全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
第十一話 帰還
「覚悟とは! 暗闇の荒野に進むべき道を切り開く事だっ!」
――ジョジョの奇妙な冒険――
レ●ドロブスターが爆発した後、俺達は内務省の人達の要請で館を掘り起こした。
リップヴァーン(奇跡的に生きてた)とコケの猿壺(奇跡的に原形をとどめていた)を確保出来たのが大戦果だ。
どうやらこの壺に内務省内部の魔神教団シンパの名簿が隠されているらしく、何としてでも確保したかったらしい。
タルカスさんには満面の笑顔で何度も礼を言われた。
謝礼がわりにこいつら拷問させて貰えませんかって言ったら、ちょっと引きつった顔でだめ出しされた。残念である。
「どれだけ根に持ってるんだよ
「これだけ美女美少女連れ回してるんだから、噂になるのは仕方がないんだよ。うん、美少女は辛いんだよ」
図々しい事を言う合法ロリのつむじを人差し指でぐりぐりしてやる。
いや、美少女なのは否定しないけどな。
「むにゅにゅ」
「朱に交わればと申しますし、どちらかというとシル様がカエラ様に染められたのでは?
かくいう私もカエラ様に染められた自覚はございます」
ええい、そういう事を言う
小さな頃はあんなに素直だったのになあ!
「図太くなれと教えて下さったのはカエラ様だったかと思いますが」
くそう、口の減らない・・・!
気がつくとそんな俺たちからロビンがちょっと距離をとっていた。
いや、これはそのだな、ある種のスキンシップであって・・・!
内務省の部隊と一緒に王都に帰る。
拷問の権利はともかく、何か情報を引き出したら教えて貰えるよう、言質は取った。
いくらか謝礼も貰ったが、ぶっちゃけ内務大臣へのコネと貸し以上の報酬はない。
あの頑固な古武士そのものの爺様ですら社交は欠かさなかったのだ。
ケイトーの薫陶もあるし、貴族社会でコネがどれだけ有用で必要不可欠かは理解している。
たとえ辺境の小領主であってもそれは同じ事だ。
「親方・・・みんな・・・!」
「ロビン!」
「ああ、無事で良かった・・・!」
その後工房までロビンを送って、家族と再会させた。
やっぱり自分の目で無事を確認しておきたいだろう。
内務省の警備はもう少し続けるらしいが、まあ大丈夫だろうとは言われた。
一晩家族水入らずの時間を与えてやってから翌日。
「元気でねー!」
「手紙書けよー!」
「ケビン、てめえはまずもっと読み書きを勉強しやがれ! んなこっちゃいつまで経っても徒弟だぞ!」
和やかな笑い声。本当にええ家族や。
城門まで見送りに来た家族にロビンが手を振りつつ、俺達はメットーを発った。
城門が見えなくなったあたりで、隣のロビンに話しかける。
これからちょっときついが、馬にしがみついてろよ? 大丈夫、落馬しななきゃ多分死なない。
「それは一体・・・」
不安そうにまわりを見回すロビンだが、返ってくるのは同情の視線のみ。
そーれ、いくぞ!
「だから一体・・・きゃああああああああああああああ!?」
生体活性化波動を流し込まれた馬が通常の三倍の速度で走り始めた。
ドップラー効果を伴って、ロビンの悲鳴は街道の彼方に消えていく。
それから二日、宿場で馬を取り替えては高速移動を続けて、マット村から90kmほど手前に来た時にはロビンは既に死んでいた。
「死んでませんよ!」
お、タフだな。
疲労の跡は見えるが、さすが鍛冶屋と言うべきか。
ロウやジローは完全に魂が抜けてたものだが。
ともかくしばらく休めるぞ。その後はマット村に直接転移だ。
「ここ・・・どこですか?」
カピラ・ダンジョンだ。
俺の持ってる二つめのダンジョンで、場合によってはお前の職場になるかも知れないところさ。
管理人の館に入るとクレアさんが出迎えてくれた。
「お立ち寄り頂きありがとうございます、カエラ様。メットーはいかがでしたか?」
相変わらず騒がしい町でしたよ。トラブルの種には事欠かない。
あ、これおみやげのお菓子。
「まあ、『メニディ』のビスケットですね。ありがとうございます、好物なんです」
それは良かった。
まあ女性に贈るなら花か甘いものですよね。
「慣れてらっしゃいますこと。また一人お側に女性が増えてますし」
こっちは雇っただけでそういうのではないので・・・ないので!(強調)
応接間に入っていくと、ジローが現れた。
マジメに仕事をしているらしいな、感心感心。
「なんだよ、奥さんにはビスケットで俺には何も無しか?」
俺の笑顔が最高の土産だろう?
