全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
オークションハウスの控え室。
オークションの合間に時間を潰すための部屋で、軽食や飲み物も出る。
貴族や金持ちが談笑しているところにロビンをエスコートして入っていくと、周囲から視線が集まる。今のロビンは中々のべっぴんさんだからな。注目もやむなしだ。
(は、恥ずかしいです・・・)
「ロビンさまがおきれいだからですよ」
そうそう。今のお前は中々の美少女なんだからな。
「おや、これはカエラ卿。お久しぶりですな」
うん?
「覚えておられますか? 以前ニシカワ家にお招き頂きましたホーニング男爵です」
ああ、思い出した。五年前に一回挨拶したくらいの間柄なのに、良く覚えているもんだ。
もちろん覚えておりますとも、お久しぶりですね。
「カエラ卿?」
「『飛竜殺し』か」
「領地は開拓が急速に進んで、領民が千人を超えたとか」
「千人!? 男爵どころか子爵領の規模ではないか」
「領内にダンジョンを二つも保有していると聞きますぞ・・・」
周囲の客達がざわめいているのが聞こえる。
何人かが席を立ってこちらにやってきた。
どうやら外交のお時間という訳だ。
まあ、面倒だがこういうところでコネを繋げておくに越した事はない。
本当に一応だがそう言うあれこれも手ほどきは受けているしな。
(ええとその、わた、私は何をすれば?)
まあニコニコしてくれてればいいよ。うぶな箱入り娘と言えば大体納得するから。
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よしみを繋げようとする貴族、取り入ろうとする商人たちの歯が浮くようなお世辞とおべっかをうまくいなして数十分。
貴族はコネになるが、商人たちは「取引したいならロウの商会を介してくれ」というと大体悔しそうに引き下がっていく。悪いね、義理ってものがあるんでな。
「お待たせしました。オークションの用意が整いましたので・・・」
おっと、時間だな。それでは失礼。
残念そうな顔の貴族達が何か言おうとしたところで悲鳴が上がる。
庭園に面したガラス窓が割れ、身長3mの何かが飛び込んできた。
「うわあああああ!?」
「きゃあーっ!」
全身金属製。姿はいびつな人間型といったところだが、頭は狼、両手にはぞくぞくするような鋭く長い爪。
くそっ、古代王国期の戦闘用ゴーレムか!? ダガーも持ち込めないんだぞ、こっちは!
オークションハウスの護衛が客を守ろうとして周囲を囲むが、カギ爪の生えた腕の一振りで吹き飛ばされた。
早い! そして強い!
やむを得ん、シル!
(わかったんだよ! すぐに行くから待ってて!)
頼むぞ! そう心で返信した瞬間、金属の狼の顔がこちらに向く。あ、目が合った。
ほとんど同時に金属製の魔獣が跳ねた。
まっすぐ俺に跳躍して爪を振りかぶる。
このっ・・・!
咄嗟にロビンを突き飛ばそうとしたのと同時に、彼女が自分で後ろに飛んだ。
意外に実戦慣れしてるな? さすが傭兵団育ち、危険回避は身についてるか!
そんな事を考える暇もなく、振り下ろされる爪。
ガードマンたちの血で濡れた刃が赤く光る。
「カエラ様!」
床から生えたフジの畳が軽々と引き裂かれる。
波動防御!
服の袖がズタズタになったが、それでも何とか俺の腕は金属製の爪を弾いた。
二撃目。三撃目。
畳の破片と衣服の切れ端が宙に舞う。
どうやらこいつは最初から俺が目当てらしい。
こちらに集中してくれてるのはまだしもだな!
周囲で悲鳴を上げてる連中に襲いかかられたら目も当てられん!
フジ、こっちはいいからロビンと一般人を避難させろ!
「・・・っ、わかりました! ご武運を!」
五撃目。六撃目。
くそ、懐に入り込めない!
スピードとパワーもあるが、リーチの差がキツい。
西川正宗が、せめてなまくらでも剣があれば!
七撃目。八撃目。
受け流す腕がひりひり痛む。
視界の端に、フジの手を振りきって走るロビン。
何をしてる、そのまま逃げて・・・そうか!
