全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
通行の邪魔にならないよう、馬車を道の広いところまで移動させて路駐。
中のロビンは意識を失ってはいたが怪我はない。
ジューニャの診察によれば眠り薬を使われてるようなので、シルの《解毒》の呪文をかけてそのまま寝かせておく。
専門家である
いや、毒消しも無しに解毒出来るだけでも十分凄いんだが。
取りあえずロビンは無事戻ってきたからそれはよしとする。
ついでだ、このまま馬車で戻ろう。
ヒョウ、御者を頼む。それとあやしい奴を尾行していったレイの方はどうだ?
「まだ街道の途中です。傍目にはちょっと遠出したメットーの住人という感じですね」
わかった、それは後で良いか。それじゃお前が見たものを最初から話してくれ。
「はい」
まずヒョウがお使いに出て、拉致されるロビンを見た。
拉致した馬車をつけていくと、メットーの一角であるお屋敷に入った。
「
「何かあんのか?」
「結構高級なところなんだよ。それなり以上のお金持ちじゃないと家は持てないんだよ」
「へー」
「取りあえず話の続きを聞きましょう」
ヒョウはその後近くに忍びよって窓から覗き込んだ。
すると男二人に問い詰められてしどろもどろになっているロビンが見えたという。
何かあったら飛び込むつもりで待機していたが、そのうち業を煮やしたのかロビンに何かを突きつけて、それがぴかっと光ったと思ったら彼女は昏倒。
乗せられた馬車を追って来て、後はご覧の有様という訳だ。
城門をくぐったあたりでロビンは目を覚ました。
まだぼんやりしてる彼女がぽつぽつ話してくれた事によると、彼女はカウプランなる内務省のスパイだと思われたらしい。
問い詰められても何が何やらわからずに、気がついたら馬車の中だったと。
スパイ・・・スパイか。
内務省って名指しなのが気になるな。外国のとか、どこかの商会のとかではなくて。
「楽をしたければともかくも友人を利用しろ、とはカエラ様のお言葉でしたね」
くすくすと笑いながらフジ。なあに、古の偉大な魔術師の剽窃さ。
せっかくコネがあるんだし、使わない手もあるまい。
進路変更、内務省に向かってくれ。
「わかりました」
先だっての騒ぎで俺が内務大臣と親しいのは有名な話になっていて、あっさり中に入れてくれた。
案内の人に連れられて廊下を歩いていくと、すれ違う官僚が時折ぎょっとした顔になる。
「メットーでもエルフは滅多に見ないからしょうがないんだよ」
「最初のうちは戸惑いましたね」
ジューニャが苦笑する。
それはまあそうだろう。ただ、ジューニャじゃなくてロビンの方に視線を向けていたやつがいた気がしたんだが・・・。
「失礼します。カエラ卿をお連れいたしました」
「ああ、ご苦労。入って貰ってくれ」
大臣室に入るとジョンおじさんが笑顔で立ち上がり、部屋にいた中年官僚と一緒に揃ってぎょっとした顔になる。
「カエラ!? その少年は?」
「え・・・私、ですか?」
思わずと言った感じに言葉を漏らしたジョンおじさんの視線が向くのはロビン。
さっきのはやっぱり気のせいじゃなかったのか。どういうことです?
「それは・・・」
隣の部下の人とちらりと視線を交わして溜息をつくジョンおじさん。
「取りあえず、ドアを閉めて鍵をかけてくれ」
・・・分かりました。
取りあえず席に着き、ジューニャが湯を沸かしてフジが携帯ポットで香草茶を淹れる。
「まず聞きたいんだがカエラ・・・彼は何者だ?」
彼じゃなくて彼女ね。
「嘘だろう!? そんな平たい胸の女がいるのか?!」
「おいこらタルカス」
おっさんが叫び、次の瞬間冷たい視線の集中砲火を食らって沈黙する。
確かにロビンの胸は薄いが、今ここにいるの、過半数が女やで。貧乳はステータスなんや、ここまで薄ければ希少価値もあるんや。
まあ中年の迂闊な一言はともかく、かくかくしかじか。
「なんとまあ・・・」
「そんな偶然がありえるものでしょうか」
灰色幽霊通りの屋敷や、ヒョウが尾行した男が宿屋に入っていったので、それを含めて一通りあれこれを説明すると、おじさんたちは疲れたように溜息をついた。
どういうことです? おじさんたちが関わってるらしいのはわかりましたが。
「こうなると話さない訳にはいかんなあ」
「カエラ卿のお身内なのはある意味幸運だったと思うしかありませんな」
話が見えないんですけど。
「カウプランというのは我々が創造した架空のスパイなんだよ。
茶髪のクセっ毛でニキビの残る青年、鍛冶屋の徒弟に身をやつして旧特調部・・・死んだゴットリープの息のかかった残党を探っている、という設定のね」
・・・はぁ?
「つまりこう言うことだ。
我々としてはゴットリープの手下を内務省から一掃しなくてはいけない。
姿をくらましたり捕縛されたりしたものも多いが、内部にまだどれだけ残っているか、はっきりとしたことは言えないのだ」
まあスパイですからね、そうなるでしょうね。
「それで一計を案じてな。架空のスパイの情報を流して、連中の目がそちらに引き付けられているうちに調査を進めようと」
で、それがたまたまうちのロビンそのものの容姿をしていたわけですか。
「うん、そう言う事になる。余り鍛冶屋の徒弟っぽくない容姿に設定したつもりだったんだが・・・まさかなあ。生き写しの人間が実在するとはなあ」
それで目をつけられたと。鍛冶屋街を見張ってたんでしょうか。
「その可能性は高いし・・・あるいはカエラと一緒にいたのを見られた、彼・・・彼女がカエラの名前を口にしたのを聞かれたのかもしれないなあ。
私とカエラが関係者なのは結構知られてしまっているし」
「公開処刑に派手に殴り込みをかけましたからね。有名人はつろうございますね、カエラ様」
しれっとのたまうフジ。お前だって殴り込みかけた一員だろうが。
「そう言う訳だ。いっそこの件で協力しては貰えないか、カエラ?」
うーん、とはいえロビンは非戦闘員ですしねえ・・・
「カエラ様。あいつら、私を問い詰めるときにガニア工房のことも引き合いに出して脅してきました。ですからその・・・」
そこで口ごもるロビン。
ああくそ、それがあったか。
しょうがない。身柄を引き受けたんだ、それくらいは雇い主の義務だな。
溜息をつく。
「ありがとうございます、領主様!」
「そうだ、カエラ。そいつらゴットリープの手下だったと言ったろう?」
ええ、それが何か?
「お前について残虐だの好色だの、ある事ない事広めたのもこいつららしいぞ」
OK、言葉ではなく心で理解したっ!
ゴットリープの残党ども! 今をもって貴様らは俺の敵になったぞっ!
全面的に協力しますよ、おじさん!
「う、うむ。ありがとう・・・」
ジョンおじさん(と、他の面々)がちょっと引いてるが気にしない。
「・・・好色漢の噂、結構気にしてたんだよ」
「カエラくんも手当たり次第に手を出してるわけじゃないんですけどねえ」
「つっても傍から見たらなあ」
「因果応報でございますね」
ええい、黙れお前ら。