「どつくぞ」
割とマジ顔になるジローに笑う。
こう言う馬鹿なやりとりが出来る友人は本当に貴重だ。
冗談だよ。ほれ、土産のメットー・ウィスキーだ。
「おう・・・」
どうした、これ好きだったろう?
「いや、どうせならジューニャ先生印のブランデーの方が良かったなーって。
メットーでも大評判で、買おうとしても買えないんだぜあれ。プレミアついててさ」
えぇ・・・。
どうやって作っているのか教える訳にもいかず、言葉に窮する俺。
それをどう解釈したか、ジローが顔を近づけて小声で話しかけてくる。
「俺とお前の仲だろう? 教えろよ。あれ、エルフの体液が混じってるって言うじゃないか。ジューニャ先生の液体だぞ! お前はいつも飲んでるんだろうが!」
おいやめろ馬鹿、この作品は非18禁なんだ。
「なんだって? ともかくいいだろ、なあカーヴェ、頼むよ。なあ」
ジューニャの耳がぴくぴく動いてる。フジもだ。
冷や汗を流しているあたり、こいつらにはしっかり聞こえてるらしい。
「なあ、いいだろ、な?」
わかった、今度来るときは持って来るよ・・・。
俺に言えたのはそれだけだった。
一休みしてお茶してお暇する。ロビンが滅多に食べられないお菓子に目を丸くして、美味しい美味しいと言っているのに、クレアさんがどんどんおかわりを持ってこさせている。
あれだ、ハムスターに餌付けしてるような感覚なのかも知れない。
窓からは冒険者の姿がぼつぼつ見えて、客が増えているのが分かる。
酒場と宿屋はあるが、早いとこサービス業も充実させないといかんな。
「売春宿などお望みでしたら、父に話をしてもようございますけど」
うーん、そうだな。クレアさんがここにいるのに
その辺はまた話そう。ここならダンジョン・コアで転移出来るしな。
「わかりました」
それじゃと手を振って館の外に出た瞬間――世界の色が変わった。
「な、なんだ!?」
全員伏せろ! フジ、《畳の加護》を!
「かしこまりました!」
西側、マット村の方角に巨大な魔力の奔流が渦巻くのが分かる。
空は暗闇に閉ざされ、雷鳴と稲妻が走る。
様々な「色」、あるいは無数の波長の魔力が入り乱れ、感覚を混乱させる。
それが数分、あるいは数十分続いただろうか。
魔力の奔流は始まったときと同じく唐突に終わった。
畳を押しやって外に出る。
「なんだ・・・ありゃ・・・」
クレアさんをかばっていたジローが呆然と声を上げた。
どれほどの高さがあるかも分からない、稲妻の走る黒い絶壁。
それが北から南まで、見渡す限り西への道を阻んでいた。
>レッドロブスター
アメリカ発のシーフードレストランチェーン。
80年代にグレン・ミラーの「イン・ザ・ムード」を使ったCMが一世を風靡した。
曲名知らなくてもレッドロブスターの曲と言ったらパッと思い浮かぶ人はそこそこいると思う。
なお日本法人はまだ営業してるけどアメリカ本社は倒産したそうな。