全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
翌朝。
俺は単身「
手には刃渡り50センチほどの直剣。
30mほどの距離を保ち、調査隊の全員が周囲を遠巻きにして固唾を呑んでいる。
ダンジョン攻略に来た冒険者たちまでもがその中に混じっていた。
暇な事だが・・・まあ伝説級の剣と聞いたら見たくもなるか。
「カエラ卿、では始めて下さい」
魔法省次官の言葉に頷くと、俺は右手のクサナギに魔力を注ぎ込む。
明るい青緑色だったクサナギがオレンジ色の光を放ち始めた。
「おお・・・」
ざわめく観衆たち。
輝く剣を突きだし、流れる黒い壁に向かってゆっくりと歩き始める。
近づくにつれ黒い壁が円形、もっと言えば球形にえぐれていく。
川の流れに木の枝を差し込んだ時のように、穴の右側は丸く、左側は尾を引いて壁を構成する魔力が流れていく。
右から左に魔力の流れがあるってことなんだろうな。
更に踏みこむと、穴も大きくなる・・・が、俺の手もぶるぶる震える。
流れが強い。これ以上入り込むと支えきれずに魔力の渦に押し流されるだろう。
鳴門の大渦の中に飛び込むようなものだ。
「オーケー、カエラ卿。いったん中断だ。戻ってきてくれ」
了解です。
「やはり魔力の総量が違いすぎるのう。
飛竜殺しとは言え、人一人の魔力ではな。台風を素手で押し返すようなもんじゃ」
「とは言え試してみる価値はあるでしょう。カエラ卿のところにジューニャ師がいたのが僥倖でした」
ん、どういう事だ?
「くくくくく。それは見てのお楽しみじゃよ」
ケイロン爺さんが、子供が見たら泣き出しそうな笑みを浮かべた。
・・・なんだこりゃ?
現在俺の全身はパワードスーツというかメカメカしい感じの伝説鎧戦士というか、そんな感じになっている。
それも試作品で機器とコードで接続されてるようなあれだ。
得意満面のケイロン爺さんが解説してくれる。ちなみに解説している最中にもロビンが色々接続したりチェックしたりしてくれてる。お前すっかりそっち側の人間になったな・・・。
「古代王国時代の
多くの人間や魔力結晶からの魔力を人一人に集中させることが出来る。
今度はこれで大出力を叩き出して試してみようってことじゃな」
《
「よく勉強しておるの、感心感心。
効果としては同じじゃが、これは術師を必要とせず手軽に使えるのと、流れ込む魔力のロスが格段に少ないでの。
まあ、真なる魔法文明の技術さまさまと言う訳じゃ」
なるほどな・・・え、ちょっと待って。俺これから数十人の術師の魔力流し込まれるの?
しかもあのエルフの基準でも馬鹿魔力なジューニャの分まで?
それ俺の体が破裂したりしない!?
そう言うと、ケイロン爺さんがまたしてもマッドな笑みを浮かべた。
「心配するな。これまで何回も使ったがそう言う事故は・・・ちょっとしか起きておらん」
やっぱり起きてるんじゃないですかやだー!
とは言え他に手段もなく、俺は全身にコードを接続したまま再び黒い渦の前に立った。
ジューニャを始めとする術師たちは大きな宝珠の前に集まって、宝珠に手をかざしている。
あそこから魔力を吸い上げて、魔導機器本体を経由してケーブルで俺に伝送するらしい。
「それでは始めるぞ! 少しずつ出力を上げていくから、苦しくなったら・・・いや、苦しくなっても限界まで・・・いやいや、もうこれダメ全身の細胞が血を吹いて死にそうって感じになったら声を上げるんじゃぞ!」
その状態に達したらそもそも声を上げられなくなってると思うんですがねえ!?
「それでは魔力伝送開始!」
「魔力伝送開始!」
聞けよ! 話を!
・・・お。おおおおお!?
装置が起動した瞬間、体に魔力が流れ込んできた。
魔力結晶を使う時みたいに「引き出す」のではなく、体内に入り込んでくる感じ。
クサナギがオレンジの光を放ち始める。
意識するでもなく、体が自然と余剰魔力を外に放出しはじめているのだ。
流れ込んでくる魔力が更に増える。
ええい、集中しろ。
漫然と受け入れていたら本当に体が破裂する。
魔力を流せ。整流しろ。
全身に満ちる魔力を剣に集中し、放出するんだ。
魔力の流れをコントロールし、流れ込む魔力の総量も増え続けるのに応じてクサナギの放つオレンジ色の光が更にまばゆく強くなる。
その光を黒い災禍の渦に向ける。
どよめき。
まだ距離があるにもかかわらず、先ほどのそれを大きく越えて黒い壁がえぐられた。
「いいぞ! そのまま! そのまま!」
誰かが叫んでいるが最早それすら耳に入らないほどに俺は集中している。
無我の境地。明鏡止水の心境。
ただひたすらに、巨大な魔力の流れを伝える導管と化している。
先ほど精神集中のためと称して、こっそり代官館でシルの《
そうでなきゃ本当に体が破裂していたかも知れない。
ゆっくりと前進する。
クサナギの短い柄を強引に両手で握りしめて前に突き出す。
その間にも流れ込む魔力は更に膨大になり、明鏡止水の境地をもってしても体の節々がきしみ始める。
《
限界は近いが、それでもギリギリまで粘らなきゃならない。
自分と領民、どっちも守らなきゃならないのが領主ってもんだからな。
一歩近づくごとに魔力の流れが増大する。
黒壁の穴が更に巨大化する。
視界は真っ赤。
ひょっとしたら毛細血管の破裂くらい起きているかも知れない。
だがあと少し、もう少し・・・そうだ、波動陣の要領でクサナギを介した滅魔力場を周囲に広げて・・・収束・・・放つ。
その瞬間、巨大な滅魔力場の固まりが前方に指向性を持って放たれた。
同時に俺の全身に取り付けられた器具がはじけ飛び、膨大な魔力が周囲にまき散らされる。
その魔力の奔流の中で、一瞬だけだったが黒い壁の向こうが見えた。
森の中の街道。
もう何度も通ったマット村へと続く道。
濃密な魔力の影響で枯れるでもなく、崩壊するでもなく、記憶の通りの姿がそこにあった。
よし、まだ間に合う。中の人間は無事だ――!
それを見てとり、俺はその場に座り込んだ。
「緊急停止! 魔力伝送をカットじゃ!」
「魔力伝送カットします!」
「「カエラ様!」」
「カエラちゃん!」
「カエラくん!」
「「カーヴェ!」」
「領主様!」
フジたちが駈け寄ってくるのが見える。ついでにジローも。
体はボロボロで立ち上がるのもおっくうだったが、俺は笑顔で親指を立て、彼女たちに応えた。
>ハガネ
特撮番組「牙狼」に登場する、量産型の魔戒騎士の鎧。
>鋼鉄聖闘士
聖闘士星矢アニメオリジナルの、科学で再現した鋼鉄聖衣をまとう聖闘士。
続編のオメガで拾ったのはちょっとアガった。