあ・・・。
で、俺達をひんむいたあれだが、《露出の加護》と言うらしい。
予想はしてたがひでえ《加護》だなおい。文献で色々調べたが、これほどひどい奴は聞いたことが・・・いやなくはないが。
「普段は問題ないのですが、感情が高ぶったりするとああなりまして・・・」
なるほど、ことさら冷静になろうとしてたけど、あれで内心テンパってたってことか。
「で、こうなったら何も無しに済ませる訳にはいきませんし・・・当初のお約束通り、このままロビンさんをお預かりすることで手打ちにしたいと思うのですがどうでしょう」
おいこらそこのばくち打ち。
それじゃ俺が貴族の権威を笠に着て女を召し上げる悪徳貴族みたいじゃないか!?
(ですがこうなったらある程度ペナルティを与えないと、逆に若様が舐められますよ?
それどころか貴族に無礼を働いたとして、「義憤」で押しかけて来る奴がいないとも限りません)
小声で囁いてくるロウ。
・・・そう言う事ってあるのか?
(なくはない、とだけ)
溜息をつく。わかってるつもりだったがこの世界も相応に腐って糸引いてるな。
(それに、別に彼女を無理矢理ベッドに連れ込んで手込めにするつもりはないんでしょう?)
当たり前だ。俺をなんだと思ってる。
(ならいいじゃないですか。そのうち誤解も解けますよ)
それはまあ・・・そうだがなあ。
こうして俺と親方はロウに言いくるめられ、ロビン嬢は無事俺に召し抱えられることになったのだった。めでたしめでたし。
「ううっ、ロビン・・・」
「体には気を付けるんだよ」
「手紙書くから・・・!」
「すまねえ、俺のせいで・・・」
何やら愁嘆場が発生してるがそこからは全力で目をそらす。
一通りのお涙頂戴が終わった後、手を振る工房の面々と別れてロビンがこちらにやってきた。
ほんまエエ家族やなあ・・・。
「お待たせしました」
構わんよ。家族と別れるのは辛いだろう。
まあ、もう会えない訳じゃない。手紙も出せるし、たまにはこっちに連れて来てやる。
「おこ、お心遣い感謝します」
ぎこちなく頭を下げるロビン。固いなあ。まあそこはおいおいほぐれていくのを期待するしかないか。
しかし、ずだ袋一つと腰に下げた鎚一つだけか。荷物はそれだけでいいのか?
「元から大したものは持ってませんし」
「道具に関しては一通りこっちで揃える約束ですので。もう村に送ってる最中ですよ」
さすがロウ、そつがない。
「ふーん・・・」
どうした、エフティ?
「いやさ。ロビンだっけ、ひょっとしてお前傭兵団で育ったか?」
「えっ?」
目をぱちくりさせるロビン。
そうなのか? よくわかったな。
「そんなに・・・わかりやすいですか?」
「まあ、においみたいなもんでさ。ああ、鼻で嗅ぐほうじゃないぞ」
そりゃわかるよ。
くすり、とロビンが笑った。
その後、二人は意気投合して色々話していた。
ロビンは傭兵団づきの娼婦の娘だったのだが、八年くらい前に傭兵団が解散し、母親も既に死んでいたので副団長の知り合いであるあの親方に預けられたのだそうな。
それを家族から引き離した訳か・・・悪い事をしてしまったかな。
「職人なんです。いずれは独立しなきゃならないんだから、早いか遅いかの違いですよ」
そうだな。せいぜい新しい家族を作れるように手伝ってやるか。
「・・・それは、彼女に若様の子を生ませるとかそういう?」
ロウが真顔で聞いて来たので、取りあえず一発殴っておいた。
ロビンは男にも女にもつける名前です。
>フルモンティ
すっぽんぽんという意味の英語。
>空飛ぶモンティパイソン
お笑いの神。