九撃目。十撃目。十一撃目が来る直前でバネ足ジャンプ。
「領主様!」
横っ飛びに跳んで、転がったところに剣が飛んできた。
カエラパンマン! 新しい剣よ!
投げてくれたのはロビンだ。
こんな怪物にも怯えず、倒されたガードマンのところまで走って剣を投げてくれた。
戦いの心得はないようだが、あれで戦度胸はあるらしい。
ぎんっ!
鋭い金属音がして、人狼ロボの小指の爪が切れて飛んだ。
「!?」
戸惑ったように一歩下がる人狼ロボ。
突きつけられるのは俺の手にした長剣。
何てこともない普通の剣だが、それが今は小刻みに震動している。
高周波震動剣。
なまくらの数打ちと言えど、これなら人狼ロボの爪、恐らくは装甲も切り裂ける。
待たせたな、ここから第二ラウンドだぜ!
火花が散る。
耳障りな金属音。
時折古代の合金が切り飛ばされ、破片が飛んでいく。戦いはほぼ互角にまでなっていた。
下手に踏みこむと爪を切り飛ばされるのは理解したようだが、それでも勢いよく踏みこんで攻撃を続ける人狼ロボ。
腕の装甲を切り裂かれ、爪を四本まで失ってもその勢いは留まる事を知らない。
一方その勢いのせいで、俺も踏みこめない。
ロボの腕は傷だらけにしているものの、そこから先が難しい。
フォノン・メーザー斬りを放とうとしても、剣の質が悪いのか絞りが甘くなって体を断つには至らない。
ガードマンが何人か駆けつけてはきたものの、到底割って入る事も出来ずに遠巻きにして客を避難させているだけ。
まあ無駄に人死にが増えても困る。しかし、フジたちはまだか?
エフティとジューニャがいれば仕留められるんだが。
(それが、オークションハウスの入口で止められてるんだよ! 中の事は自分たちで解決するからって!)
あのなあ!?
自分たちで解決するってんなら、さっさとこの人狼ロボを倒せよ!
何のために俺が囮になって時間稼いでると思ってるんだ!
思わず悪態をついてしまったのが良くなかったかもしれない。
ガラス玉のような人狼ロボの目が赤く点滅し始める。
ものすごーく、嫌な予感。
わぁい。体内で魔力が膨れあがってるのが分かるぞぉ。
自爆する気だこいつ!?
「おまえら逃げろ! こいつ自爆する気だ! この部屋か、悪くすれば建物ごと吹っ飛ぶぞ! とにかく逃げろ!」
それだけを言うのが限界だった。
逃げ遅れてる連中から悲鳴が上がるが、構ってる暇はない。
先ほどまで以上に荒れ狂う爪をさばくので精一杯。
ぼやぼやしてると後ろからばっさりだ。
やむを得ん、こうなれば何とか腕一本落として、その後足も斬って逃げるしかないか?
って、ロビン、何してるんだ!
さっさと逃げろと言ったろう!
「すいません領主様! 先に謝っておきます!」
え?
両手の平を手首のところで合わせて、こちらに向ける。
「
気合い一閃。梅の花のようになった両手の平から強烈な魔力が放たれたと思った瞬間、人狼ロボは一瞬にしてバラバラになった。
俺は剣を構えたまま、散らばった人狼ロボのパーツが「冷えて」いくのを呆然と眺める。
助かったのはいいんだけどさ、俺もすっぽんぽんのフルチンになってるのってどういう事? ねえどういう事!?
>どっちもどっちも! どっちもどっちも!
「銀河烈風バクシンガー」の有名なOPナレーションだが、どうやら「アトサキ」という花札賭博のかけ声らしい。
伏せた花札を先三枚、後三枚出して、どちらの役が強いか?に賭ける遊びで、
その時にディーラーが「どっちもどっちも」と声をかけて客を賭けを促す。
>両手を手首のところで合わせて~
イメージ的には仮面ライダースーパー1の赤心少林拳梅花の型。