全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

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第十三話 人切りローニン再び

 それから話はトントン拍子に進んだらしい。

 別室で茶を飲んでたので知らんけど。

 ともかく即日調査団派遣が決定して、俺や数人の領主貴族もそれに参加する事になった。

 今日中に先遣隊の編成を終え、明日出発。それも馬車や馬ではなく、何と王家秘蔵の転移術師(テレポーター)によるピストン輸送だ。

 『瞬間転移(テレポート)』。この世界ではほぼ伝説の術だが、使い手は確かに存在する。

 何でも大魔術師(ウィザード)並みの技量がある上で特殊なセンスだか才能だかがないと習得出来ないらしく、世界全体でも使える術師は数十人、他人を伴って千キロ以上を移動出来るような術師ともなれば数人しかいないのだそうだ。

 当然こんな人材が放っておかれる訳もなく、存在が判明し次第王家や貴族が抱え込む。

 そうでないのは旅の神様である瞬足神(マリーチ)の最高司祭くらいだそうな。

 この神様、元は瞬間転移(テレポート)の術を極めた神代の魔術師で、代々この術が使えないと最高司祭にはなれないのだとか。

 ともかく、この秘蔵の転移術師をくり出してくるだけでも王家の本気度がうかがえる。

 間違っても危険にさらさないよう、普段は名前も顔も隠して王宮の一室に幽閉されているともっぱらの噂なのだ。

 

 翌日王宮の一室で俺もその術師に会ったが、小柄な体を真っ黒なローブとベールに包み、年齢も性別もはっきりとしない。口もきかず、頷いたり身振りをするだけなので声も分からない。

 ジューニャによればローブやフードにも認識阻害や探知妨害が施されているとか。念の入った事である。

 しかし滅多に見られない転移術師にちょっと感動していたのもつかの間、俺は扉を開いて入ってきた男の姿に目を剥く事になった。

 

「おう、ここでいいのか? ・・・おお、カエラ・ニシカワか! 久しいな!」

 

 俺を見て満面の笑顔を浮かべたのはカピラ・ダンジョンと魔神教団の事件で俺と死闘を繰り広げた男、人斬りローニン、ダスキーニ・ヴォルタだった。

 

「「・・・なっ!?」」

「なんでテメエがここに!」

 

 シルとジューニャが驚き、エフティが腰の剣に手をやる。

 部屋にいた転移術師や調査員の護衛たちにも緊張が走った。

 

「ああ、今はお前らと戦う気はない。仕事で来ているからな。もちろん斬りかかってきてくれるならありがたいんだが」

 

 笑みを浮かべて両手を上げるダスキーニ。

 ・・・エフティ、剣から手を離せ。ジューニャたちも呪文の準備は解け。

 

「・・・わかった」

「わかりました・・・」

「・・・」

 

 俺も正直平静ではいられない。

 今まで戦った中で一番の強敵だったし、おじさんの首をはねようとした男だからな。

 で。

 何でお前がここにいる。

 

「仕事だと言ったろう。依頼人がもうすぐ来る・・・おお、来た来た。

 おい、話は先に通しておいてくれよ。斬り合いが始まっても責任は取れないぜ」

「君が先にさっさと行ってしまったのだろう。自分の立場を自覚して欲しいものだな」

 

 そう言って部屋に入ってきたのは内務大臣・・・ジョンおじさんだった。

 

「すまない、カエラ。話をするのが遅れた。こいつはついさっき捉まえたばかりなのでね」

 

 捕まえたじゃなくて捉まえた、ですか。

 ・・・おじさんが調査団にねじ込んだんですか?

 

「丁度こいつの目撃情報が上がってきてな。危険人物だが、依頼はしっかりこなす男だ。あの官僚たちではないが、今回は王国の安全に関わる大事件だ。えり好みはしてられない」

 

 だからって自分殺しかけた人間を雇うか・・・?

 さすがと言うべきなんだろうなあ。

 しかしおまえ(ダスキーニ)のほうも良く依頼を受ける気になったな?

 

「このおっさんは強かったからな。強者には敬意を払うのが俺の流儀だ。十分な報酬が出るなら仕事を受けるくらいはしてやるさ」

 

 さよけ(溜息)。

 というかお前バラバラになって死んだんじゃなかったのか。

 何で生きてる?

 

「何でって言ってもな。気がついたら素っ裸で森の中に寝てた。

 カタナもあの遺跡に転がってたからそのまま町に戻って普通に過ごしてたぞ」

 

 人斬りローニンの普通とは。

 というかお前プラナリアか何かかよ? あれだけ変異してバラバラの肉片になったのに!

 

「知るか。というかプラナリアって何だ」

 

 お前とどっこいのしぶとい生物だよ。

 それだけを言って俺は深い溜息をついた。

 

 

 

「カァァァァヴェェェェェェ!」

 

 宿泊施設もあるし丁度いいと言う事で、調査拠点はカピラダンジョンに決定している。

 転移すると、感極まったジローが抱きついてきた。やめろ気持ち悪い。

 

「だってよぉ・・・!」

 

 さすがにこんな天変地異を前にしては、図太いこいつも神経が参っていたらしい。

 

「そうなんだよ、毎日確認してるけど、少しずつでかくなってるみたいで・・・ぎゃああああああ! 出たぁぁぁぁぁ!?」

 

 直後、俺の後ろからノッソリ出てきたダスキーニに何かを漏らすジロー。

 落ち着かせるのにいい加減手間がかかった事だけ述べておこう。

 それはそれとして交流神(コア・ヒム)神殿経由であれこれ伝えてたと思うが、受け入れ準備は出来てるか?

 

「お偉いさんを泊められるような場所じゃねーが、代官館の客間は準備してある。

 冒険者用の宿屋も出来るだけ部屋を空けてあるぜ。

 数が足りない分はフジちゃんがタタミ・ハウス作ってくれたし。

 毛布とかはチョッパヤで早馬飛ばしたから、夕方には届く予定だ」

 

 オーケー。

 何だかんだで責任者や学者、術師、それらの護衛に雑用係と、100人以上の規模になったから、代官館や冒険者の宿だけじゃ到底足りないんだよなあ。

 お偉いさんを雑魚寝させる訳にもいかんし。

 

 ここで調査隊の構成もざっと触れておこう。

 まずトップが魔法省次官のザイオン・クリードニク。

 いかにもなエリート官僚のダンディで、本人もそれなりの術師らしい。

 加えて魔法省のエースである巨人級(第一級)術師、ケイロン・アリオス。

 こちらもテンプレな老魔法使いという風貌で、魔法現象の解析にかけて右に出る者はいない。

 加えて官民問わずこうした現象に通じた学者たち、様々な術系統のエキスパート、「飛ぶ斬撃」を始めとする魔力を放つ《加護》を持つ前衛系たち。ダスキーニもこの枠だ。

 数日で集めたにしては豪華なメンバーと言えよう。

 そして領主貴族の代表として俺とタチバナを含むいつもの面子。

 後留学や所用でディテクにいた領主貴族の家の人間が3人。

 直径200km近い範囲内には、ディテク側だけで大小十を越える村がある。

 そこを領する騎士や男爵たちの代表として俺達が派遣されたのだ。

 この面子ですぐさま解決とは言わないまでも何か手掛かりは掴みたいところだ。

 ジローの言う通り心なしかこちらに近づいている黒雲・・・命名「黒の災禍(メイルストローム)」を見ながら、俺は心の中で決意を新たにした。

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